2009年10月 岐阜県苗木地方の希元素鉱物

      2009年10月 岐阜県苗木地方の希元素鉱物

1. 初めに

    長野県の石友・Mさんと中津川市で「山口石」を採集した後、苗木地方でパンニング
   による希元素鉱物採集を案内した。
    訪れたのは、既に何回かHPにも記載した場所だった。

    @ 狩宿川
    A 関戸川
【時間もなく、希元素鉱物が少ないので産出ポイントの案内だけ】
    B 木積沢

    狩宿川の初めてのポイントでパンニングを始めると、1回目から妻の使い初めW社製
   パンニング皿にトパズが残り、有望そうだ。何回か繰り返すと、「頭付トパズ」、「フェル
   グソン石」、「苗木石」そしてこの地域では珍しい「鉄電気石」が採集できた。

    この日最後に訪れたのは、木積沢だった。2006年8月、栃木県のS一家を案内した時
   Yさんが「サファイア」を採集し、その後、ミネラル・ウオッチングを開催したポイントでパ
   ンニングを始めた。
    川の様相が変わっていて、小さな「錫石」しか出てこない。カッチャを持って川の流れ
   の深みを浚っていた妻が「トパズがあった!!」と叫ぶ。縦割れの深みで、かなり溜ま
   っていそうだ。3人でパンニングすると、毎回のように「トパズ」や大き目の「錫石」がで
   てくる。陽も傾き、この日はここまでで終了となった。

    妻の新しいパンニング皿は口径が40cmあり、使いやすいようだ。Mさんは、口径30cm
   の皿なので1回に入る土砂の量も少ない上、本格的なパンニングが初めてなので苦戦
   気味だった。(帰りに、中津川市鉱物博物館でパンニング皿を買って帰ったはず)

    苗木地方でのパンニング採集は久しぶりだったが、11月に生まれる予定の初孫の
   『誕生石・トパズ』を採ってあげる目的は達成できた。
    同行いただいた石友・Mさんに感謝している。
   ( 2009年10月採集)

2. 産地

    これらはいずれも有名な産地なので、詳細は割愛する。

3. 産状と採集方法

    花崗岩ペグマタイトにあったトパズ、希元素鉱物などが花崗岩の風化・崩落で川に
   流されて堆積した、1種の『漂砂鉱床』と考えられる。
    ここでは、スコップやカッチャで川底の土砂を堀り起し、フルイに入れ、川の中でふる
   うか、パンニング皿に入れパンニングするかで、鉱物採集につきもののハンマは全く
   不要である。
    パンニングのほうが小さなトパズまで見逃すことが少ないし、小さなものがほとんどの
   希元素鉱物を探すには、パンニングが最適である。

       
           狩宿川             木積沢
                 パンニング風景

4. 産出鉱物

 (1) トパズ(黄玉)【TOPAZ:Al2SiO4(F,OH)2
      透明、ガラス光沢の柱状結晶で産し、稀に頭付きも見られる。トパーズの色は、
     文字どおり酒黄色〜薄い青〜透明 と各種あり、産地によっても特徴がある。
      今回採集した最大のものは、長さ44mm、重さ18グラム( 奈良・Yさん流には90
     カラット)だった。

          
              狩宿川産                  木積沢産
          【細柱状、ほとんど透明】      【柱状や塊状、ブルーもある】
                           トパズ

      採集を始めて間もない人から、トパズと水晶の違いがわからないと言う声をたび
     たび聞く。違いを下の表に対比してまとめてみたので参考にしてほしい。


 項 目  ト パ ー ズ   水     晶    備  考
条線 柱面に縦に筋がある
 柱面に横に筋がある
 
 
へき開         ↑
     平坦(フラット)

 明瞭
c軸(頭と尻の方向)に
直角割れ、破面は平坦
割れ口は虹色を示すことが
多い(真珠の様でもある)

         ↑
      ギザギザ


 なし


 割れ口はギザギザ
 
断面
(頭や尻から
見た形)
 ひし形
 六角
 
屈折率 水晶より高く
キラキラした感じ
 透明度も高い
 白濁していたり
煙水晶が多い
 
比重 3.6
水晶よりチョット重い感じ。
 パンニングすると
錫石や希元素鉱物などの
重鉱物と共に底に残りやすい
 2.7
 
 

 (2) 鉄電気石【SCHORL:NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4
      黒色、ガラス光沢の柱状結晶で、結晶面が湾曲しているので、円柱状に見える。
     苗木地方では比較的産出はまれで、過去には、2008年12月に「R地区」で採集した
     のに続き私にとって2例目になる。

       鉄電気石

 (3) 水晶【QUARTZ:SiO2
      透明〜白濁〜煙〜黒色の水晶が採れる。柱状で頭がある水晶は、トパズと同じか
     少ないかも知れない。トパズよりもモース硬度が1度低く、摩滅しやすいはずなのに
     摩滅跡がほとんどないものが時として採集でき、晶洞が近くにあった(現在もある?)
     ことをうかがわせる。

      今さら、川浚い(かわさらい)をして水晶でもないのだが、時として面白い形のもの
     が採集できるので油断はならない。(石英なのでパンニング時に簡単に皿の外に
     飛び出してしまう)

      妻が採集した「菱柱状の結晶」は、上の表の「断面」をみるとトパーズに似ていて
     「条線」を見ると水晶だ。自宅で実体顕微鏡で観察すると、幅の狭い2面が確認でき
     「断面は六角」なので、水晶に落着した。

       水晶【菱柱状結晶:妻の採集品】

 (4) 変種ジルコン/苗木石【Altered ZIRCON/Naegite:ZrSiO3
      緑〜褐色、ガラス光沢で、柱面は次第に細くつぼまったもの、或はそれらが多数
     集合し、肉眼的には頭が円(まる)く仏頭状になった集合体などがある。
      ジルコン(Zr)のほかに、微量のハフニウム(Hf)やイットリウム(Y)、シリコン(Si)の
     ほかに微量のニオブ(Nb)やタンタル(Ta)を含むと「日本希元素鉱物」誌にある。

       苗木石【変種ジルコン】

 (5) 錫石【CASSITERITE:SnO2
      透明〜赤黄色〜黒色のガラスあるいは金属光沢で、最大約1cmから粉のような
     ものまで採集できる。パンニング皿に最後まで残るので、採集は簡単だ。
      今回の巡検で木積沢では現在も多量の錫石が採集でき、明治初期に錫石を採掘
     していたことが判る。

       錫石【最大 8mm】

      「錫石」が多量にあるポイントでは、トパズや希元素鉱物が採集できることが多く
     これら貴重な鉱物の”道しるべ”になっている。

      このほか、俗に”鼠の糞石”と呼ばれる「フェルグソン石」は、確実に採集できる
     はずだ。

5. おわりに

 (1) 『 習うより慣れろ 』
     Mさんは、本格的なパンニングが初めての上、パンニング皿が小さいので、希元素
    鉱物の採集には苦戦していた。
     私達と同じポイントの土砂をパンニングしているにもかかわらず、トパズすら採れない
    不調が続いていた。
     私自身、パンニングで希元素鉱物やトパズ採集を始めた2005年ころを思い出す。
    『 3日間で苗木石3粒 』の惨めな日々だった。

    ・岐阜県苗木地方の苗木石
     ( Naegite of Naegi Area , Gifu Pref. )

     要は、『 習うより慣れろ 』 だろう。

 (2)  Go Go !! ヘナK小隊 
      今朝、メールを開くと、愛知から北の大地・北海道に駐屯地を移したヘナK小隊か
     らの1通があった。
      兵長は会社勤めがスタート、小隊長は冬への備えと忙しく、2人とも頑張っている
     ようで、”ホッ”と一安心している。

      春まだ浅い2006年2月、ヘナK小隊と狩宿川でトパズや希元素鉱物を採集したこと
     を懐かしく思い出している。

     ・岐阜県苗木地方の希元素鉱物
      ( Rare Element Minerals from Naegi Area , Gifu Pref. )

      皆さんと一緒にミネラル・ウオッチングを開催するようになってもうすぐ10年になる
     ので、「10周年記念大会」を北海道で開催したいものだと考えている。
      このとき、小隊長と兵長にお会いしたいものだ。
      ( 鉄砲打ちの兵長がいれば、熊も怖くはない )

6. 参考文献

 1) 長島乙吉・弘三:日本希元素鉱物,長島乙吉先生祝賀記念事業会,1960年
 2) 加藤昭、松原聡、野村松光:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-,築地書館,1982年
 3) 松原聡、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
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