岐阜県苗木地方の「苗木石」を訪ねて

       岐阜県苗木地方の「苗木石」を訪ねて

1. 初めに

    2009年 明けましておめでとうございます。

   この春、3男が結婚することになり、なにかとバタバタ忙しい。年が明けてもフィールドに
  出られず、古くて恐縮だが、今回も2008年暮れのミネラル・ウオッチング記になる。
   ( これで『子育て(=親の責任)』も一段落し、これからは「晴(耕)雨読」の生活を存分に
    楽しめるはずだ )

   ここ2、3年、年末12月に愛知県のSさん一家と”クリスマス・ぱ〜ちぃ”を兼ねてミニ・ミネラル
  ウオッチングを開催することにしている。今回も、Sさん一家のホームグラウンドであり、私の
  好きな産地の1つである岐阜県苗木地方を舞台に開催した。

   2008年は、千葉県に単身赴任している関係で、岐阜県苗木地方を訪れたのは「金加鉱
  山」「五加鉱山」の帰りに、ついでに立ち寄った程度で、標本らしいものは、何1つ採集して
  いなかった。

   初日、Sさん一家と中津川鉱物博物館の駐車場で会い、近くの珪石・長石の採掘場跡を
  案内していただいた。この地域は脈状石英のせいか、頭付き、柱面が発達した水晶は少
  ないが、錐面だけなら巨晶と呼べるものもある。何より、この産地は『南洋美人』、と称され
  る黒水晶が有名で、今回も素晴らしい標本を採集できた。

   午後は、『トパズ』産地を案内していただいたが、良品はなかなか採集できず早めに宿に
  向った。
   Sさんの奥さんが予約してくれた「かんぽの宿・恵那」で、温泉にジックリ浸かり冷えた
  身体を温め、ビールで乾杯すると今年1年の疲れが吹き飛んだ。飛騨牛(産地偽装なし)
  のしゃぶしゃぶを食べ、ひれ酒で身体の内側からも暖め、スッカリ良い気分になった。
   部屋に戻って、地元産の「生酒」を飲みながら、この1年を振り返りながら鉱物談義に
  華を咲かせていると、22時の消灯時間だった。

   翌日、快晴の青空の下、新産地・R地区を訪れた。Sさん一家が採り残してくれたポイント
  で、パンニングすると大粒の「錫石」に混じって大粒の『苗木石』や「トパズ」が採集できた。

   この日、私が千葉まで帰らなければならないので、いつもの「レストラン・T」でお昼を食べ
  Sさん一家とお別れした。

   今回、大粒の『苗木石』を採集できた。案内いただいた、Sさん一家に厚く御礼を申し上げ
  る。
   ( 2008年12月採集 )

2. 第1日目

2.1 中央道冬景色
     まだ暗いうちに家を出て、韮崎ICから中央道にのり、中津川を目指す。諏訪湖SAで
    いつもの”朝食バイキング”で腹ごしらえする。諏訪湖の北、「和田峠」方面は雪に覆わ
    れ、すっかり冬景色だ。ただ、諏訪湖は全面結氷どころか、ほとんど氷が見られない。

      諏訪湖の冬景色

     「恵那山トンネル」を抜けると、太陽が現れ、”晴れ男”健在。集合時間前に「中津川
    鉱物博物館」の駐車場に到着すると、既にSさん一家は到着していた。挨拶もそこそこ
    に、産地を案内してもらう。

 2.2 新産地の「南洋美人」を求めて
    車を降りて、踏み分け道を進むこと20分あまりで、新産地(私たち夫婦にとって)に
   到着した。ここは、珪石や長石を採掘したと思われ、坑道跡や露頭の前にズリが広がって
   いる。

        
           露頭               坑道跡
                「南洋美人」産地

    ズリを掘ると、廃石の層があり、その中から水晶が姿を現す。透明〜黒(煙)まであるが
   ここの目玉は、『南洋美人』、と呼ぶ長石(?)を包有するピカピカの煙水晶だ。2時間近く
   で気に入った単晶・群晶がいくつか採集できた。

       
       単晶【縦 4cm】       群晶【横 8cm】
                「南洋美人」

 2.3 「トパズ」を求めて
     最近、身体が鈍(なま)ったせいか、コンビニのおにぎりでの昼食はあまりに味気なく、
    Sさん一家が開拓してくれた福岡町のラーメン店に直行する。ホットな(熱くて辛い)ラー
    メンを食べると汗がでるほど。

     午後、Sさんが開拓した「トパズ」産地を案内してもらった。けもの道を15分も歩くと小さ
    な沢がある。ここで、パンニングを繰り返すが、小さな錫石と「トパズ」のカケラが出るだけ
    場所を変えてトライするが、1cmが最大で頭もない。

      フルイ掛けするSさん

     陽が傾いてくると急に寒くなってくる。今日はここまで、と見切りをつけ撤収した。

 2.4 苗木の夜は更けて

  (1) かんぽの宿・恵那
     Sさんの奥さんが予約してくれた私たちの定宿の1つ「かんぽの宿・恵那」は、恵那
    峡のほとりに建つ瀟洒な宿である。
     折から、クリスマス・デコレーションでわれわれを出迎えてくれた。

      「かんぽの宿・恵那」

 (2) 外から内から温まる
     さっそく温泉にジックリ浸かり、冷えた身体を温める。宴会の時間になり、ビールで
    乾杯すると今年1年の疲れが吹き飛んだ。

        
            乾杯!!           特注・飛騨牛
                かんぽの宿・恵那の宴会

     飛騨牛(産地偽装なし)のしゃぶしゃぶ、カニなどを食べ、ひれ酒で身体の内側からも
    暖め、スッカリ良い気分になった。
     部屋に戻って、この地産の「生酒」を飲みながら、この1年を振り返りながら鉱物談義に
    華を咲かせていると、22時の消灯時間だった。

3. 第2日目

 3.1 2日目のスタートだ!!
    7時過ぎに起きると、この日も青空だ。朝霧に包まれた恵那峡に「紅岩」が姿をみせ
   一幅の水墨画を見る想いだ。

      霧の恵那峡

    朝風呂を浴び、朝食をシッカリいただく。

 3.2 新産地・R地区の「トパズ」
     Sさんが2008年に開拓し、一度に20,000カラット(4kg)も採集したポイントに案内して
    いただいた。取り残してもらったポイントの土砂をパンニングすると、多いときには数個
    の「トパズ」がパンニング皿にのこる。

      パンニング皿に残る「トパズ」

     さらに深く掘ると、大き目の錫石が多数残る。これは有望だ。やがて、『 あった!! 』
    と思わず歓声を上げた。パンニング皿には、10mmを超える『苗木石』があった。

      「苗木石」【最大 10mm 】

     この後、苗木地方としては珍しい「鉄電気石」などが採集できた。ほかの産地に多い
    「フェルグソン石」や「モナズ石」は少ない。
     鉄電気石【SCHORL:NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4】は、比重(S.G)が3.24とトパズの
    3.3〜3.4に比べやや軽く、不注意にパンニングすると石英(水晶)と一緒に洗い流してし
    まう危険性がある。
     参考に結晶図を載せたが、両錐の結晶では両端で結晶の形が違う、いわゆる「異極
    像」を示す。今回採集したのは、『ベンツ・マーク』で、結晶図の上にあたる部分である。

         
              トパズ           電気石        電気石結晶図
                      新産地・Rの採集品と結晶図

 3.3 また会う日まで
     寒い中、水に浸かってのパンニングやフルイ掛けは、特に女性陣にはこたえるので
    お昼近くに引き上げた。
     お昼は近くにあるレストラン「T」に入った。ここのパスタランチは、コーヒー、サラダ付きで
    750円と廉く、しかも美味しいのでお勧めだ。

     この日、私が千葉まで帰らなければならないので、昼食の後、解散した。甲府発18時の
    千葉行き特急に乗り、20時過ぎには単身赴任先に帰った。

5. おわりに

 (1) 恒例の”年末ミニ・ミネラルウオッチング”を迎え、”苗木地方での2008年採集納め”
    を無事終了することができ、案内いただいたSさん一家に厚く御礼を申し上げる。

     今回の採集納めでは、今まで採集した13mmに次ぐ大きな『苗木石』はじめ「鉄電気石」
    など、苗木地方では比較的珍しい標本も採集できた。

     2日目の帰途、恵那峡からみた苗木地区のシンボル・恵那山は、頂上から中腹に掛け
    真っ白い雪に覆われ、来る2009年の新年を迎える姿のように見えた。

      恵那山

     暖かくなったら、今回教えていただいた産地で本格的に採集してみたいと思っている
    のだが・・・・・・・・。

 (2) 2009年1月の採集品に「10mmオーバーの苗木石」を掲載したところ、『産地を教えて』
    とのメールがあった。
     HPを読むとお分かりのように、ここはSさんが開拓した産地であり、お教えできない
    ことをご了解ください。

6. 参考文献

 1) 長島 乙吉・弘三:日本希元素鉱物,長島乙吉先生祝賀記念事業会,1960年
 2) 長島 乙吉:苗木地方の鉱物,中津川市教育委員会,昭和41年
 3) 松原 聡:日本産鉱物種,鉱物情報,2002年
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