2006年は、私が茨城県に単身赴任していたためできなかったので、その分の埋合せ
の意味も込めて、岐阜県苗木地方を舞台に開催した。
2007年は、苗木地方で「今まで採集した中で一番美しいトパズ」「サファイア(鋼玉)」
そして「800カラット(160g)余りのトパズ巨晶」などを採集させていただいた。
今回は、『 辛酸地、でなくて”新産地”と古典的産地を訪ねて 』、と題して、今まで訪
れたことがない新産地2箇所と有名産地1箇所を1泊2日で回った。
初日は、氷雨交じりの肌寒い天気だったが、新産地・B川では、「頭付トパズ」「川擦れ
なし綺麗な水晶」などを採集でき、目的の1つを達成できた。午後、古典的産地・K沢で
”ラスト数分”で「サファイア(鋼玉)」を採集でき、2007年の苗木地方総決算に相応しい
1日だった。
Sさんの奥さんが予約してくれた「かんぽの宿・恵那」では、温泉にジックリ浸かり冷え
た身体を温め、ビールで乾杯すると今年1年の疲れが吹き飛んだ。フグ鍋、ひれ酒で
身体の内側からも暖め、スッカリ良い気分になった。
”カラオケ”の後、部屋に戻って、持参したワインを飲みながら、「標本鑑定」や鉱物談
義に華を咲かせていると、22時の消灯時間だった。
翌日、快晴の青空の下、新産地・Y川を訪れた。ここぞと思うポイントで、パンニングす
ると多量の「錫石」に混じって「トパズ」や「フェルグソン石」が採集できた。今回は、広い
範囲を探索するのが目的なので、上流部や支流などを探索し、お昼を食べ、解散した。
今回、B川、Y川の2箇所で新産地を開拓でき、古典的産地では「サファイア」の良品を
採集できた。ご一緒いただいた、Sさん一家に厚く御礼を申し上げる。
( 2007年12月採集 )
「恵那山トンネル」を抜ければ、天気は好転するのでは、との期待も空しく、鉛色の
空が広がり、氷雨が降っている。
集合時間数分前に「中津川鉱物博物館」の駐車場に到着し、挨拶もそこそこに、
第1日目の作戦を練る。
2.2 新産地・B川を攻めろ
長島先生の小冊子「苗木地方の鉱物」に、ペグマタイト鉱物や砂鉱の産地の解説と
地図が付いている。発行が昭和41年(1966年)と、40年以上前のものである上、10万
分の1の地図なので詳しい場所まではわからない。
その中に、「砂金」「青玉(鋼玉)」そして「緑柱石」の産地として、『B川』の名前がある
が、今まで訪れることがなかったので探査してみることにした。
川床に花崗岩が露出し、後で判ったことだが、”晶洞(ガマ)”が見られる場所があ
り、その周辺でパンニングしていたことになる。
( 無意識に(?)、川の相を読んで、ベスト・ポイントに取り付いていたようだ )
しばらくして、Sさんの奥さんが、『 あった!! 』、と歓声を上げた。近寄ってみる
と、「頭付き透明なトパズ」で、川ズレがほとんどなく、晶洞が近いことをうかがわせた。
妻が、「 この辺りが良さそう 」、という場所でパンニングすると、「川擦れなし綺麗
な水晶」が続けざまに2本採集できた。
今回は、新産地の探査が目的なので、広く、浅くをモットーに、このポイントの上下
で探査したが、思わしくなかった。逆に、この近くの地区名の由来、とも思える「川蛭」
”吸血鬼”がたくさん生息していることが判明し、お昼近いこともあり、早々に退散した。
2.3 古典的産地・K沢の「サファイア」を求めて
この寒さの中、コンビニのおにぎりの昼食はあまりに味気なく、女性陣のキチンとし
たお店で昼食を摂りたいとの要望で、蛭川地区の「トウインクル」に入った。ここの
パスタランチは、コーヒー、サラダ付きで750円と廉く、しかも美味しいのでお勧めで
ある。
昼食を摂りながら、午後は、秋のミネラルウオッチングに参加できなかったSさん
一家が訪れていない、古典的産地・K沢で「サファイア」を狙うことに決まった。
ミネラル・ウオッチングで訪れた場所には、愛知のKNさん、東京(京都)・H君などが
その後も訪れたようだが、まだまだパンニングできる場所は残されていた。
15時近くになり、そろそろ引き上げようか、というころになって、私のパンニング皿に
青黒い塊があった。咄嗟に、『 サファイアだ!! 』、と叫ぶ。Sさん夫妻も近寄って
来るが「実物を見ないと判らない」、との感想だ。妻は、何度も同じようなサファイアを
見ているので、「 間違いない! 」、と太鼓判(?)を押す。
【後日談】
帰宅して、実体顕微鏡で確認すると、六角板状や柱状結晶が多数集合している。
剥離した薄片は、青色の薄い板状で、正真正銘の”サファイア”に間違いない。
念のため、比重を測定したところ、約4あり、純粋なサファイア(比重3.99)と同じく
なので、白く見える部分もサファイアと考えられる。
パンニングしていると、”青黒い塊”が見えたので、とっさにパンニングの手を止
めたが、1秒遅ければ、川の中に流してしまっていたかも知れない。
2.4 苗木の夜は更けて
(1) かんぽの宿・恵那
サファイア発見に、元気づけられ、パンニングするがそうそう続けて出るほど世の
中は甘くない。周りがほの暗くなってきたので、今夜の宿に引き上げることにした。
Sさんの奥さんが予約してくれた私たちの定宿の1つ「かんぽの宿・恵那」は、恵那
峡のほとりに建つ瀟洒な宿である。
折から、クリスマス・デコレーションでわれわれを出迎えてくれた。
(2) 外から内から温まる
さっそく温泉にジックリ浸かり冷えた身体を温める。宴会の時間になり、ビールで
乾杯すると今年1年の疲れが吹き飛んだ。フグ鍋、ひれ酒で身体の内側からも暖め
スッカリ良い気分になった。
”カラオケ”の後、部屋に戻って、持参したワインを飲みながら、「標本鑑定」の
時間になる。
Sさんの奥さんが「アクアマリン」かと思ったのは、「細柱状のトパズ」だったりして
悲喜こもごも。
鉱物談義に華が咲いていると、あっという間に22時の消灯時間だった。
朝風呂を浴び、朝食をシッカリいただく。昨夜の作戦通り、今日は、新産地・Y川を
探査することにする。
3.2 新産地・Y川探索
長島先生の小冊子「苗木地方の鉱物」に、「砂金」「砂鉄」そして「苗木石」の産地と
して、『Y川』の名前がある
数年前、Y川を訪れたことがあったが、細かい「錫石」が採集できただけだった。今
回改めて地形図を見直してみると、今まで「Y川」はここだと思っていた場所から数
キロはなれた場所に、「Y」という小字名があるではないか。その集落を貫く川があり
これが「Y川」ではないか、と閃いた。
Y川を観察すると、石英塊も点々と落ちていて、いかにもありそうな雰囲気が漂って
いる。
パンニングすると1回目から大き目の錫石が多数残る。これは有望だ。やがて、S
さんの奥さんが、『 あった!! 』、と歓声を上げた。近寄ってみると、「透明なトパズ」
で、川ズレがほとんどない。間もなく、妻のパンニング皿にも「トパズ」がきた。Sさんは
「フェルグソン石」の良品を採集し、「苗木石」の可能性もありそうだ。
【後日談】
帰宅して、「精密パンニング」で石英、磁石で「砂鉄」、そして「茶こし」で細かい鉱
物を除去した後、実体顕微鏡で確認すると、「フェルグソン石」と「鉄重石」が各数個
確認できた。
ここも、新産地の探査が目的なので、広く、浅くをモットーに、このポイントの上流と
支流で探査した。
3.3 また会う日まで
寒い中、水に浸かってのパンニングは、特に女性陣にはこたえるので、お昼近い
こともあり、ひとまず引き上げることにした。
昼食の後、暖かくなったら本格的な採掘を約束して、Sさん一家とお別れした。
ただ、ここ数年、パンニングやフルイ掛けがされた形跡が全くなく、荒れていないのが
何よりだった。
今回の探査結果を一覧表にまとめてみた。
探査結果 ◎:多い ○:産出確認 ×:産出未確認
産 地 | 産出 鉱物 | 「苗木地方の鉱物」 に記載有無 | 探査 結果 | 備 考 | B川 |
砂金 錫石 緑柱石 青玉(鋼玉) 砂鉄 水晶 黄玉(トパズ) フェルグソン石 |
あり あり あり あり あり あり なし あり |
× ○ × × ○ ◎ ○ × | 晶洞(ガマ) あり |
Y川 |
砂金 錫石 砂鉄 水晶 黄玉(トパズ) 苗木石 フェルグソン石 サマルスキー石 鉄重石 |
あり あり あり なし なし あり なし あり なし |
× ◎ ◎ ○ ○ × ○ × ○ |
この一覧表を眺めてみると、産出するはずの鉱物が確認できず、逆に未報告の
鉱物を確認するなど、面白い結果になっている。
思い返すと、今年苗木地方では、愛知県・Sさん一家と「今まで採集した中で一番
美しいトパズ」と「800カラット(160g)余りのトパズ巨晶」などを採集したり、栃木県の
Sさん一家と「サファイア」を採集したり、と楽しませていただいた。
今回の採集納めでは、2箇所の新産地で「トパズ」などの産出を確認し、古典的産
地では、シッカリと「サファイア」を採集でき、苗木地方を存分に楽しませていただい
た。
暖かくなったら、今回開拓した新産地で本格的に採集してみたいと思っている
のだが・・・・・・・・