山梨県下部町妙法鉱山の鉱物-その2-

山梨県下部町妙法鉱山の鉱物-その2-

1.初めに

 昭和45年に刊行された「山梨県地質誌」には、山梨県内の金属・非金属鉱山が
網羅してある。そのうちの一つに妙法鉱山がある。2002年7月に、約10年ぶりに訪れ
輝銅鉱など代表的な標本を採集できた。
 2003年9月に、京都の益富地学会館を訪れた際、「妙法鉱山産のブロシャン銅鉱」が
展示されており、採集してみたくなった。
 下部町にある「湯之奥金山博物館」へ行く途中に、立ち寄り、念願の「ブロシャン銅鉱」を
採集できました。
(2003年10月採集)

2.産地

 国道300号線を下部温泉に向かって走ると常葉(ときわ)トンネルがあり
その手前約150mに左側からの沢がある。この沢の上流約100mに妙法鉱山の
坑口とズリがある。
 ただし、ここは個人の家の敷地を通ることになりますので、了解を頂いて入る
必要があります。

   妙法鉱山入口

3.産状と採集方法

 ここの鉱床は、玄武岩質の凝灰角礫岩に網目状やポケット状に胚胎している。
東西110m、南北60mの範囲に富鉱体がいくつかあり、それを採掘した。
 入口の家人の話では、第2次世界大戦前後にも採掘したそうですが
「日本鉱産誌」などによると、本格的な採掘は、昭和25年から30年にかけて
だったようです。
 ズリとその下の沢には、緑色の銅の2次鉱物が付いたズリ石がたくさん落ちており
表面採集で充分良品が得られます。
 ズリの上には、坑道が残っていますが、今回は、坑内での採集はしませんでした。
       
          坑道               ズリ【沢にもズリ石】
                   妙法鉱山

4.産出鉱物

(1)輝銅鉱【Chalcocite:Cu2S】
   するどい金属光沢をもつ、やや青みがかった鉛色をした微細な粒状で産出します。
   黄金色の黄銅鉱と虹色の斑銅鉱の微粒を伴っている。
   化学式からも分かるように、輝銅鉱は、デュルレ鉱【Djurleite:Cu63S32】とは
   結晶系が違うだけで肉眼での識別が難しいとされています。
   ここでは、濁沸石を含む部分に膿集していますので、濁沸石を目当てに、ズリ石を
   割ってみると良いでしょう。

   輝銅鉱
(2)赤銅鉱【Cuprite:CuO2】
   孔雀石にともなって、赤黒色の土状(微細粉末)で産します。

   赤銅鉱
(3)孔雀石【Malachite:Cu2(CO3)(OH)2】
   この産地で一番目に付く2次鉱物です。部分的には、珪孔雀石も混じっているようです。
   文献には、藍銅鉱も採掘したとありますが、藍銅鉱は見かけません。(わからない?)
   藍銅鉱が生成するためには、孔雀石ができるよりも高いCu2+(銅)イオン濃度が
   必要とされることから、富鉱体の周辺にはあるのかも知れません。

   孔雀石
(4)ブロシャン銅鉱【Brochanite:Cu4(SO4)(OH)6】
   ズリ石の表面や空隙に、濃緑色の皮膜状で産出する。石膏と共生することから
   ブロシャン銅鉱と考えらる。

   ブロシャン銅鉱
(5)その他
   このほか、石膏、濁沸石などが採集できます。

5.おわりに

(1)地元にいるとあまり気にしない産地ですが、他所に行ってみて初めてその価値を
   知る場所です。
   2次鉱物が好きな方なら、ジックリ攻めれば面白い産地だと思います。
(2)冒頭にも書きましたが、個人の家の前を通って産地に行くため、必ず断って
   入らせてもらいましょう。
   また、国道300号線に駐車すると違反で切符を切られることがあるとのことですから
   注意しましょう。

6.参考文献

1)山梨県・山梨県地質図編纂委員会編:山梨県地質誌,山梨県・山梨県地質図編纂委員会,昭和45年
2)日本鉱産誌編纂委員会編:日本鉱産誌 T-b(銅・鉛・亜鉛),東京地学協会,昭和31年
3)加藤 昭:鉱物読本シリーズNo6 二次鉱物読本,関東鉱物同好会編,2000年
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