この産地を案内した人の連れやその知人などを通じて、産地の情報はアッと言う
間に広がり、茨城県の某グループも知るところとなった。
10月に訪れたときに、メンバの4人と会い、11月に訪れたときもメンバの2人と会った。
その間に、何人かが訪れて、ガマ(晶洞)を開け、巨晶・美晶を出したらしい。また、
今まで私が良品採集をギブアップしたズリで、良品を出した人もいるらしい。
このように、訪れる人の採集スタイルや好きな鉱物などが違い、新しい鉱物種など
が発見されている。産地が進化・発展していく様子を観察・記録しておけるのも”開拓者”
の特権だろう。
産地は標高1,200m前後あり、本格的な寒さを迎え、2007年最後の訪山の積りで長野
小Yさんと訪れたところ、茨城県のYさんとその連れがいた。
私たちは、いつもの露頭で、堅い石英脈を叩き、私が午前、午後、それぞれ1つずつ
ガマ(晶洞)を開け、巨晶(群晶)と美晶を採集できた。採集品の一部は、茨城・Yさんと
その連れと分けあった。
今回の採集品の多くが、「褐鉄鉱」に包まれており、自宅に戻って、”塩酸のお風呂”
に入れたところ、驚くほどの”湯上り美人”に変身した。中には、「硫砒鉄鉱」の”山入り
水晶”もあり、産状の多様性に驚くと同時に、密かな期待も抱いている。
2003年1月、雪の積もる雄鷹山の尾根、谷をしらみつぶしに単独行で踏破し、苦労の
末、いくつかの坑口、ズリと共に、この産地を再発見してから5年が経とうとしている。
この産地には十分楽しませていただいた。次なる新産地を開拓せねば、との思いを
強くしている。
( 2007年11月採集 )
(1) 水晶【QUARTZ:SiO2】
今回採集できた水晶を一覧表にまとめてみた。
区 分 | 説 明 | 標 本 例 | 備 考 | 平板 (ひらばん) |
”平板”とは 扁平な晶癖をもつ 水晶の俗称 |
平板【長さ8cm】 | 透明感がずばらしい | 山入り (ファントム水晶) |
緑泥石(黒雲母)や 気泡などが錐面に 付着した後、さらに 成長を続け、水晶の中に 水晶があるように見える |
山入り【高さ4.5cm】 |
山は、金属鉱物で 樹枝状、磁性なしから 「硫砒鉄鉱」と判断 |
群晶 (ぐんしょう) |
水晶の結晶が 集合したもの |
群晶【縦20cm】 |
大きな水晶の柱面に いくつかの頭付き 水晶が接合している 向山鉱山特有の 群晶形態 「日本式双晶?」 |
( 「新産地」を辞書登録すれば良いのだが、一生付き合っていきそうだ )
向山の産地を開拓(再発見)したのは、2003年1月、お屠蘇気分も残っている
ころだった。前々日だかに降った雪が積もっている雄鷹山の尾根、谷をしらみ
つぶしに単独行で踏破し、苦労の末、、いくつかの坑口、ズリと共に、この産地を
再発見した。
それから5年が経とうとしている。私だけでなく、大勢の石友・石人がこの産地に
十分楽しませていただき、訪れる人が違えば、違った発見もあった。
『未来志向』の私としては、次なる新産地を開拓せねば、との思いを強くしている。
(2) 産地の進化・発展そして・・・・・
向山鉱山で水晶の巨晶・美晶が採集できるようになったのは、長野県の石友
”YYコンビ”を案内した2007年7月からだった。
このとき、小Yさんがガマ(晶洞)を開け、素晴らしい両錐平板水晶を採集しなか
ったら、今でもこの産地は静かな眠りについていただろう。
同じ産地でも、訪れる人によって採集スタイルや好きな鉱物などが違い、新しい
鉱物種、晶相の結晶などが発見されるチャンスが増える。こうして産地が進化・発
展していく様子を観察・記録しておけるのも、”開拓者”の特権だろう。
(3) 日本式双晶
文献には、向山鉱山産水晶の特長は次の通り、と記載されている。
@色・・・・・・無色、白色(表面曇り)、草入り
A晶相・・・・柱状単晶のみで、双晶は産出しない
B特徴・・・・透明度が高く美しい。
草入りが多く、青(緑?)色草入り、枯れ草(電気石?)入り
小型のトッコ多産
「双晶」は産出しない、とあるが、ここで言う「双晶」とは、”傾軸式双晶”の代表で
ある『日本式双晶』を指していると考えられる。
なぜなら、”ドフィーネ式”に代表される『透入(同軸)双晶』は、比較的簡単に採集
できるからである。
大Yさんを案内したとき、『 向山鉱山は、こんなに平板が多いのに日本式
双晶が出ないのは、不思議だ 』、と何度か話していたのが気になっていた。
上の写真の「群晶」は、『日本式双晶』の定義の解釈のしかたによっては、日本式
双晶とも考えられ、識者に鑑定をお願いしたい。
日本式双晶にこだわる理由の1つは、ごく最近、某所で両翼22cmの日本式双晶を
大Yさんと私で採集したからである。( 近日、HPに掲載予定 )