露頭全体を案内・説明した後、各自思い思いの場所に陣取って、叩きはじめた。
私は、以前数多くの晶洞が開いた場所を攻めたが芳しくない。以前、小Yさんが「美晶」
を出した跡の脇に移動し、石英脈を叩くが、硬いの何の、叩く度、タガネの先端から
”火花”が飛び散る。
小一時間叩いたとき、ピンポン玉ほどの大きさの”穴”が開いた。ここでは、”三角
穴”と名付けた不毛晶洞があるので、ぬか喜びに終わることも多い。周囲を掘り崩し
手が入るまでに広げ、ライトで中を照らすと奥が見えないほど深い。
高鳴る胸を押さえ、私の石友の中で、晶洞掘りの第一人者・KAさんを大声で呼ぶ。
『 ガマ(晶洞)が開(あ)いたゾ〜!! 』
近くにいたDさんらが近寄ってきて、覗き込む。遠くから駆けつけたKAさんが、中に
手を入れたり覗いてみて、しきりに「不思議なガマだ」を連発する。確かに、手を入れ
てもガマ粘土特有の”ヌルヌル感”はないし、”チクチク”した水晶の手触りもない。
とりあえず穴を広げてみると褐鉄鉱に覆われたガマだった。細心の注意を払いなが
らも手際よく、KAさんが最初に取り出した水晶は、部分的に褐鉄鉱に覆われた20cm
しかも頭付き、透明な巨晶だった。
( この「巨晶」は、KAさんの采配で、ガマを開けた私のコレクションに無事収まった )
この日は、大きな平板はじめ良品が多数出続けていたが、採集品を皆で分けて
15時前に撤収した。開けたままの晶洞には、まだ大きな水晶の頭が見えたが、これ
らは大Yさんのために残しておくことにした。
翌日、大Yさんと湯沼鉱泉宿泊客のSさんをポイントに案内した。午前8時を少し
回ったばかりなのに先客2名がいた。”ズリ派”の人たちで、われわれはガマ(晶洞)の
続きを掘ることにした。
褐鉄鉱を崩しながら掘り出す感じで、私の分け前は、「緑草入り平板」「両錐平板」
そして「平板平行連晶」、と前日に勝るとも劣らぬ成果だった。
Dさんから、「晶洞を開ける現場に初めて立ち会い、ガマ出し水晶のおすそ分け
にも預かった」、と感謝のメールをいただいた。
”卒業”した筈だったが、ここは冬でも楽しめるので、息長く取り組んでみたいと思い
直している。今回の素晴らしい成果を分かち合うことができた、同行した大勢の石友
に感謝している。
( 2007年10月採集 )
晶洞には2種類ある。
@ 石英の結晶面に囲まれた三角錐状の空間
A 円筒状空間
@のタイプは、奥行きが10cmを超えるくらい空間が広くないと水晶の結晶は
見当たらない。Aのタイプは、ガマ粘土が充満し、黒平や乙女鉱山と同じように
水晶の良品が期待できる。
晶洞の壁にあったはずの水晶は、ほとんどがガマ粘土と共に、底に溜まってい
て、地殻変動の激しさを物語っている。そのせいか、群晶は少なかった。
途中【これから水晶を取り出す】
終り【兵どもが夢の跡】
今回開いたガマ(晶洞)の様変わり
【タガネの長さ25cm】
採集して分配してもらった標本は、形が完全、大きさも大きく、そして”緑の草”の
インクルージョン入り、と今まで採集した水晶の中で、一番美しい部類に入るもの
も多かった。
(1) 水晶【QUARTZ:SiO2】
今回採集できた水晶を一覧表にまとめてみた。
区 分 | 説 明 | 標 本 例 | 備 考 | 平板 (ひらばん) |
”平板”とは 扁平な晶癖をもつ 水晶の俗称 |
両錐【長さ8cm】
|
両端に”頭”があるので 両錐(Double Point)
銀黒色に見えるのは |
柱状結晶 |
六角柱状の もっとも普通の 結晶 |
巨晶【径12.5cm 高さ20cm】
|
2本の頭付き水晶が 寄り添った連晶 重量は1.5kg強と ”ビッグ”
根元部分が |
平行連晶 |
上下軸(c軸)が 平行な結晶が 2つ以上集合して いる |
平行連晶【高さ8cm】 |
2つの平板水晶が 平行に成長 全体として 1つの水晶に なっている |
群晶 (ぐんしょう) |
水晶の結晶が 集合したもの |
残念ながら 今回はご紹介できる ほどの良品は採集 できなかった |
1つの水晶に いくつかの頭付き 水晶が接合している |
草入り水晶 |
水晶の中に 針状結晶を 内包する |
全体【高さ7cm】 |
薄い平板水晶の 中の針状結晶は 緑色透明〜黒色 不透明
針の周辺には
(マグネシウム(Mg)と |
私たちの成果を聞き、直後に訪れた石友・小Yさんが大きなガマ(晶洞)を開け
た。何でも、Sさんと私が掘り込んでいた場所を、ものの10分も掘ったら、”ズボッ”
とタガネが吸い込まれたらしい。
ガマ(晶洞)の大きさは1m近くあり、「巨晶」など良品が多数出た、と聞いた。
(2) 以前のHPで向山でのYYコンビとのミネラル・ウオッチングで 『 小Yさんが、
「 3人の干支(えと)は、”申(サル)”、”酉(鳥)、”戌(イヌ) だ 」
と言い出した。3人は、”桃太郎の家来、猿、キジ、犬 トリオ” なのだ 』
とHPに書いたところ、兵庫の石友・Nさん夫妻から本場「岡山県の黍ダンゴ」を
送っていただいた。湯沼鉱泉のお姐さんに渡したところ、居合わせた人たちが
ご相伴にあずかった。
黄粉をまぶした素朴な団子で、美味しくいただいた。これから、Nさんの家来に
なることを誓った3人だった。( 「俺は食ってねエ 」 ・・・・・・・・・ 小Yさん )
(3) 甲府市にあるとは言え、標高が1200m前後ある黒平附近では平地より一足先に
紅葉が始まっていた。
この季節、向山鉱山はじめ山梨県の山々は「キノコシーズン」で、各種のキノコが
落ち葉の間から顔を出している。
下の写真は、私が自信を持って採集できる数少ない「食用キノコ」の「網茸(あみ
たけ)」である。(地方によって、「いぐち」「りこぼー」などと呼ぶ)
「自家農園の無農薬秋茄子」と一緒に味噌汁にして食べると、美味しくて、つい
田舎を思い出す。
( ナスは、毒キノコの毒を消す、と一般に信じられているようだ )