山梨県黒平・向山鉱山の並行連晶

山梨県黒平・向山鉱山の並行連晶

1.初めに

 いつも私のHPを見てくれている埼玉県のAさん親子から、私のHPを見て
黒平に行ったが、何も採れなかった、とのメールを貰い、昨年何回か一緒に行った
向山で採集することにした。
 甲府地方は、その前日に雪が降り、金桜神社の手前から路面には積雪が
所々に見られ、黒平の集落辺りでは、新雪を踏んで走る有様であった。
 それでも何とか産地にたどり着き、今まで採集した中では一番の並行
連晶やインクルージョン入り水晶を採集できた。
 Aさん親子が、正月に、尾平鉱山で採集した「マリモ入り水晶」の美品を
いただき、いつかは、九州へも行って見たいと考えています。
(2004年3月採集)

2.産地

 上黒平の集落を抜け、クリスタル・ラインで焼山峠に向かって800mも走ると
できたばかりの林道があり、そこに入ると平馬沢を挟んで向山鉱山があった
雄鷹山が見えてくる。
 この日は、昨年(2003年)の1月と同じ、雪景色でした。

     
      2003年1月【豪雪】    2004年2月【雪はほとんどない】
                 雄鷹山

3.産状と採集方法

 雄鷹山一帯は、アプライトで、その中に貫入した石英脈の晶洞部分に水晶が
族生している。
 神津博士が昭和12年(1937年)に岩石鉱物鉱床学誌に掲載した「水晶の
日本式双晶に就て(T)」を読むと、次のような記述がある。

  『古来有名な甲州の水晶は、甲府市の北約6里(24q)の金峰山国師ケ嶽を
  中心として甲府盆地の北半を囲みて露出する花崗岩地方に産出するもので
  ・・・・・・・・
   これらの水晶の産出状態は場所によって少しく相違はあるが、何れも
  この花崗岩に由来するPegmatite中に産するものヽ如く、・・・・・・
  向山に於けるが如く、殆んど水晶のみより成る所謂quartz-Pegmatite式の
  ものもある。』

  この記述の通り、向山鉱山は水晶以外の鉱物が殆んど見られない産地です。

4.産出鉱物

  向山鉱山での採集品は、水晶がメインで、普通の無色、透明のものから、各種の
 インクルージョン入りが採集できます。
(1)並行連晶【Parallel Type Quartz:SiO2】
    何本かの水晶の結晶軸が並行になっているもので、向山鉱山では
   平板状と柱状が見られますが、圧倒的に平板が多い。
    いずれの連晶も、内部に黒雲母〜緑泥石を内包している。

       
           平板           柱状
                 並行連晶

(2)平板水晶【Plane Type Rock Crystal:SiO2】
    この産地では、各種の平板水晶が産出します。比較的柱状に近いものです。

   平板水晶

(3)水晶トッコ【Cluster Rock Crystal:SiO2】
    この産地としては珍しい、トッコが採集できました。

   群晶(クラスター)

(4)角閃石入り水晶【 Quartz including Hornbrende:Ca2(Mg,Fe)4AlSiO7AlO22(OH)2】
    向山鉱山産の水晶の内包物として多いのが、緑泥石、黒雲母で、角閃石や緑簾石の
   入ったものがごく稀に見つかります。

   角閃石入り

5.おわりに

(1)向山鉱山の坑道の数は30余りと言われ、名前が知られているものだけでも
   17坑あります。
   今年こそ、全部を回って見たいと考えています。

6.参考文献

1)角田謙朗:山梨県の水晶案内,山梨地学第20号〜第26,27合併号,1976〜1984年
2)神津俶祐:水晶の日本式双晶に就て(T)」,岩石鉱物鉱床学誌第17巻第1号,昭和12年
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