山梨県黒平向山鉱山の水晶-その2-

山梨県黒平向山鉱山の水晶-その2-

1.初めに

 山梨県の水晶鉱山の1つに黒平向山鉱山があり、ここで産出した水晶は、
「和田標本」にも、収蔵されている。
 2002年12月初めと2003年の年明け早々、雪の残る中、採集に行った。
 暖かくなったら本格的に採集しようと考えていたが、1回目、2回目の
採集結果が思わしくなく、自然に足が遠のいていた。
 そんな折、埼玉の石友Aさんからのメールで、Aさんの友人ASさんと共に
8ケ月ぶりに訪れ、新たな坑を2ケ所発見し、それぞれの坑の
代表的な標本を採集できた。
 向山鉱山は、範囲が広く、まだ訪れていない坑が数多く残されています。
寒くなる前に、更なる産地探索を考えています。
(2003年9月採集)

2.産地

 黒平の南、雄鷹山の北側尾根の両側に、水晶坑跡が点在しており、ここが
産地です。

3.産状と採集方法

 雄鷹山一帯は、アプライトで、その中に貫入した石英脈の晶洞部分に水晶が
族生している。
 石英脈が地表で見える場所は少なく、黒平鉱山のようにマサ化している部分も少なく
地表面で晶洞を当てる事は難しい。坑道内で石英脈を追いかけて、晶洞部分から
採集するか、坑道内外のズリを掘り返して採集します。

       
         「出穴」坑内        「神楽殿(?)」坑前ズリ
                  黒平向山採集風景

4.産出鉱物

 向山鉱山での採集品は、水晶がメイン(水晶のみ)で、今回の主たる目標は
「緑草入り水晶」でした。
(1)草入り水晶【Rock Crystal including Hornblende:SiO2】
   緑色〜黄褐色針状の角閃石(緑簾石?)が入った草入り水晶が採集できます。
   草入り水晶は、表面に白雲母(絹雲母)が晶出しているケースがほとんどですので
   草の正体は、角閃石の可能性が高いと思う。
    緑草入りの産出地点は、限られており、しかも産出量は極めて少なく
   今回、頭付きは1個体しか見つからなかった。

       
         「緑」            「黒」
                草入り水晶
(2)星入り水晶【Rock Crystal including Chlorite:SiO2】
   緑黒色、擬六角板状の緑泥石が入った星入り水晶が採集できます。

   星入り水晶

5.おわりに

(1)向山鉱山は、甲府市向山にあったところから名づけられたようです。
   坑道の数は30余りと言われ、名前が知られているものだけでも17坑あり
   黒平の集落に近いこともあり、江戸時代から太平洋戦争中にかけ、断続的ながら
   一時は盛んに採掘されたようで、その規模の大きさが偲ばれます。
(2)坑道の名前は、産出した水晶の形態(トッコ)、採掘するときの様子(神楽殿)
   坑道の形(大穴)、採掘者の名前(五郎兵、明電、大戸屋相場)などに因んで
   名付けられたようですが、今では地元の人にも忘れ去られようとしています。
(3)文献では、向山鉱山では、各種の水晶が採掘され、その特長は次の通りです。
   @色・・・・・無色、白色(表面曇り)、草入り
   A晶相・・・・柱状単晶のみで、双晶は産出しない。
   B特徴・・・・透明度が高く美しい。
          草入りが多く、青(緑?)色草入り、枯れ草(電気石?)入りあり。
          小型のトッコ多産
(4)今回、雄鷹山の東斜面だけで採集したので、向山鉱山産水晶の全ての標本を網羅
   できませんでした。向山鉱山の坑道は、西側斜面の方が多かったようですので
   そちらも探索してみたいと計画しています。

6.参考文献

1)角田謙朗:山梨県の水晶案内,山梨地学第20号〜第26,27合併号,1976〜1984年
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