モーツァルト石(Mozartite)

           モーツァルト石(Mozartite)

1. 初めに

   2006年1月、東京で開かれた「鉱物同志会」の新年会で、堀会長から、『2006年は
  モーツァルトの生誕250年にあたる。鉱物に「モーツァルト石」というのがあり、国内でも
  産出し、実物を見せてもらったが、茶色い結晶で??。 産状からして広い範囲で産出
  する可能性がある 』
 との話があった。
   この話をHPに、手短に書いたところ、千葉の石友・Mさんから、原著論文のコピーを
  送っていただいた。
   久しぶりに読む英文(部分的にイタリア語)論文であったが、偶々東京に行く用事が
  あり、電車の中で読み、翻訳したのでここに掲載させていただく。
   これによると、

   (1) モーツァルト石の原産地はイタリアである。にも拘わらず、隣国・オーストリア
      の作曲家の名前を付けたのは、なぜか?
      ( これは、日本で発見された新鉱物に韓国や中国の人の名前を付けるような
       もので、、日本人の感覚からは理解が難しい )
   (2) 没後200年という前例のない( untraditional )理由で命名された。
      ( 通常は、”生誕”、”発見”とか”お目出度い”ことに因むはずなのに )
   (3) この新鉱物の発見に、ローカル(地元)の鉱物収集家・Mr A.Pozzi の力があった
      事も知った。

   このように、”○○先生のお話”だけからは知り得なかった事実を自ら知った意義は
  大きく、論文を送っていただいたMさんに、厚く御礼を申し上げる。
   また、命名の妥当性などについて紛糾した経緯や国内でモーツァルト石が産出しそうな
  産地なども松原先生に問い合わせした結果を石友・Mさんから知らせていただいた。
  重ねて御礼を申し上げる次第です。
   ( 2006年3月情報 )

2. 原著論文「モーツァルト石(Mozartite)」

   原著論文のタイトルは ” Mozartite,CaMn(OH)SiO4,A new Mineral Spacies from the
  Cerchiara Mine , Northern Apennines , Italy ” とあり、訳せば「イタリア、北アペニン
  セルチアラ鉱山産の新鉱物”モーツァルト石(Mozartite)”、CaMn(OH)SiO4」とでもなろうか。
   イタリアのジェノヴァ大学地球科学科のリカルド・バッソーら3名によって「Canadian
  Minerarogist」誌に1993年に発表された。
   論文は、参考文献を含め、全部で6ページほどの、コンパクトなものである。
   以下、原著論文の流れに従って私なりの訳文を載せてみたい。ただ、「結晶構造」など
  ”甘茶”の私が検証する術をもたず、従って関心の薄い部分については割愛した。

 2.1 Abstract【内容梗概】
     モーツァルト石は、イタリア、北アペニン、バル・ディ・バラ村にあるセルチアラ鉱山に
    産する。共生鉱物は、ペクトライト、石英そしてハウスマン鉱である。
     モーツァルト石とその共生鉱物は、オフィオライト(緑色岩)質の変成を受けたチャートの
    中に太い脈をなしている。モーツァルト石は、結晶面を示さない微細な結晶として現れる
    ことが多いが、プリズム(錐体)状[100]面を示すいくつかの結晶面も見出されている。
     結晶は、透明、濃紅色、強い多色性を示し、その光学特性は、2軸方向に正で
    2Vobs=50(2)°( 訳者意味不明)。屈折率はα1.840(5)、β1.855(5)、γ1.920(5)で
    ある。
     平均的な化学組成は、経験的に次のように導かれている。
     Ca0.98(Mn1.00Al0.02)(OH)1.00Si0.99O4.00
     モーツアルト石は、珪酸塩のバニア石( Silicate Vuagnatite )、バナジウムタングステン
    酸塩の(カルシオヴァナジン銅鉱( Calciovolborthite ))、砒酸塩のコニカルコ石
    ( Conichalcite )やニッケルオースティナイト( Nickelaustinite ) などと同じ構造を
    している。
     結晶構造は、精査の結果、R=0.027である。鉱物名に、ヴォルフガンク・アマデウス
    ・モーツァルト( Wolfgang Amadeus Motzart ) (1756〜1791)の名を戴いているのは
    彼の死後200年の記念すべき年に発見されたからである。

 2.2 Introduction【序】
     北アルペニンにおけるオフィオライト(緑色岩)化作用の中で、鉄-マンガン鉱物の生成を
    継続して研究した結果、イタリアのリグリア( Liguria)西方、バル・ディ・バラ村にある
    セルチアラ・マンガン鉱山で新鉱物”モーツァルト石(Mozartite)”を発見するに至った。
     この鉱山の珪酸塩と炭酸塩が複合した鉱物については、ルッチェッティ( Lucchetti )
    ほかによって(1988年)、バッソ( Basso )らによって(1989年)そしてカベラ( Cabella )に
    よって(1990年)にれぞれ発表されている。
     新鉱物は、アデライト( Adelite ) とデスクロワーゾ石( Descloizite )群の鉱物に極めて
    近いカルシウム-マンガン-ネソ珪酸塩鉱物である。これは、バニア石【Vuagnatite:
    CaAl(OH)SiO4】の一部が(マンガン(Mn)で置き換わったものである。
     鉱物名は、ヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルト( Wolfgang Amadeus Motzart )
     (1756〜1791)を称えるために選ばれた。と言うのは、彼の死後200年紀にあたる
    1991年に新種の鉱物と認定されたからである。この前例のない( unconventional )
    名前は、すぐ開かれた地質鉱物学会の総会でモーツアルトの音楽、とりわけ彼の
    遺作となったオペラ「魔笛」( The Magic Flute )にも因むということで、正当化( justified )
    された。
     新鉱物とその名前は、I.M.Aの「新鉱物と鉱物名委員会」で承認された。模式標本
    ( Type material )は、ジェノヴァ大学鉱物学部地球科学科のコレクションの中に
    収納されている。

 2.3 Occurrence and Physical Properties【産状と物理的性質】
     モーツァルト石は、結晶面を示さない小さな赤褐色集合をなし、ペクトライトと共に
    生成し、少量の方解石、石英、ハウスマン鉱を伴う。モーツァルト石とその共生鉱物は
    イタリアのリグリア( Liguria)西方、ラ・スペチァ( La Spezia )、 バル・ディ・バラ村
    ファギオナ( Faggiona )近くのセルチアラ鉱山でオフィオライト(緑色岩)質の変成を
    受けたチャートの中に挟在する塊状( massive )ブラウン鉱を切る太い鉱脈を満たして
    いる。
     モーツァルト石の一つひとつの結晶粒の大きさは0.1〜0.5mmで、方解石やペクトライトに
    包含されているものの中には、いくつかの単結晶面があり、プリズム(錐体)状結晶が
    重なり合った晶癖で、[100]面に平行に伸びている。プリズム(錐体)が発達したものは
    ”両端がクサビ状( bisphenoid )”を示す。双晶( twinning )や劈開( cleavage )は
    観察できず、破片は「貝殻状断口 ( conchoidal )」をしている。
     結晶の粒が小さいため硬度は測定できないし、引っ掻きキズをつける微小硬度
    ( micro-indentation )測定法でも鉱物が砕けやすくうまくいかなかった。
     クレリッチ( Clerici )溶液とウエストファール・バランス( westphal balance )を使った
    密度(比重)測定の結果、3.63(4)g/cm3である。計算による比重は
    3.68g/cm3である。
     カーギル( Cargille )オイル浸漬法で測定した25℃、589nmの波長における屈折率の
    値と5軸反射角測定器( univeresal stage )で測定した結晶軸データをまとめて表1に
    示す。

      << 表1:省略 >>

 2.4 Chemical Composition【化学組成】
     2次電子顕微鏡PHILIPS SEM 515を搭載した、質量分析器( spectrometer )EDAX
     PV9100をエネルギー散乱モード、加速電圧15kV,ビーム電流2nAで使い、16点の
    化学分析を行った。このとき、試料に存在する原子番号が10より大きい元素の標準と
    なる参照試料として、透輝石(Mg,Ca)、バラ輝石(Mn)、アノルソクレース(Al,Si)を使った。
    水分(H2O)の含有量は、新鉱物の量が少なく決定できなかったが、差異から計算した。
    マイクロプローブで調べた結果、弗素(F)は、検出限界以下であった。水分(H2O)の
    計算値は、構造解析から推論した値と良く合致している。微細な点( spot )で分析した
    結果、それぞれの結晶の化学組成には大きなバラツキはなく、累帯構造のようなものも
    ないことが判明した。平均的な化学組成はバラツキの範囲を含めて表2に示す。
     酸素5原子とおいた経験的な化学式は次の通りである。

      Ca0.98(Mn1.00Al0.02)(OH)1.00Si0.99O4.00

成分バラツキ範囲(重量%)平均値(重量%)
MgO0.00-0.150.05
CaO26.78-27.2027.08
Al2O30.40-0.700.49
Mn2O338.46-39.0138.72
SiO228.75-29.6629.25
Total   95.59

    << X線粉末解析データ:省略 >>
    << 結晶構造解析:省略 >>
    << 考察:省略 >>

 2.5 Acknowledgement【謝辞】
     ・・・・・・・。モーツァルト石の試料を提供してくれたローカル(地元)の鉱物収集家
    Mr A.Pozzi 氏に感謝する。
     

    << 参考文献:省略 >>

3. 産地と産状

 3.1 産地
     モーツァルト石は、イタリア北部、リグリア( Liguria)県(?)の西、バル・ディ・バラ
    村にあるセルチアラ・マンガン鉱山(Cerchiara Mine)から発見された。
     イタリアの地図を見ると、2006年冬のオリンピックが開催されたトリノの南東約120kmに
    リグリア県の中心都市ジェノヴァがある。リグリア県はリグリア海に面し東西に細長く
    バル・ディ・バラ村はジェノヴァの西にあたるらしい。

     
                    北イタリア地図

 3.2 産状
     モーツァルト石は、チャートを伴う変成マンガン鉱床で塊状のブラウン鉱を切る形で産し
     ペクトライト(ソーダ珪灰石)【Pectolite:Ca2NaSi3O8(OH)】と共に少量の方解石、石英
     そしてハウスマン鉱を伴う。

4. モーツァルト石(Mozartite)

 4.1 どんな色・形?
    モーツァルト石について、色、形など説明があるが、”百聞一見に如かず”である。インター
   ネットで「モーツァルト石(Mozartite)」で検索すると、簡単に画像を入手できた。
    「 今まで見た鉱物で何に似ているか?」と問われると、結晶系は違うのだが「菱鉄鉱」に似た
   雰囲気である。

    


スケール:9.5×9.7cm

モーツァルト石
【"Arkenstone"HPから引用】



 4.2 日本でも産出するのか?
     多くの皆さんの関心の的は、日本でも産出するのか、採れるのかであろう。

   (1) 既産産地
        「日本産鉱物種」には、国内でのモーツァルト石の産地が記載されている。

       産地  :愛媛県上須戒(かみすがい)鉱山
       発表  :皆川 鉄雄   鉱物学雑誌(1995年)

        「四国鉱山誌」によれば、上須戒(かみすがい)鉱山は、銅を目的に明治末年に
       開坑し、戦後昭和25年(1950年)ころからマンガン鉱を採掘した、とある。この本が
       出版された昭和32年(1957年)現在、1〜8号坑まで開坑し、深さは何れも10mほどで
       露天堀に近い状況とある。
        この鉱山は、三波川系の長瀞結晶片岩地帯に属し、石墨片岩、紅簾石英片岩の
       薄層を挟有している。鉱床露頭附近は、もっぱら緑色片岩のみ発達し・・・・・とある。

   (2) 新産地
        その後、モーツァルト石の新しい産地が発見された、という情報は得ていないが
       堀先生が、『 産状からして広い範囲で産出する可能性がある 』 と話している。

        しからば、それは何処か? となる。
        千葉の石友・Mさんから戴いた次のようなヒントと松原先生にMさんが問い合わせして
       くれた結果をご紹介したい。

       @ モーツァルト石は「バニア石」のアルミニウム(Al)をマンガン(Mn)で置換したもの
          ペクトライト(ソーダ珪灰石)に含まれる

鉱物名化学式  国内産地   備     考
モーツァルト石
(Mozartite)
CaMn(OH)SiO4愛媛県上須戒鉱山理想式
バニア石
(Vuagnatite)
CaAl(OH)SiO4三重県白木出典:「日本産鉱物種」
高知県鴻ノ森
ペクトライト
(Pectolite)
Ca2NaSi3O8(OH)三重県白木古典的産地
岩手県田野畑鉱山出典:「続鉱物図鑑」

        松原先生からは、次のような回答があったと、Mさんが知らせてくれた。

        『 岩手県田野畑鉱山松前沢坑では今のところ「モーツァルト石」を採集していません。
         ここでは、ペクトライトとそのMn置換体であるセラン石は出ます。ヴアニア石が
         出る所はペクトライトが出ていますが、ペクトライトが出るからと言って、ヴアニア石
         が出るとは限りません 』

       A ”3価のマンガン”を含むマンガン鉱床
          モーツァルト石に含まれるマンガンは”3価(Mn3+)である。私の素人考えでは
          ブラウン鉱【Braunite:MnMn3+6(SiO4)O8】や
          紅簾石【Piemontite:Ca2Al2Mn3+[OH]O|SiO4|Si2O7]】
          が産出するところなら、可能性がありそうな気がする。
           ”紅簾石”となると、やはり四国か秩父(長瀞)周辺か。今のところ、日本で
          唯一の産地とされる「上須戒鉱山」も「 三波川系の長瀞結晶片岩地帯に属し
          石墨片岩、紅簾石英片岩の薄層を挟有している。鉱床露頭附近は、もっぱら
          緑色片岩のみ発達し・・・・・」 とある。

 4.3 「モーツァルト石」命名の経緯
     命名に関する疑問は、私のみならず石友・Mさんも抱き、松原先生に問い合わせ
    までしていただいたので、その回答を含めて掲載させていただく。

    【疑問1】
     モーツァルト石の原産地はイタリアである。にも拘わらず、隣国・オーストリアの作曲家の
     名前を付けたのは、なぜか?
     ( これは、日本で発見された新鉱物に韓国や中国の人の名前を付けるような
      もので、日本人の感覚からは理解が難しい )

      → 私(HP管理人)なりに考えるに、イタリアにはモーツァルトの熱烈なファンがいる
        ということではないだろうか。
         モーツァルトは10歳の時(1766年)、上の地図の右上にあるオーストリアの
        首都・ウィーンを発ち、父親と馬車でブレンナー峠を越え、演奏旅行でイタリアの地を
        初めて踏んだ。
         この旅行は大成功で、イタリアの某男爵のように、生涯モーツァルトのパトロンとして
        物心両面から支えた人が大勢生れたといわれる。
         また、この地域は、イタリアとは言え、オーストリアやフランスなどとも近く、しかも
        ジェノヴァは港町で、国際的な感覚も鋭く、”国粋的”な考えの入り込む余地が
        少なかったのではないだろうか。

    【疑問2】
      通常、名前を付ける場合”縁起”を担いで、”生誕”、”発見”とか”お目出度い”ことに
     因むはずなのに、没後200年という前例のない( untraditional )理由で命名されたのか。
      一例として、もう1年、1992年まで待てば、「コロンブスのアメリカ大陸発見(1492年)
     500周年」などに因んだ命名という選択肢もあったのではないだろうか。
      私と同じような疑問を石友・Mさんも感じて、松原先生に次のような問い合わせをした。

     『 下記の「モーツァルト石」に関する記述の中でなぜ鉱物科学の世界とモーツァルトが
      結びつくのか、英語や音楽の素養の無い私には理解出来ませんでした、苦しい理由の
      内容をご教示いただければ幸甚です。

      ・・・・・作曲家モーツァルトも鉱物名になっている。1991年にイタリアから見つかった
      カルシュウムとマンガンの含水ケイ酸塩鉱物にモーツァルト歿後200年を記念し、
      「モーツァルト石」とつけられた。委員会でいったんは認められなかったが、苦しい
      理由でどうにか承認されてしまった。彼のオペラ、特に「魔笛」*1が鉱物科学とむすび
      つくところがあったという理由である。この鉱物、後に愛媛県上須戎鉱山からも
      発見された。・・・・・・』 「新鉱物発見物語」75p

      『 *1  「魔笛」は、当時の錬金術的な科学や魔法に卓越した地質科学者達の協力が
           あり、フリーメイソンとの結びつきもあって生まれた歌劇である。全面的に
           土、火、水によるテストなどを含んだ試練はまさに錬金術の世界といえる 』
       「新鉱物発見物語」75p

      松原先生の回答は次のようなものであった。

       → 鉱物科学とモーツァルトが結びつくのか、私もこの提案がされるまで、全く知り
         ませんでした。多分そういう委員が多かったので、最初の投票で賛成されなかった
         のでしょう。提出された2度目の投票資料に、錬金術的な部分が「魔笛」の主題を
         なすことが説明されていて、『全く鉱物科学に無関係でない』という逆な(というより
         消極的な)理由で、「それほど主張するなら」という程度の理屈で承認されたの
         です。

      新鉱物命名の蔭に、このような裏話があったとは・・・・・。

5. おわりに

 (1) 2006年は、モーツァルト生誕250年ということで、オーストリアへの旅行やテレビでの特集
    番組など賑やかな毎日である。
     文豪・ゲーテの名を冠した鉱物があるのは皆さん周知のことと思うが、鉱物とは縁も
    ゆかりもない、モーツァルトに因んだ鉱物があると初めて知った。
     原著論文を読み、”○○先生のお話”だけからは知り得なかった事実を自ら知った
    意義は大きく、論文を送っていただいたMさんに、厚く御礼を申し上げる。
     また、命名の妥当性などについて紛糾した経緯や国内でモーツァルト石が産出しそうな
    産地などについて松原先生に問い合わせした結果を知らせていただいた。重ねて御礼を
    申し上げる次第です。

 (2) この新鉱物の発見に、ローカル(地元)の鉱物収集家・Mr A.Pozzi の力があった
    事も知った。
     ”甘茶”の活躍する場が多いのは、洋の東西同じようです。

 (3) いつか、国内で「モーツァルト石」を採集してみたいと言う気持ちが、高まってきました。

 (4) 今回、英文の論文を和訳してみて困ったのが、「鉱物名の和訳」です。国内で産出する
    ものであれば、「日本産鉱物種」に助けてもらえるが、国内で産出しないものとなると
    接頭語を頼りに訳してみたり、最悪のケースが”カタカナ表記”という、芸のない結果
    です。
     このようなとき、2005年に加藤先生がまとめられた「鉱物種一覧 2005.9」が役立つ
    筈だ、と思い知ったので、6月の「ミネラルショー」で買う予定です。

 (5) 蛇足
     先月読んだ本に近代洋画の先駆者・小田野直武の生涯を描いた「源内が惚れ
    込んだ男」という1冊がある。直武は、解体新書の解剖付図を描いた人で、この本には
    杉田玄白、中川淳庵らが「解体新書」をオランダ語から和訳するのに苦心惨憺する
    様子も描かれている。
     源内こと、平賀源内はオランダ語で書かれたドドネウスの「紅毛本草」を和訳し
    「日本物産大図譜」としてまとめたいと、長崎まで行ってオランダ語の勉強を始めた。
     しかし、プライドの高い彼が”今更ABCでもあるまい”と思うと同時に、40歳を過ぎた
    彼の脳味噌は横文字を全く受け付けず、失意のうちに江戸に舞い戻ってきた。
     この反動が、「エレキテルの見世物」など地道な学問と正反対の方向に彼を走らせ
    遂には、刃傷沙汰を起こし、伝馬町の牢獄で病死することになる。

     翻訳しながら、こんなことを思い返していました。

6. 参考文献

 1)R.Basso et al:” Mozartite,CaMn(OH)SiO4,A new Mineral Spacies from the
            Cerchiara Mine , Northern Apennines , Italy ” 
            Canadian Minerarogist,1993年
 2)松原 聰:日本産鉱物種,鉱物情報,2002年
 3)松原 聰:フィールド版 続鉱物図鑑,丸善株式会社,平成9年
 4)四国通商産業局編:四国鉱山誌,財団法人 四国商工協会,昭和32年
 5)松原 聰:新鉱物発見物語,岩波書店,2006年
 6)加藤 明:系列を作る鉱物 第14回東京ミネラルショー特別講座参考資料
         プラニー商会,2005年
 7)国際地学協会著:世界地図帳,日立製作所武蔵工場創立30周年記念
              昭和63年
 8)地学事典編集員会編:地学事典,平凡社,昭和45年
 9)岩崎 民平、河村 重治郎編:新英和大辞典,研究社,1960年
 10)野村 敏雄:源内が惚れ込んだ男,プレジデント社,1994年
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