(2)苦土フォイト電気石【Magnesiofoitite:□(Ma2Al)Al6(Si6O18)(BO3)3(OH)4】
山梨県京ノ沢で発見された、日本産の新鉱物で、葉ろう石の中に灰〜黒色の球状を
なして産する。母岩のすき間には、灰白〜薄青色針状結晶が束状〜放射状に集合した
ものが見られることもある。
たいがいは、球の表面が見えるだけで、「鉱物ウオーキングガイド」に載っている「球顆状」
の標本は極めて稀で(今回、採集できなかった)、「放射状」の断面が見える標本すら
少ないので、『 採集できない 』 と思われがちだが、”青黒〜黒いシミ”に見える部分は
ほとんど苦土フォイト電気石である。
( 「鉱物採集の旅」に、『デュモルチ石より多量に産する』 と書かれているほどである )
厳密には、放射状集合の周縁部分が苦土フォイト電気石【Magnesiofoitite】であって
中心部はフォイト電気石【Foitite:】らしい。
(3)このほか、葉ろう石の中には緑色の緑泥石、淡褐色の微細なルチルや苦土フォイト電気石か
デュモルチ石を内包し、青紫色に色ついた水晶(石英)などが見られます。
(1)原産地になり損ねた百村
百村の苦土フォイト電気石は、世界的な新産地である「山梨県京ノ沢」のものが発表される
以前から、「苦土電気石」として知られていた。
1994年、京ノ沢の電気石がフォイト電気石をマグネシウム(Mg)で置き換えた「苦土フォイト
電気石」であることが松原先生等によって学会で発表され、百村でも同様の鉱物が産することも
同時に報告された。
「苦土フォイト電気石」は未登録の”新産鉱物候補”であったが、産出が稀でないことから
ミネラルショーなどに出回り、”Magnesiofoitite”のラベルがつけられ、海外に渡った。
その標本を入手したカナダのF.C.Hawthorneらが研究し、新鉱物・”Magnesiofoitite”として
国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物名委員会に申請した。
すでに、松原先生等によって学会で発表されたと同一産地であることから、松原先生ら
日本人3名を加えた7名の連名で1999年に論文発表され、新鉱物と認証された。
原産地標本は、日本で学会発表された「京ノ沢」産となり、古くから知られていた百村は
なり損ねた。
(2)千葉の石友・Mさんから加藤先生の『鉱物種一覧』が近々出版される、とメールで知らせて
いただいた。
『 2005年9月迄に世界で知られている鉱物 4,254種について英名をアルファベット順に
収録し、和名、化学式、結晶系他情報を添えて、更に日本で産出する鉱物には■印を
つけてあるそうです、松原先生の『日本産鉱物種』との違いを楽しもうかと思っている』
鉱物に4,254種もあるとは、驚きです。そのうち、私が知っているものは10%にも
満たないのではないかと思います。
まして、持っているものとなると・・・・・・・・・。
Mさんのように、本の上で楽しむ方が、鉱物全体を楽しめるような気もしてきました。
(3)ここは、硼素(B)を含んだ熱水の作用でできたとされ、同じような産状の山梨県京ノ沢では
トパーズやズニ石などの産出が報告されており、ここでも出る可能性があり、面白い
フィールドです。
同じ産地でありながら、私のように「鉱物採集の旅」や「鉱物採集フィールドガイド」でこの
産地を知った年代はこのHPのように『百村のデュモルチ石』、最近出版された松原先生の
「鉱物ウオッチングガイド」で育った年代には『木ノ俣川のデュモルチ石』の方がわかりやすく
なるのでしょう。