2002年12月群馬県茂倉沢のマンガン鉱物

2002年12月群馬県茂倉沢のマンガン鉱物

1.初めに

12月に入り、本格的な冬の到来で、鉱物採集に行ける範囲も限られ、何かの
ついでに採集に行くあり様です。
桐生市で開催された恒例の骨董市に行ったついでに、1年2ケ月ぶりに茂倉沢鉱山に
立寄った。
2002年夏の台風で、林道が深くえぐられ、車の走行ができなくなるほどになっており
沢には人頭大〜握りこぶし大の真っ黒なマンガン鉱がそこここに見られ、この夏以降
誰も叩いた形跡もなく、「深山人知れず」の雰囲気で、ロスコー雲母や緑マンガン鉱を
採集できた。
ロスコー雲母と同じバナジン鉱物で、緑マンガン鉱と同じ緑色の肉眼でわかる鈴木さんに
お会いできるのは、まだまだ先のようです。
(2002年12月採集)

2.産地

桐生市にある群馬大学工学部の脇の県道を「梅田」に向かって北上する。
右側に「セブンイレブン」があり、その手前で、桐生川に掛かる「観音橋」を渡り
左折し500mほど行くと右側に林道が見える。林道の左側にある「茂倉・・・・」の
標識が目印です。
林道を300mも行くと橋(水は大きなパイプを流れているので、普通の橋と
イメージが違う)があるのでこの周辺の空き地に駐車する。
沢に下り、沢の中に落ちているマンガン鉱石を叩きルーペで確認しながら、上流に
進む。
茂倉沢
最初の橋と同じタイプの橋が3つあり、それぞれ迂回して又沢に下りる。500m位進むと、
2つの沢が合流する。ここを左の沢に沿って進みながら採集する。合流点から約200m
上流に坑口とズリがある。

3.産状と採集方法

ここは、変成層状マンガン鉱床といわれている。マンガン鉱物は、地表の雨水や
酸素の影響で表面が真っ黒い2酸化マンガンに変化している。
真っ黒で、手にもって重たく感じる塊を探し、大き目(2kg)のハンマで割って
新鮮な面を出し、ルーペで丹念に観察する。

4.産出鉱物

(1) ロスコー雲母【Roscoelite;K(V,Al)2AlSi3O10(OH)2】
バナジン雲母とも呼ばれ、ここ以外では、鹿児島県の大和鉱山で発見された淡い緑色の
薄い板状で、へき開面で全反射して金属光沢を呈する。
今回は、肉眼ではっきり分かる5mmサイズが見つかった。
ロスコー雲母
(2)緑マンガン鉱【Manganosite;MnO】
割った瞬間、鮮緑色が目に飛び込んできて、”あっ”と思うが空気中の酸素の影響で
鈍い緑色、翌日には灰褐色に変色してしまう。
今回採集した写真の標本は、ハウスマン鉱【Hausmannite:Mn2O4】を主とする
細粒緻密な高品位鉱(いわゆるチョコレート鉱)に隣接しており、低い変成の結果
ハウスマン鉱が部分的に還元して生成したと考えられる。
緑マンガン鉱
(3)菱マンガン鉱【Rhodochrosite;Mn(CO)3】
淡い紅色で、特有の劈開があり、一方向にキラキラ輝くので分かります。
菱マンガン鉱
(4)マンガン鉱物ほか各種の硫化鉱物も採集できました。

5.おわりに

(1)今回2度目で、マンガン鉱が比較的たくさんあり、2kgハンマで
片っ端から割っては、ルーペで確認し、今までにない良品を採集できた。
(2)大きなロスコー雲母がでたということは、”バナジウムが来ている”証拠で
次回こそ、肉眼でわかる「鈴木さん」にお会いしたいと思っています。

6.参考文献

1)日下英昭:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988
2)加藤昭:マンガン鉱物読本,関東鉱物同好会編,1998
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