群馬県茂倉沢のマンガン鉱物

群馬県茂倉沢のマンガン鉱物

1.初めに

マンガン鉱物は、一般に結晶の大きなものが少なく、ルーペサイズも多いので、
マンガン重石、パイマン、菱マン、マンバンざくろ石くらいしか収集の対象にして
いなかった。
日下先生の「鉱物採集フィールドガイド」には、バラ輝石のなかに、緑色も鮮やかな
鈴木石の口絵写真が掲載され、偶然発見の経緯も本文に記述されている。
そこで、この鈴木さんに会いたくて、2年ほど前に、茂倉沢を訪れたが、車が林道の
悪路にはまり、車輪が浮き上がり、抜け出すのに悪戦苦闘して途中で引き返してしまった。
それ以来、茂倉沢は鬼門と考え、近寄っていなかったが、桐生市で開催された恒例の
骨董市に行ったついでに立ち寄って見た。
すでに先客が2名おり、ここを何回か訪れ、そのたび「鈴木石」を採集しているという
長野県のSさんに案内していただきながら採集した。
しかし、Sさんが割ったバラ輝石を示し、「ここに鈴木石がある」と言われて初めて分かる
ありさまで、とても自分では探せなかった。
3時間余り採集して、最後にようやくロスコー雲母を発見できた。
台風などで沢が荒れる度に、新しいマンガン鉱が現れ、最近でも1cmを超える鈴木石を
採集した人がいるなど、まだまだ期待できる産地です。
(2001年10月採集)

2.産地

桐生市にある群馬大学工学の脇の県道を「梅田」に向かって北上する。桐生川に掛かる
「ときわばし」を渡り、左折し800mほど行くと右側に林道が見える。林道の左側に
ある「茂倉・・・・」の標識が目印です。
林道を800m行くと橋(水は大きなパイプを流れているので、普通の橋とイメージが違う)
があるのでこの周辺の空き地に駐車する。
沢に下り、沢の中に落ちているマンガン鉱石を叩きルーペで確認しながら、上流に進む。
茂倉沢を採集しながら遡上
最初の橋と同じタイプの橋が3つあり、それぞれ迂回して又沢に下りる。500m位進むと、
2つの沢が合流する。ここを左の沢に沿って進みながら採集する。合流点から約100m
上流で「ロスコー雲母」を産する。ここから約150m上流に坑口とズリがある。
ロスコー雲母産地

3.産状と採集方法

ここは、変成層状マンガン鉱床といわれている。マンガン鉱物は、地表の雨水や
酸素の影響で表面が真っ黒い2酸化マンガンに変化している。
産地で見かけた褶曲した層状堆積岩
真っ黒で、手にもって重たく感じる塊を探し、大き目のハンマで割って、新鮮な面を出し、
ルーペで丹念に観察する。

4.産出鉱物

(1) 鈴木石【Suzukite;Ba2V2Si4O12】
「鈴木石」は、石英が斑晶状に入り込んでいるやや透明感のあるバラ輝石に来るなどの
特徴を知っていると発見の確率が高くなるとSさんから教えていただいた。
鈴木石は、透明感がある緑色の柱(針)状が特徴です。今回はルーペサイズでした。
「鉱物採集フィールドガイド」の写真を引用させていただきます。
鈴木石【鉱物採集フィールドガイドから引用】
(2) ロスコー雲母【Roscoelite;K(V,Al)2AlSi3O10(OH)2】
バナジン雲母とも呼ばれ、ここ以外では、鹿児島県の大和鉱山で発見された淡い緑色の
薄い板状で、へき開面で全反射して金属光沢を呈する。これもルーペサイズしか見つかり
ませんでした。
(3)マンガン鉱物ほか
先客の1人は、緑マンガン鉱【Manganosite;MnO】などのマンガン鉱物や各種の硫化鉱物も
採集していました。

5.おわりに

(1)初めての産地で、様子が分からず、しかも割ってはルーペで確認、割っては
ルーペで確認の繰り返しで、私の苦手な採集スタイルです。
次回訪れる時には、肉眼でわかる「鈴木さん」にお会いしたいと思っています。

6.参考文献

1)日下英昭:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988
2)加藤昭:マンガン鉱物読本,関東鉱物同好会編,1998
3)松原聡:日本産鉱物種,鉱物情報編,1987
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