産地の入口には、先行者の車が停まっており、後からも1台着くなど、相変わらず人気が
高いようだ。
2時間、の約束で妻を車に残し沢に入った。予想以上にズリ石が多く、割った断口をみて
『鈴木石』などのバナジウム鉱物が来そうな(ありそうな)ものや、「緑マンガン鉱」などが
観察できた石はバケツに入れて持ち帰った。結局、3時間近く沢で石を叩いていたことに
なる。
翌日、昼過ぎに単身赴任先に帰ったので、太陽光が当る明るい場所で、バケツの中の
採集品を 『ルーペで観察』 → 『小割り』、を繰り返し、”ズリ石”と”標本”とに分類したが
90%以上は”ズリ石”の運命をたどった。
小割りすると、”緑色透明”結晶があった。結晶面が見え、へき開が強い特徴から、
『鈴木石』に間違いなく、今まで採集した中でベスト標本で、『2011年のミネラル・
ウオッチング納め』に相応(ふさわ)しい成果になった。
2011年は、3月11日の東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所の”メルト・
ダウン”に明け暮れた一年だった。
原発事故とは直接関係ないだろうと思っていた私だったが、私の故郷で母親が住んで
いる・茨城県南西部や孫娘が住む千葉県北西部が高濃度のセシウム汚染地域であるこ
とが判明した。母親を年末から山梨県に避難させることになり、孫娘は9月からイギリスで
避難生活を送っている。
さらに、われわれの生活に追い打ちをかけるように、”社会保障”を”隠れ蓑(みの)”に
した消費税増税が既に決まったかのように動き進み始めているのには警戒感を抱かざる
を得ない。
来る2012年は、私のような高齢者から将来を生きる若い人たちまでが将来に夢や希望
をもてる年になって欲しいと願っている。
( 2011年12月採集 )
「茂倉沢」沿いに上流に遡りながらズリ石を探して割るのだが、マンガン鉱は、堅くて
割るのに一苦労する。大き目(4ポンド≒2kg)のハンマで割って堅そうな石を台にして割る
のだが、台のほうが割れてしまう事もたびたびだ。
( 簡単に割れるものは、内部まで2酸化マンガン化が進んだもので、良品はない )
ここでの採集は、割ってはルーペで確認、割ってはルーペで確認の繰り返しが基本だが
この季節、陽当たりが悪く冷たい沢水が流れる寒い中で長時間これを繰り返すのは、いさ
さか”老体”には堪(こた)える。
そこで、割ってみて”ピンク色”を含む石や「緑マンガン鉱」や「銅の2次鉱物」の”青緑色”
が見られる石はそのまま持ち帰る。自宅(単身赴任先)の陽だまりで小割りしてルーペで
観察し、”オヤ?”と思う標本を暖房の効いた部屋で、実体顕微鏡下でジックリ鑑定するよ
うにしている。
私のあまり多くない経験から、「鈴木石」は2回の訪山で1回、「長島石」は10回に1回
程度しか採集出来ない共に希産鉱物だ。
(1) 鈴木石【SUZUKIITE:BaV4+Si2O7】
「日本の新鉱物」によれば、「鈴木石」の発見経緯は次のようだ。今から40年近く前の
1973年12月、無名会会員の滝沢 浩氏(「鉱物採集フィールドガイドP10に”滝沢マン
吉氏”、とある)が、バラ輝石の中から発見した、鮮緑色半透明ガラス光沢をした微小な
鱗片状鉱物を科学博物館の松原、加藤先生に鑑定を依頼した。この鉱物はアマチュア
の間では、「原田石」だという噂があった。
分析の結果、この緑色鉱物は、渡辺武男、由井俊三、加藤昭らが岩手県田野畑鉱
山で発見し、1973年10月に発表した未知バナジウム(V)-バリウム(Ba)の珪酸塩鉱物
と同一のものであった。
1982年、国際鉱物学会に両グループが共同で申請し、新鉱物として認可された。同年
茂倉沢鉱山の「鈴木石」が松原・加藤・由井の名で発表されたが、田野畑鉱山の論文
は発表されていない。
「鈴木石」の名は、北海道大学の岩石学者・鈴木醇(じゅん)(1896-1970)にちなむ。
今回の採集品は、”鱗片状”の貧弱なものではなく、全長約1.5mmで肉眼でも確認で
き、鮮緑色・透明・ガラス光沢、しかもへき開面も明瞭で、私のベスト標本となった。
4.2 マンガン鉱物
ここは、マンガン鉱山だったので、当然各種のマンガン鉱物が産出するのだが、皆さ
んのお目当ては「長島石」、「鈴木石」などのバナジウム鉱物で、それ以外はあまり眼も
くれないようなので、マンガン鉱物にもスポットを当ててみた。
(1) 緑マンガン鉱【MANGANOSITE:MnO】
割った瞬間、断口に緑色・被膜状の鉱物が見られることがある。これが「緑マンガン
鉱」だ。
マンガン(Mn)と酸素(O)1つずつ結びついた不安定な鉱物で、空気中の酸素(O)と
結合し、短時間で暗褐色化してしまう。
従って、「緑マンガン鉱」を保存する最良の手段は、採集した時にデジカメに納めて
しまうことかもしれない。
次善の策として、@ マニキュアを塗る A ガラス瓶の中に、”ホッカイロ”などの脱
酸素剤と一緒に保管 することで、空気中の酸素を遮断することが報告されている。
今回、旅先だったが、ガラス瓶や”ホッカイロ”などを買い込んで試してみたが、”褪
色(たいしょく)”を抑えることは難しいようだ。
(2) ヤコブス鉱【JACOBSITE:MnFe3+2O4】
黒色で層状をなす。強磁性なので、糸つき磁石を近づけると吸着するので簡単に鑑
定別できる。
4.3 銅の二次鉱物
ここでは、銅の二次鉱物の「孔雀石」そして「藍銅鉱」が採集できる。「鈴木石」に
勝るとも劣らない希産だと思う。
加藤先生の「マンガン鉱物読本」に、『層状マンガン鉱床でも・・・Cu2+を含む銅の
二次鉱物の出現も希』、とある通りだ。
「孔雀石」、「藍銅鉱」共に[CO3]を含む炭酸塩鉱物で、炭酸基は「菱マンガン鉱:
【RHODOCHROSITE:MnCO3】などから、[Cu2+]は、「安四面銅鉱【TETRAHEDRITE:
(Cu,Fe,Zn)12Sb4S13】や黄銅鉱【CHALCOPYRITE:CuFeS2】などであろう。
「砒四面銅鉱」と「安四面銅鉱」は肉眼での区別は全く不可能で、2007年のHPでは
「(砒)四面銅鉱」としていたが、「安四面銅鉱」が正解らしい。
(1) 孔雀石【MALACHITE:Cu2(CO3)(OH)2】
緑色の被膜状で母岩の割れ目に産出する。孔雀石は全国各地の銅鉱山では決
して珍しくない鉱物だ。
しかし、茂倉沢鉱山のようなマンガン鉱山でお目にかかることは珍しく、貴重だと
思う。
原発事故とは直接関係ないだろうと思っていた私だったが、私の故郷で母親が住ん
でいる・茨城県南西部や孫娘が住む千葉県北西部が高濃度のセシウム汚染地域で
あることが判明した。母親を年末から山梨県に避難させることになり、孫娘は9月から
イギリスで避難生活を送っている。
放射能の除染、最終的には原発の廃炉まで数十年が必要とされているが、それで
全てが解決するとは誰も思っていないだろう。数十年先には、今責任ある立場の人の
政治生命どころか生命そのものが尽きていて、”ウヤムヤ”になってしまうだろう。
「原発がなくなれば電力供給がストップして大変なことになる」、と信じ込まされていた
が原発の9割がストップした現在、”大変なこと”が起こっているようには思えない。
この事故をきっかけに、電力の料金は、総費用+利益で算出され、しかも1社独占で
競争相手もなく、誰でも経営できる会社だと初めて知った。総費用には、原発のある
市町村からの要求で出した”寄附金”も含まれているとNHKが報じていた。
一方、われわれの毎日の生活に追い打ちをかけるように、十分な”社会保障”のため
を”隠れ蓑(みの)”にした消費税増税が既に決まったかのように動き進み始めている
のには警戒感を抱かざるを得ない。
ここ数十年、政治家たちは、政権を獲得・維持するために、選挙民に対して”良い顔”
をしようと、一銭も身銭は切らずに、赤字国債を濫発(らんぱつ)し、あたかも自分の金
であるかのようにバラ撒いた結果の財政赤字で、民間会社なら、とうに破産している。
少子高齢化が原因とされる社会保障費の増加も、何十年も前から判っていた話で、
優秀だとされる日本の官僚や官僚言いなりの政治家には日本という国を経営する力が
ないと言うことは明らかだ。
徳川時代末期、維新の原動力となったのは、大身(たいしん)と呼ばれた祖先の功績
で高禄(こうろく)を食んでいた侍ではなく、身分の低い侍たちだったことを考えると、大
阪で「維新の会」が旗揚げしたのも時代の流れだろう。
来る2012年は、私のような高齢者から将来を生きる若い人たちまでが将来に夢や
希望をもてる年になって欲しいと願っている。