「五加鉱山の2次鉱物」の「おわりに」で、次のように書いた。
『 千葉の単身赴任先に帰って標本を整理、写真に収めてみると、「黄鉛鉱(水鉛
鉛鉱)」、「青鉛鉱」、「白鉛鉱」そして「緑鉛鉱」と”4色勢ぞろい”の見事さである。
「ヘナK」小隊長が好きな”赤い鉱物”がないのが淋しい・・・・・・・・・・ 』
関東の代表的な赤い鉱物の1つは ”ルビーシルバー”だと思い、久しぶりに西沢
金山を訪れてみる気になった。
栃木県の山奥まで日帰りでは勿体無いので、「北関東の骨董市」、「バナジウム鉱物
の茂倉沢鉱山」と合わせて、1泊2日で回った。
茂倉沢鉱山のズリ石はメッキリ少なくなったが、今まで採集した中で一番の「長島石」
や「鈴木石」などのバナジウム鉱物が採集できた。特に、「長島石」は”肉眼サイズ”で
近来にない良品だ。このほか、「緑マンガン鉱」、「ネオトス石」なども採集でき、満足
の1日だった。
私の持論の1つに、『行っても採れないかも知れないが、行かなければ絶対採れない』
がある。要は、チャレンジすることが大切だと思う。
( 2008年10月採集 )
「茂倉沢」沿いに上流に遡りながらズリ石を探して割るのだが、マンガン鉱は、堅くて
割るのに一苦労する。堅そうな石を台にして割るのだが、台のほうが割れてしまう事も
たびたびだ。
(簡単に割れるものは、内部まで2酸化マンガン化が進んだもので、良品はない )
大き目(2kg)のハンマで割って新鮮な面を出し、ルーペで丹念に観察する。
原産地は、岩手県田野畑鉱山で、ここ茂倉沢鉱山では1980年(昭和55年)に
発見された。希元素鉱物のアマチュア研究家・長島 乙吉氏にちなんで名付けられ
た。
バリウム(Ba)を含むことから、比重が4.0と珪酸塩鉱物としては重い。
(2) 鈴木石【Suzukiite;Ba2V2Si4O12】
以前ある人から『 鈴木石 は、石英が斑晶状に入り込んでいる、やや透
明感のあるバラ輝石に来る 』などの特徴を知っていると発見の確率が高く
なる、と教えてもらったことがある。
ただ、例外もないわけでなく、菱マンガン鉱などでもピンク色がかった断面は
丹念に見るようにしている。
鈴木石は、透明感のある緑色のスポット状〜柱(針)状〜板状が特徴である。
(3) 緑マンガン鉱【Manganosite:MnO】
緑色、皮膜状で茶色い細粒緻密な高品位鉱(いわゆるチョコレート鉱)の「ハウス
マン鉱」【HAUSMANNITE:Mn2+Mn3+2O4】と隣接しており、低い変成の結果
ハウスマン鉱が部分的に還元して生成したと考えられる。
割った瞬間は鮮やかな緑色だが、1日もたつとくすんだ暗緑色、そして最終的に
は真っ黒い2酸化マンガンになってしまう。
褪色(いろあせ)を遅らせるのには、100円ショップにある透明マニキュアを塗る
方法がある。
(4) ネオトス石【NEOTOCITE;MnO・SiO2・nH2O】
俗に”ビール瓶のカケラ”と称されるように、黒褐色、ガラス光沢、貝殻状破面を
示す。蛋白石と同じように結晶構造をもたない”非晶質”で、脈状で産する。
「パイロクスマンガン石」で有名な愛知県の田口鉱山では、ネオトス石(旧名
ペンウィス石・penwithite)が”パイマン”の道しるべ、と「鉱物採集の旅」にあるの
だが、ここ茂倉沢では通用しないようだ。
ただ、これから冬になると寒い中で長時間これを繰り返すのは、いささか”老体”
には堪(こた)える。
割ってみて”ピンク色”を含む石はそのまま持ち帰り、暖房の効いた部屋で、実体
顕微鏡下でジックリ鑑定することになりそうだ。
(2) この地方では、秋に(にも?)咲く桜があるようで、可憐な花をつけていたので1枚
”パチリ”
( 百恵ちゃんの歌にある「秋桜」は、「コスモス」のはずだが・・・・・・ )