宮城県宮崎鉱山の重晶石

宮城県宮崎鉱山の重晶石

1.初めに

「原色鉱石図鑑」の巻末に、かつて稼行した鉱山とそこで産出した
代表的鉱物が一覧表になっている。
宮城県宮崎鉱山の欄には、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱、重晶石そして石膏とある。
先に紹介した宮崎鉱山では、石膏と少しの黄鉄鉱しかなく、閃亜鉛鉱を初めと
する鉱物は他の鉱床で産したものだろうと考えた。
石巻のO氏も銅鉱山と石膏鉱山の2つがあったと話していた。
宮崎石膏鉱山からの帰り、車窓から外を見ていたS氏が、突然「ズリだ!」と
叫ぶ。慌てててバックしてみると、黄褐色に鉱染したズリ石が山積みになって
いる。
表面をザッと見ただけでも、重晶石があり、ここで、宮崎鉱山の石膏以外の
鉱物をすべて採集できた。
全く、偶然に出会った産地です。
(2001年5月採集)

2.産地

古川市の西、宮崎町に江戸時代に栄えた切込焼を復元、展示している
「陶芸の里」があります。ここから、田代高原を目指して約1km走ると
右側に、黄褐色に鉱染したズリ石が山積みになっている。

宮崎鉱山のズリ

3.産状と採集方法

「日本鉱産誌」によれば、宮崎鉱山は、第三紀の凝灰岩・砂岩を貫く
石英粗面岩で、黒鉱、重晶石そして石膏鉱床があった。黒鉱鉱床には、
湯ノ倉、岩松鉱床があり、東西100m、南北60mの範囲に、30〜
35cmの富鉱部が散在した。
1945年上半期の出鉱量は146tで、Cu:0.2%,Pb:1.2%,Zn:12.5%であった。
1955年には、60名が働き、石膏とマンガン鉱を採掘した。
まず表面採集で、重晶石の結晶を探し、次に重たい石をハンマで割って、
閃亜鉛鉱や方鉛鉱を探します。

4.産出鉱物

(1)重晶石【Barite:BaSO4】
重晶石は、その名の通り重たいのが特徴で、O氏がズリ石を持った瞬間に
「重晶石だ!」と叫んだほどです。
塊状で産するものと、葉片状の結晶が複雑に入り組んで産出するものの2通りあり、
結晶としてのの見栄えは、北海道の勝山鉱山のものに及びませんが、味わいが
あります。

宮崎鉱山産重晶石【左:塊状 右:葉片状結晶集合】
(2)方鉛鉱【Galena:PbS】
塊状で産し、青黒い金属光沢で、へき開面が四角なので、比較的鑑定は楽です。

宮崎鉱山産方鉛鉱
(3)閃亜鉛鉱【Sphalerite:ZnS】
方鉛鉱と同じように、塊状で産し、青黒い金属光沢ですが、ところどころに
黄褐色半透明ガラス光沢の「ヤニ鉱」とよばれる部分があります。

閃亜鉛鉱【黄銅鉱も隣接】
(4)黄銅鉱
閃亜鉛鉱に接する形で小さな粒状で産します。

5.おわりに 

(1)私の住む首都圏では、重晶石の結晶はほとんど産出するところがなく、
今回、思いも掛けず重晶石の結晶がビッシリついた標本をを採集でき、ビックリする
くらい喜んでいます。
ジックリ攻めれば、良品も期待できます。
inserted by FC2 system