宮城県宮崎鉱山の石膏

宮城県宮崎鉱山の石膏

1.初めに

2001年5月の宮城県採集行の目的は、O氏がある人から見せられた
水晶のような形をした石膏を宮城県宮崎鉱山に採集に行くことでした。
「日本の鉱物」にも、宮崎鉱山の「繊維石膏」が掲載してありますので、
石膏では有名な鉱山だと初めて知りました。
場所が良く分からないため、石巻市のOさんご夫妻に案内していただき、
水晶のような形をした石膏はありませんが、10kgを超す大塊や透き通る
ように透明な美しい各種の石膏を採集できた。
産地は、ほとんど訪れる人もないと見え、手付かずの状態ですので、
永く保存したいものです。
(2001年5月採集)

2.産地

古川市の西、宮崎町に江戸時代に栄えた切込焼を復元、展示している
「陶芸の里」があります。ここから、田代高原を目指して走ると舗装が
なくなり、さらに1km進むと右手に林道があり、ここを約2.5km進むと
産地の入り口です。
道路は、途中で川を渡ったり、ドロドロの悪路になり、4WDでなければ到底
行くことができません。

宮崎鉱山全景

3.産状と採集方法

南部 松夫著「宮城県鉱物誌」によれば、宮崎鉱山の石膏は第三紀凝灰岩の
粘土化帯に層状をなしており、雪花石膏を主としているが、鉱床の末端部では
脈状の繊維石膏を主としている。 雪花石膏の空隙中には、透石膏があり、径3〜5cmで、
m(110)・b(010)・l(111)を主とする板状で産したそうです。
ここの石膏鉱山は、露天掘りだったそうで、まず表面採集で、粘土が雨で
洗われて、浮き出た分離結晶を探し、次に熊手などで、ズリを掘り返します。

宮崎鉱山ズリ表面【石膏がキラキラ】

4.産出鉱物

(1)石膏【Gypsum:CaSO4・2H2O】
ここの石膏は、先の福岡鉱山と同じように、透明へき開片の透石膏、一方向に
結晶が配列し繊維状をなす繊維石膏そして白色・半透明の微細結晶粒が集合した
雪花石膏があります。
質、量ともに、福岡鉱山を遥かに凌ぎます。
前記の文献によると、ここの石膏の組成は、CaO:33%,SO3:46%,H2O:21%と
あります。

左:雪花石膏 右:繊維石膏【赤黄色に色づいている】

左:硬石膏 右:透石膏

宮崎鉱山産 石膏アラカルト

(2)硫化鉱物
黒鉱鉱床の黄鉄鉱なども見受けられますが、細かい結晶の上、ボロボロなので、
1個体のみ採集しました。

石膏の上の黄鉄鉱

5.おわりに 

(1)私は、石膏鉱山は、山梨県の夜子沢しか知らず、ここの露天掘り跡を
見た時には、その広さ、結晶の量の多さ、美しさに圧倒されてしましました。
夜子沢の石膏は、採集禁止状態にあり、ここは大切に保存したい産地です。
(2)今回、案内していただくに際して、前日下見までしていただいた上に、
お土産までいただいたOさんご夫妻に深く感謝致します。

宮崎鉱山にて【Oさんと】
(3)途中の道路の切り通し部には、青白い粘土脈が走り、あちこちに石膏脈が
隠れていそうな雰囲気でした。ジックリ、探査すると面白い産地でしょう。
(4)「陶芸の里」の前には、町営の温泉「ゆ〜らんど」があります。
塩化物を含み、ジックリ暖まり疲れをとり、泥だらけになった体をサッパリさせて
帰りましょう。
(5)大きな石膏の結晶は、「湯沼水晶洞」に展示していただく予定です。
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