群馬県南牧村三ツ岩岳の日本式-その2-

群馬県南牧村三ツ岩岳の日本式双晶-その2-

1.初めに

 栃木県の石友Tさんに群馬県南牧村三ツ岩岳の日本式双晶産地と
周辺の産地を案内していただき、その結果をHPに掲載した。
 早速、愛知県の石友Kさん親子からご一緒しませんか、とのメールが
あり、最近鉱物採集を始めたという安中市のHさん親子からも案内して
欲しいとのメールを頂いた。
 また、「たそがれ鉱色庵」の住人となった古い石友のKさんから
転居のあいさつと共に、三ツ岩産双晶の多様な形態・形状の写真を
送っていただいた。2003年6月に発行された「ペグマタイト」誌の
最新号には、彼が発見した、稀産とされる「変形鳥形三連双晶0°型」が
写真入で紹介されていた。

  変形鳥形三連双晶0°型【ペグマタイトから引用】

 そんなことも重なって、2週間ぶりに、産地を訪れた。
産地が分からず捜していたという、高崎市のTさんも途中から加わり
賑やかなミニ採集会となった。
 栃木県の石友Tさんが前回お会いしたときに ”来るたびに指数関数的に
採集が難しくなる”と言っておられた通りですが、それでも皆さん何とか
双晶は採集できた。
(2003年5月採集)

2. 産地

 「ペグマタイト」誌に、詳しく掲載されていますので、割愛させて
いただきます。
3. 産状と採集方法
 この周辺は、粘板岩、石灰岩などの堆積岩が変成を受けたもので
林道の露頭部分には、それらが良く観察できます。
 日本式双晶を産するのは、次の2通りです。
 @黒〜灰緑色の片理構造の発達した変成岩の石英脈の真っ黒い
   ガマ粘土が充填した晶洞
 A褐鉄鉱で鉱染されたスカスカの石英の晶洞

 Tさんの説では、日本式双晶が成長するキッカケとなりうるのは
鉄(Fe)やアルミニュム(Al)のイオンとのことで、ここでは黄鉄鉱と
”武石”が頻繁に目に付き、肯けます。
 ここでの、採集方法は、半ば坑道となっている露頭を掘り込んで
晶洞部分を捜すか、林道工事や先の採集者が崩した露頭の崩落土砂を
表面採集したり、フルイ掛けして採集します。
 坑道を観察しましたが、皆さん入って叩こうという気にはならず
Kさんの息子のS君が坑道脇の露頭を叩く程度で、早々に、ズリ採集に
移りました。
 右側の沢には水が流れているのに気付き、水の中でのフルイ掛けも
トライし、高崎市のTさんが最初のフルイの中から双晶を発見し
幸先良いと思われたものの、後が続かず、地道に表面採集か
ズリ採集が良いようです。
4. 産出鉱物
4.1 日本式双晶
  ここで採集できる双晶として、各種の形態が報告されています。

 (1)日本式双晶(単一双晶)
    @V字形(蝶形、ハート型、軍配形など一般的な双晶)
    Ay字形
    BX字形
 (2)日本式3連双晶
    @キの字形
    A鳥形(60°形、120°形)
    B変形鳥形(0°形、60°形、120°形)
    C貫入形
 (3)日本式4連双晶
 (4)松茸水晶の日本式双晶

  私が採集した代表的な双晶と水晶の写真を示します。
 ここの水晶には、角閃石(?)らしきインクルージョンを含むものもあり
 単晶、双晶とも緑色を帯びたものがあります。
     
       変形ハート形       角閃石(?)入り蝶形
              V字型双晶

        
         角閃石入り         緑松茸
                 単晶

4.2 その他の産出鉱物
(1)黄鉄鉱【Pyrite:FeS】
  自形結晶や脈状で産出します。武石に変化したものも多く、8面体をなす
  ものもあり、錆びたり、武石になっているものは、一見すると、磁鉄鉱や
  柘榴石と間違います。
  八面体黄鉄鉱

5.おわりに

(1)双晶は、小さなうえに、産地では泥や褐鉄鉱で汚れていて
   見にくいので採集するには根気が必要です。
(2)この産地は、アマチュアが発見した産地で、専門的な調査が後付に
   なり、ごく最近、某先生方一行が調査に行かれたと聞きました。
   乱獲による産状の破壊などは、厳に慎みたいものです。
(3)三ツ岩岳の発見の経緯から、発見された標本の結晶面からの分類などを
   掲載している「ペグマタイト」誌は、高田氏が個人で2ヶ月に1回
   定期発行しています。
    今まで発行の遅れも全くなく、会費も1号あたり400円と安く
   高田氏の鉱物とその普及にかける想いが、並々ならぬことを感じます。
    末永く、継続するよう、応援しています。

6.参考文献

1)星野 由紀夫:群馬県南牧村三ツ岩岳付近から産出した水晶の
         日本式四連晶と貫入三連晶
         ペグマタイト 第53号,2002年
2)高田 雅介:群馬県南牧村三ツ岩岳の日本式三連双晶
        ペグマタイト 第60号,2003年
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