群馬県南牧村三ツ岩岳の日本式双晶

群馬県南牧村三ツ岩岳の日本式双晶

1.初めに

 群馬県南牧村三ツ岩岳の日本式双晶発見の経緯と、見出された各種の
双晶については、2002年4月発行の「ペグマタイト」誌に詳しく掲載され
その前後から、大勢の人たちが押し寄せて、露頭の状況も、大きく
変貌したようです。
 栃木県の石友Tさんが、三ツ岩岳と周辺の産地を案内してくださる
とのご好意に甘えて、案内して頂き、各種の双晶と、随伴する鉱物を
採集することができた。
 この産地は、アマチュアが発見した産地で、専門的な解明が後付に
なっているので、乱獲による産状の破壊などは、厳に慎みたいものです。
 この周辺には、レンズ状石灰岩が変成を受け、大理石(晶質石灰岩)と
なった露頭や、「輝安鉱」で有名な大水鉱山跡などもあり、1日の巡検
コースに最適です。
 案内していただいた、Tさんとその奥さんに厚く御礼申し上げます。
(2003年5月採集)

2. 産地

 「ペグマタイト」誌に、詳しく掲載されていますので、割愛させて
いただきます。
3. 産状と採集方法
 この周辺は、粘板岩、石灰岩などの堆積岩が変成を受けたもので
林道の露頭部分には、それらが良く観察できます。
 日本式双晶を産するのは、次の2通りです。
 @黒〜灰緑色の片理構造の発達した、変成岩の石英脈の晶洞
 A褐鉄鉱で鉱染された帯状の、真っ黒いガマ粘土が充填した晶洞
 Tさんの説では、日本式双晶が成長するキッカケとなりうるのは
鉄(Fe)やアルミニュム(Al)のイオンとのことで、ここでは黄鉄鉱と
”武石”が頻繁に目に付き、肯けます。
 ここでの、採集方法は、半ば坑道となっている露頭を掘り込んで
晶洞部分を捜すか、林道工事や先の採集者が崩した露頭の崩落土砂を
表面採集したり、フルイ掛けして採集します。
 Tさんは、前者、私は後者でした。Tさんは、小さい(顕微鏡サイズ)
ながら、数多く採集でき、私は、比較的大きいものの、数は少ない。
 坑道は、写真に示すように、今にも落盤が起こりそうで、安全には
充分気を配りたい。
三ツ岩岳露頭【支柱があるが支えられるか??】
4. 産出鉱物
4.1 日本式双晶
  ここで採集できる双晶として、各種の形態が報告されています。

 (1)日本式双晶(単一双晶)
    @V字形(蝶形、ハート型、軍配形など一般的な双晶)
    Ay字形
    BX字形
 (2)日本式3連双晶
    @キの字形
    A鳥形(60°形、120°形)
    B変形鳥形(60°形、120°形)
    C貫入形
 (3)日本式4連双晶
 (4)松茸水晶の日本式双晶

  私が採集した1〜2cmクラスの代表的な双晶と水晶の写真を示します。
 
       ハート形          蝶形
                V字型


  鳥形3連双晶(120°)         松茸

4.2 その他の産出鉱物
(1)黄鉄鉱【Pyrite:FeS】
  自形結晶や脈状で産出します。武石に変化したものも多く、8面体をなす
ものもあり、一見すると、磁鉄鉱や柘榴石と間違います。

5.おわりに

(1)日本式双晶の産地の近くにある、レンズ状石灰岩が変成を受け、大理石
  (晶質石灰岩)となった露頭も案内していただいた。
   地質模型をそのまま見るような露頭で、それらが崩れた大理石に隣接して
   珪灰石が採集できます。
大理石露頭
(2)この産地は、アマチュアが発見した産地で、専門的な調査が後付に
   なり、ごく最近、某先生方一行が調査に行かれたと聞きました。
   乱獲による産状の破壊などは、厳に慎みたいものです。

6.参考文献

1)星野 由紀夫:群馬県南牧村三ツ岩岳付近から産出した水晶の
         日本式四連晶と貫入三連晶,ペグマタイト 第53号,2002年
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