「池袋 鉱物化石市場」は今年で第3回と歴史も浅く、規模も小さいせいか、一般には
あまり知られていないようだ。
2006年、単身赴任先に戻る途中に立ち寄り、数点購入した。それらの中には、「島根
県松代鉱山の球状霰石」など、桜井博士の「日本の鉱物50種」に載っている”貴重品”も
あった。
2007年も古い国産鉱物を求めて訪れ、「蛭川村産ベルトランド石付き緑柱石」など数
点を購入した。
今回もあまり期待しないで訪れただけに、久々の”現金採集”の成果に大満足だった。
このような展示即売会で売られている鉱物標本の値段を見ていると、鉱物標本の価
値とは何だろうか、と考えさせられる。
( 2007年8月現金採集 )
鉱 物 名 (英語名) | 産 地 | 組成 | 説 明 | 写 真 | 備 考 | ベルトランド石 (BERTRANDITE) | 岐阜県県 蛭川村 田原 | Be4Si2O7 (OH)2 |
ベリリウム(Be)を 含む。国内では 1975年に行者山で 初めて採集された |
緑柱石の上に成長 横8cm
| 3,000円 | 青鉛鉱 (LINARITE) | 兵庫県 辻ケ瀬鉱山 | PbCu(SO4) (OH)2 |
明るい青色 ガラス光沢 柱状結晶が集合
ラベルには | 全体【横8cm】
| 1,500円 | 砂鉄 /磁鉄鉱 (Iron Sand /MAGNETITE) | 千葉県 銚子海岸 | Fe2+Fe3+2O4 |
標本よりも 「岩本鑛産物商會」の ラベルに惹かれて 購入 | 1,000円 | パイロファン石 (PYROPHANITE) | 愛知県 久田野 | MnTiO3 |
鋼色、鏡面の 薄板状結晶
久田野は | 横8cm | 2,000円 | 剥沸石 (EPISTILBITE) | 新潟県 柿崎町 黒岩 |
(CaNa2)3 Al6Si18O48 ・16H2O |
独特な封筒状の 薄板状結晶が 集合している。
剥沸石の自形
紫水晶の上に | 横6mm | 300円 | 灰クロムざくろ石 (UVAROVITE) | 熊本県 猫谷鉱山 | Ca3Cr2(SiO4)3 |
緑色、ガラス光沢の 微細結晶の集合
妻の好みで購入 | 横7cm | 2,000円 | タンタル石 /鉄タンタル石 (Tantalite /FERRO -TANTALITE) | Brazil Genipapo Deitinga |
(Fe,Mn) (Ta,Nb)2O6 |
黒色、ガラス光沢の 柱状自形結晶
ラベルには
表面に鉄錆びがあり |
高さ4cm | 3,000円 | 人工水晶 (QUARTZ) | 中国 | SiO2 |
透明、ガラス光沢の 六角柱状、両錐の結晶
人工品の証拠に
水晶の仲間として
この値段で完全 |
長さ20cm | 840円 |
今回、「東京 岩本鑛産物商會」 のラベルに惹かれて、”砂鉄”を購入した、その
くらい、1枚のラベルには重みがある。
私の石友と開催するミネラルウオッチングの楽しみの「標本玉手箱」や「オークシ
ョン」への出品には、ラベルの添付をお願いしている次第だ。
10年前に比べ、ミネラルショーやネットオークションなどを通じて、鉱物標本を購入
する(できる)機会は格段に増えている。
『どのようなラベルが付いているか』 を確認して、購入することをお勧めする。
( ラベルのない標本は”価値がない”ので、買ってはいけない )
4.2 鉱物標本の価値
今回購入した「鉄タンタル石」はいくつかあった中から3,000円のものを1つを選ん
だ。一番高い標本は2万円を超え、一番安いものが2,000円だった。
2万円を超えるものは、結晶の長さが10cm、厚さが1cmほどあり、体積(∝重さ)
なら私が購入したものの10倍はあったが、結晶面が1面も見られない”塊状”だった。
鉱物の価値(値段)とは何だろうか、と考えさせられた。
誰もが欲しがる標本は価値が高い、と言えるだろう。ただ、”鉱物”を欲しがる人が
相対的に増加し、それに伴って”価値観”も多様化している。
例えば、一番ありふれている鉱物の1つである「水晶」をヒーリング(癒し)効果の
対象としている人々は柱面や先端の錐面を”条線”が見えないくらいにピカピカに
人工的に研磨してあっても、結晶が透明で形が整っていれば効果が大きい(=価
値が高い)としているようだ。
しかし、”学術的な鉱物”の対象とする人たちにとって、このような水晶は、全く価
値がない。それどころか、”まがい物”として唾棄すべき対象でしかない。
このように、1つの鉱物の”価値”を定義するのは難しいが、私の周囲におおい
『鉱物は、フィールドでの採集が中心で、時々ミネラルショーで購入する石友』の間
での”価値観”を前提に、話を進めてみたい。
(1) 皮膜や塊状のものより、結晶しているもの
結晶が完全(俗に頭付き)で、より大きなもの・・・・・・・・・・前後軸
(2) 分離単晶より母岩付−−−→母岩の大きさ・・・・・・・・・・左右軸
(3) ありふれたもの(存在率が高い)ものは価値が低い・・・・上下軸
これらの関係を図に示してみた。軸の目盛りは、対数(1、10、100)
数十年以前まで、国産鉱物の主な供給源が、鉱山や採石場だった時代には、
チェックの範囲は、博物館など展示施設向けで、一般の愛好家が採集あるいは
購入できるたのは水色の範囲だった。
( 国産標本の一級品は、ほとんど博物館、大学、そして鉱山会社などのの展示
施設に収まってしまった )
鉱山や採石場がほとんど稼行していない現在、一般の愛好家が鉱物採集の主役
になり、特に新鉱物などでは、『博物館級の良品を採集できる』余地も生まれて
いるのではないだろうか。