鉱物とは、『 自然界に存在する自然が作った均質物質で、ほぼ一定の原子配列と
ほぼ一定の化学組成を持つ固体で、自然水銀( Mercury,Hg )と水( Water,H2O )が
例外的に常温では液体である 』
種の定義は、『 同類の他の物質との間に有意義な相違点をもつもの 』
鉱物種とは、これら2つを結合させたものになる。
例えば、仮に「私の家」を「一つの鉱物種」とすると
宇宙→銀河系→太陽系→地球→アジア→日本→本州→○○県→△△市→□□町
→****番地 とすれば、一義的に決まり、同じものはない(重複しない)ことになる。
3.2 鉱物系列
3.3 端成分と固溶体
3.4 方解石系列(系)
・ 菱苦土鉱( Magnesite ,MgCo3)
これらの鉱物には、「菱」が頭についた和名が多いのは、これらの理想的な結晶の
4.1 同質異像( Polymorphism )
(1) 炭素同質異像群または石墨同質異像群
(2) 珪酸アルミニウム(珪線石)同質異像群
4.2 鉱物群をつくらない鉱物
一般式M2+CO3で鉱物を分類するメリット(応用)として、”M”のところに2価の
・ 尖晶石族( Spinel family )
これらの構成員は、沸石族を除いて全て原子配列自体に根本的な共通点があり
したがって、フィールドで ”柘榴石” とか ”電気石” とか呼ぶのは良いが、鉱物の
・ 元素鉱物( Element minerals )
燐酸塩・砒酸塩・ヴァナジン酸塩のように、複数の酸基が一くくりにされているのは
・ 塩素燐灰石( Chlorapatite , Ca5[Cl(PO4)3]
これらの間には、かなり広い範囲に固溶体が存在し、これらを含む酸基を共通した
(2) しかし、加藤博士の資料にも、「全部の学者がこのような分類に賛成している訳でも
(3) 私個人としては、もっと切実な問題があります。標本を整理するとき、『鉱物類
皆さんは、どうされていますか?
系統分類では、一つの鉱物を似た様な鉱物と比較するのに便利なように配列する
のが基本である。
この日、予め配られた標本は、方解石【Calcite:CaCO3】 と菱マンガン鉱【Rhodo
−chrosite:MnCO3】の2種であった。
これらは、共に+2価のカルシウムイオン(Ca2+)と第一マンガンイオン(Mn
マイナス2価の炭酸イオン([CO3]2-)と結合しているもので、同じ原子配列を持って
いる。そこで、分類上は、鉱物種の上位概念の大きなまとまりを表す鉱物系列
( Mineral series ) に入れられ、この系列(単に系とも呼ぶ)は、方解石系列(系)
( Calcite series) と呼ぶ。
もう一度、鉱物の定義の一部に登場願うと『・・・・均質物質で、ほぼ一定の原子配列と
ほぼ一定の化学組成を持つ』 となっている。この ”ほぼ” という所がミソのようです。
方解石と菱マンガン鉱は原子配列が同じなので、容易に混じり合い、そのまま固まった
固溶体をつくる。つまり、純粋な方解石から純粋な菱マンガン鉱まで、両者があらゆる
比率で混じり合うことができる。このような関係を両者は固溶系を形成するといい
方解石と菱マンガン鉱をそれぞれ端成分(End component)と呼ぶ。
”水”と”油”の関係でなく、”はんだ”と呼ばれる合金が鉛(Pb)と錫(Sn)がどのような比率
でも溶け合い、その比率によって”4ぶ6はんだ”などと呼ばれるのに似ている。
両者の中間物は、(Ca,Mn)CO3 あるいは (Mn,Ca)CO3 と化学式で表され、前者では
原子数が Ca≧Mn、後者では Mn>Ca となり、それぞれ方解石、菱マンガン鉱と呼ばれ
Ca=Mn のところに境界線が引かれる。
(Ca,Mn)CO3を純粋な方解石と区別するのには、含マンガン方解石( Manganiferous
Calcite )というが、鉱物種としては、あくまでも”方解石”である。
方解石系は、鉱物の中で最も多数の種を含む系で、次のような構成員(なかま)が
ある。
・ 菱鉄鉱( Siderite ,FeCo3)
・ 菱マンガン鉱( Rhodochrosite ,MnCO3)
・ 菱亜鉛鉱( Smithsonite ,ZnCO3)
・ 菱ニッケル鉱( Gaspeite ,NiCO3)
・ 菱コバルト鉱( Sphaerocobaltite ,CoCO3)
・ 方解石( Calcite ,CaCO3)
・ 菱カドミウム鉱( Otavite ,CdCO3)
外形が菱(ひし)形の面をもつという、菱面体晶族の特徴を示すからである。
4. 鉱物群
鉱物の系統分類のやり方の1つに、できるだけ類似点を発見して、それらを1つの単位
(グループ)にまとめる習慣がある。このようなまとまりを鉱物群( Mineral Group )と呼ぶ。
全く同じ化学組成を持っているが、結晶配列が異なる結晶質物質が存在する。これらを
同質異像(または同質多像)関係にある、という。
炭素( Carbon ,C ) は、低い温度、低い圧力の下では、石墨( Graphite,C )という
非金属元素鉱物を形成するが高い温度、高い圧力の下ではダイアモンド( Diamond,C )
として石墨よりも原子が密に詰まった、別な鉱物種になる。
最近では、自然フラーレン( Fullerite , C60 )なども新たに仲間に加わっている。
化学式 Al2SiO5 をもつ鉱物は、3種類知られている。珪線石( Sillimanite )、紅柱石
( Andalusite )そして藍晶石( Kyanite ) である。
しかし、このような束ね方(グループ化)をすると、3種が独自につくる鉱物系列が
無視されてしまう。
珪線石は、ムル石( Mullite,Al2(Si,Al)O5-x )(x〜0.1)という種との間で固溶体をつくり
紅柱石は、カノウナ石( Kanonaite ,(Mn3+,Al)(Al,Mn3+)SiO5)という Mn3+がAlより
多い種との間に固溶系を作り、藍晶石については未命名だが、Cr3+がAlより多いものが
知られているので、これら全てを含む群をつくるというのが1つの判断になっている。
( ”判断”であって、結論ではないらしい )
方解石は霰石( Aragonite,CaCO3 )およびファーター石( Vaterite ,CaCO3 )
と同質異像関係にある。しかし、これらを束ねて同質異像群を作ると前に
説明した方解石系列との関係を断ち切らなければならない。
また、霰石には、ストロンチアン石( Strontianite ,SrCO3 )、毒重石(Witherite
BaCo3 )、白鉛鉱( Cerussite ,PbCO3 )という同構造関係にある種があり、これ
らと霰石で、霰石系列が作られている。そこで、一般式M2+CO3で与えられる
鉱物の束ね方は、方解石系列・霰石系列・ファーター石の3つになり、”群”を
作らない(作れない)ことになる。
( M2+ は2価の陽イオンをつくる金属( Metal )一般を意味する )
陽イオンの金属を当てはめてみて、そのような鉱物を自然界から探す目標を定める
ことができる。
5. 鉱物族
鉱物族( Mineral Family ) というのは、系あるいは群よりもやや大きい単位で、
実質的には総称の形で与えられる。橄欖石族・輝石族・角閃石族・雲母族・長石族
などの間には、原子配列の共通性がある。また、尖晶石族をのぞき、珪酸塩鉱物で
造岩鉱物あるいはそれに準ずる。
鉱物族は、次の通りである。
・ 橄欖石族( Olivine family )
・ 柘榴石族( Garnet family )
・ 黄長石族( Melilite family )
・ 電気石族( Tourmaline family )
・ 輝石族( Pyroxene family )
・ 角閃石族( Amphibole family )
・ 雲母族( Mica family )
・ 緑泥石族( Chlorite family )
・ 長石族( Feldspar family )
・ 沸石族( Zeolite family )
また一方では、同じ族に属するものはよく似た外観を持っている。そこで、これらの
名称は野外名( Field Name ) として使われるが、鉱物種として用いられるのは
尖晶石(スピネル)【 Spinel :MgAl2O4 】のみである。(スピネルと言えば、”苦土”
スピネルを指すらしい)
名前をラベルに書くときは、”灰鉄柘榴石” とか ”苦土電気石” と書かないとダメな
ようである。
6. 鉱物類
孔雀石( Malachite,Cu2[(OH)2CO3] )や藍銅鉱( Azurite,Cu3[OHCO3]2 など孔雀石群
を構成する鉱物は、すべて陰イオンが[CO3]2-および(OH)1-となっている。一般に[CO3]2-
を主成分として含む鉱物を炭酸塩鉱物( Carbonate minerals ) といい、系統分類上の
1つの単位とすることができる。このような分類単位を類( Class ) といい、炭酸塩鉱物類
と総称する。単に、炭酸塩とすることもある。
このほか、次のような類を設けることができる。
・ 硫化鉱物( Sulphide minerals )
・ 酸化鉱物( Oxide minerals )
・ ハロゲン化鉱物( Halogenide minerals )
・ 硝酸塩鉱物( Nitrate minerals )
・ 炭酸塩鉱物( Carbonate minerals )
・ 硼酸塩鉱物( Borate minerals )
・ 亜砒酸塩鉱物( Arsenite minerals )
・ 亜硫酸塩・亜セレン酸塩・亜テルル酸塩鉱物
( Sulphite , Selenite and Tellurite minerals )
・ 沃素酸塩鉱物( Iodate minerals )
・ 硫酸塩・セレン酸塩・テルル酸塩
( Sulphate , Selenate and Tellurate minerals )
・ クロム酸塩・モリブデン酸塩・タングステン酸塩
( Chromate , Molybdate and Tungstate minerals )
・ 燐酸塩・砒酸塩・ヴァナジン酸塩
( Phosphate , Arsenate and Vanadate minerals )
・ 珪酸塩・ゲルマン酸塩( Silicate and Germanate minerals )
・ 有機鉱物( Organic minerals )
塩素燐灰石-緑鉛鉱系( Chlorapatite-Pyromorphite ) という系列があり、その主な
構成員は次の通りである。
・ 緑鉛鉱( Pyromorphite , Pb5[Cl(PO4)3]
・ ミメット鉱( Mimetite , Pb5[Cl(AsO4)3]
・ 褐鉛鉱( Vanadinite , Pb5[Cl(VO4)3]
1つの類に入れておかないと、類をまたぐ鉱物系列が形成され、不都合が起るから
である。
7.おわりに
(1) 今まで、何の気なしに、「これは沸石の仲間」だとか「硫化鉱物の一種だ」などと
片付けていたが、系統分類すると「沸石族」 とか 「硫化鉱物類」となるらしい。
堅苦しいようだが、自分の頭の中に鉱物の体系を作っておき、鑑定・整理
そして新産地の発見などに活用したいと考えている。
ない」 とあり、学問の世界の難しさを感じます。
( Class )』別にするか、『産地(都道府県)』別にするか です。
昔あった凡地学をはじめ標本店は前者が多く、益富地学会館は後者と記憶して
いる。
8. 参考文献
1)加藤昭:系列を作る鉱物 第14回ミネラルショー特別講座参考資料
,,2005年
2)中等教育教授法研究会編纂:鉱物界教科書,同研究会,明治35年
3)松原 聰:日本産鉱物種,鉱物情報,2002年
4)中條 利一郎編:自然と人間,内田老鶴圃,2002年