ミネラルマーケット・2011







              ミネラルマーケット・2011

1. 初めに

    東京新宿で国際的なミネラル・ショーが開催されるのに合わせ、アマチュアが自分の採集
   品を売る「ミネラルマーケット」が開催される。
    昨年に続いて、7回目の訪問をした。飯田橋の駅で降り、ノンビリと会場に向かうと、開場
   10分前で、すでに100人以上が並んでいた。

       「ミネラル・マーケット2011」

    会場を見て回ると、一頃よりは価格が落ち着きを見せてきていた。

     この歳まで元気で働いている”自分へのご褒美”だ、とか、何んだかんだ理屈をつけ
   10点あまりの標本を購入し、新宿ショーに向かった。

     ( 2011年6月 現金採集 )

2. 場所と規模

    2005年からJR飯田橋駅近くの「レインボービル」の会議室が会場になった。10時30分開
   場で、千葉からだと予想外に近く、9時過ぎに単身赴任先を出て、開場10分前に到着した。
   すでに、100人以上が並んでいた。
    10時30分ジャストに開場。並んでいた人々が”ドッ”、となだれ込む。10m×15m程度の
   2部屋に約20店ほどが、標本を所狭しと並べており、最初は立錐の余地もないほどであったが、
   30分も過ぎるとアチコチに隙間ができてきた。

    ここで、売られているのは、次のようなものであった。

     (1) アマチュアが自力で採集した国産鉱物や化石
     (2) 外国(中国など)産の鉱物・宝石・化石
     (3) 文献・図書・標本ケースなど

    当然、国産鉱物標本のブースが黒山の人だかりで、外国産標本、化石、宝石のコーナーは
   あまり人気がない。

3. 購入標本

 3.1 「あなたは、おもちですか?」
     岡本要八郎先生と桜井欽一先生が書いた ”「あなたはおもちですか?」鉱物コレクター
    の資格審査”という記事に目が止まり、その内容について、私のHPで紹介させていただいた。

        「あなたはおもちですか?」
     鉱物コレクターの資格審査
     ( How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector )

    それ以来、フィールドやミネラルショーでは、日本産鉱物50種+【番外4種】、計54種を積極
   的に追いかけてきた。2010年春、兵庫県の石友・N夫妻に「眉山のルチル」を恵与いただい
   たおかげで”完集”でき、『Collector』としての自分の1つの目標が達成できた。

 3.2 購入国産標本

    こういった売りたてで、私が購入するのは、次のような品である。

    @ 残念品・・・・・・・・産地を訪れたが、採集できなかった。(産地に行き着けなかった)
                  今後自力採集できそうもないもの。
    A 収集テーマ品・・・古い文献やそれに記載されている産地の標本や、すでに採集して
                  いる他の産地の標本と比較用
    B 見本品・・・・・・・・産地を訪れる際の産状見本(採れなかったときの保険)

    今回、購入したのは次のような標本だった。
    

No 鉱物名
産地 写真 説明
1 方解石
(貝化石)
福島県塙町 残念品
2 鉄電気石
(母岩付き)
福島県都路 残念品

石友・Sさん
恵与品

3 燐灰石
(頭付き)
福島県吾妻珪石山     残念品
4 方解石
(貝化石)
千葉県印西 残念品
5 灰重石 山梨県鞍掛鉱山

        太陽光


    紫外光【ミネラライト】

見本品
6 自然金 長野県向谷鉱山 残念品
7 ストークス石
岐阜県蛭川 収集テーマ品
8 天河石
(微斜長石)
滋賀県石子山

        拡大


        全体

見本品
9 赤銅鉱
(毛状)
山口県大和鉱山 見本品
10 普通角閃石 熊本県俵山 収集テーマ品
11 藍鉄鉱 大分県姫島 収集テーマ品

4. 秩父鉱山の磁硫鉄鉱

    2011年4月、埼玉県秩父市大滝にある「秩父市立大滝歴史民俗資料館」で「秩父鉱山の
   磁硫鉄鉱」を見て、欲しいと思っていた。2010年11月、長野県川上村での恒例のミネラル・
   ウオッチングで「大深山鉱山の磁硫鉄鉱」を採集してはいたが、秩父鉱山産の新鮮な結晶
   は魅力的だった。

         
           長野県大深山鉱山産                 秩父鉱山産
                             「磁硫鉄鉱」

    「秩父鉱山の磁硫鉄鉱」が出品されると「ミネラル・マーケット2011」のHPにあったので、
   ありそうなブースに行くと見当たらず、売り場の人は「2、3点あったはずで、飛ぶように売れ
   るものでもないのだが」、と訝(いぶか)しがっていた。
    何だかんだと10点余りを買ってしまったが、本当に欲しい、と思っていたのはこの1点だけ
   だったので、ないとわかると無性に欲しくなった。

    この後、思わぬところで「六角板状の磁硫鉄鉱の自形結晶」と出会うことになるとは知る
   由もなかった。

5. おわりに

 (1) 続々と新産地、新産鉱物
      草下先生の「鉱物採集フィールドガイド」を読むと、草下先生ですら先輩コレクターから
     『君、鉱物採集を始めるのが30年遅かったよ』、と言われたとある。
      確かに、日本のあちこちで鉱山や採石場が稼働していたころ、「1升瓶を持参したらカ
     マス一杯の水晶をくれ、その中に日本式双晶があった」、などという夢のような話もあっ
     たらしい。

      逆に、ミネラル・マーケットには、長野県茅野市だけをとってみても、2009年の「セリウ
     ム・フローレンス石」や2010年の「長野県向谷鉱山の都茂鉱・自然金」など草下先生も
     知らなかった新産地の標本や新産鉱物が出品されている。
      何事も始めるのに遅い、はないということだろうか。『「四十(しじゅう)の手習い』という
     言葉があるが、人生五十年時代の話で、人生の8合目に差しかかって始めても遅くない
     ということだ。
      男性の平均寿命が80歳近くなった現在、還暦を過ぎて始めても遅くない、ということで
     定年退職後にミネラル・ウオッチングを始めるのも良いだろう。

      行く気と多少の情報網があれば、これらの新産地の発表からそれほど間(ま)を置かず
     に訪れ、新産鉱物を採集できる時代になっている。

      恒例になっている「2011年月遅れGWミネラル・ウオッチング」で、これらの新産地を
     親しい石友と訪れるのを楽しみにしている。

6. 参考文献 

 1) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
 2) 松原 聰、宮脇 律郎著:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
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