長野県南相木村三川の日本式双晶

       長野県南相木村三川の日本式双晶

1. 初めに

   『石梨県』の千葉県から『山梨県』に戻って3週間になろうとしている。『晴(耕)雨読』
  日々を楽しんでいる。
   不在中荒れ放題だった農園を耕し、「ショウガ」「サトイモ」「自家製苗のねぎ」の植え付けを
  終え、ジャガイモの種や夏野菜を植えるための耕す作業が待っている。今日は雨で、『読』で
  なく『書』である。
   技術情報の入手も怠れないので、一昨日は、東京・ビッグサイトで開催された、「第1回
  次世代照明技術展」を見学してきた。
   こういった日々の息抜きは何と言っても”ミネラル・ウオッチング”だ。石友・小Yさんから
  「長野県川上村の北隣にある南相木村の産地を案内します」との電話をいただき、2つ返事で
  お願いした。

   最初に訪れたのは、南相木村三川の日本式双晶産地だった。ここは、湯沼鉱泉社長が
  発見した産地で、10人くらいにしか知られていないようだ。

   露頭の石英脈が走る部分や褐鉄鉱に汚れた部分を叩くと晶洞があり、うまくすると日本
  式双晶があるのだが、今回幅10cmほどの晶洞に最大12mmを筆頭に数枚の双晶があった。

   貴重な産地を開拓してくれた湯沼鉱泉社長と案内してくれた小Yさんに、厚く御礼申し上げ
  る。
   ( 2009年4月採集 )

2. 産地

   川上村から馬越(まごえ:地元の小Yさんは「まごい」と呼ぶ)峠を越えて南相木村に入ると
  そこが三川である。詳細な場所は湯沼鉱泉に宿泊し、現物を見せてもらいながら、社長に
  産地を教えてもらうのが良いだろう。

3. 産状と採集方法

   産地には5mほど離れて露頭が2箇所ある。左側は褐鉄鉱を伴う珪質岩で、右側は最大幅
  約10cmの石英脈が走っている。
   右側は透明度が高い水晶が出るのだが日本式双晶は出ないようで、双晶を狙うなら左が
  良さそうだ。
   今回、小Yさんが右、私が左を叩かせてもらった。

      
            左                 右
                     露頭

4. 採集鉱物

   ここでの狙いは「日本式双晶」だけで、これ以外には小さな「自然硫黄」(?)があったが
  持ち帰らず露頭の前に置いてきた。

 (1) 水晶日本式双晶/石英【Japanese Law Twin/QUARTZ:SiO2
      2つの水晶が84度33分の角度で交差している双晶で、その形状から、夫婦(めおと)
     水晶、蝶形双晶(Butterfly Twin)あるいは鎌(鎌形)水晶等と呼ばれている。
      その形状を”ハート形”、”軍配形”、”蝶形”などとも呼ぶ。

         
          ハート形【両翼 6mm】       蝶型【両翼 12mm】
                     日本式双晶

5. おわりに

 (1) 腐っても日本式双晶
      私の持論の1つに『ミネラル・ウオッチングは水晶に始まり、水晶に終わる』 がある。
     そうなると、『日本式双晶』は、最終目的の頂点の1つだ。ある人が、「水晶あるところ
     必ず日本式双晶あり」、と言っているが、日本各地で日本式双晶は採集可能だ。しかし
     山梨県北部から長野県川上村、南相木村にかけてはとりわけ日本式双晶産地がかた
     まっていて、今回訪れたのはその1つだった。

      小Yさんに、「こんな細い脈から日本式双晶を探すとは、さすが Mineralhunters だ」と
     変な感心のされ方だった。採集できたのは、両翼1cm前後で、口の悪い人に言わせれば
     「褐鉄鉱で黄色く色づいた”腐ったような”」標本だったが、新しい産地で採集できたこと
     に意味がある。

      私にとっては、『腐っても日本式双晶』、である。

6. 参考文献

 1) 小出 五郎:長野県川上村川端下附近の鉱物 我等の鉱物,昭和16年
inserted by FC2 system