山梨県水晶峠御堂川の鉱物
山梨県水晶峠御堂川の鉱物
1.初めに
2002年6月の採集会で水晶峠を何年か振りで訪れ、道を間違えて御堂川の支流に
入り込んでしまった。
そのとき、千葉県のYさんの奥さんが電気石のついた水晶を採集したことを思い出し
御堂川筋の鉱物探査を行った。
(2002年11月採集)
2.産地
林道「川上牧丘線」で乙女鉱山の入口を左に見て、約20分走るとアコウ沢を過ぎ
その先の左手にカーブミラーのついた広い駐車スペースがある。ここが金峰山登山道の
入口です。
以前は、登山の案内板があり迷うことがなかったのですが、林道の改修工事で撤去され
登山道の入口が分かりにくくなっています。
ここから沢音のする谷に向かって、やや急な坂道を下って行くと、林業用軌道が残る
平坦な道に突き当たる。ここを約1km行くと、ガレ場の先が谷に向かった急坂になって
いる。
坂を下り切ったところが、荒川と御堂川合流点になっている。ここから巨岩がゴロゴロ
している御堂川の中や川岸を遡ります。
約150mも行くと、水晶峠への近道のガレが左に見える。ここが【産地A】です。
ガレ
さらに150mも遡ると、左側に水晶坑とズリがあります。【産地B】
ここは丁度、”お花畑”の一段下になっています。
水晶坑とズリ
ここから、100mほど登山道に沿って行き、支流に入り、100mも行くと滝があり
その手前に、露頭や転石があります。【産地C】
滝
3.産状と採集方法
御堂川(水晶峠)の周辺は、花崗岩やそれが風化したマサに挟まれたペグマタイト脈
の中に水晶を初め各種の鉱物がみられます。水晶を掘ったズリでも各種の鉱物がみられます。
ここでは、露頭を叩いたり、転石を割って採集します。
4.産出鉱物
(1)鋭錐石【Anatase:TiO2】【産地B】
水晶の表面に1mm以下の微細な結晶が希に見られる。特有の強い金属光沢が目印です。
極めて小さいので現地で気付くことは難しく、帰宅して採集品を洗浄・整理して気付く
ことが多い。従って、頭なし水晶に付着しているものは、殆ど捨てられていると思われる。
鋭錐石
(2)水晶【Rock Crystal :SiO2】【産地B】
ここの水晶は、透明度が高いのが特徴で、水晶峠の水晶ズリから500m弱しか離れて
いないのに「山入り水晶」、「緑水晶」などは全く見かけません。
晶癖も水晶峠が先細りが多いのに、ここのは平べったいものが目に付きます。
晶洞そのものが大きくなかったためか、自形で頭・柱面が完全なものは極めて少ない。
水晶
(3)苦土電気石【Dravite :NaMg3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4】【産地A,C】
石英脈や花崗岩の中に、緑黒色をした針状結晶の集合体で産出します。御堂川床にある
丸みを帯びた礫に苦土電気石が食い込んだものがかなりの数見られ、かなり上にも露頭が
あると考えられる。
苦土電気石
5.おわりに
(1)ここでは、クサビ石をはじめ各種のチタン鉱物が”普通に”採集できるとの
報告がありますが、今回採集できたのは鋭錐石1個体だけでした。
来春以降、探査を続けてみます。
(2)帰りに、水晶峠のズリに立ち寄りましたが、一段と掘り込まれ、この春の時と
産地の様子が一変していました。
水晶峠ズリ【2002年11月】
(3)今年は山梨県も冬の到来が早く、水晶峠のズリの表面はカチカチに凍ってツルハシも
歯が立たない有様で、私には採集は無理でした。
それでも、火をたいて凍土を溶かして採集するツワモノも来ており、産地も変るわけです。
水晶峠採集風景
6.参考文献
1)加藤邦明、渡辺博和:水晶峠(御堂川)のチタン鉱物,水晶Vol.9No.1,1995年