山梨県須玉町増富の水晶

山梨県須玉町増富の水晶

1.初めに

私のHPが縁で知り合った、埼玉県のAさん(今まで名前の一部”あい”をとり
”Iさん”で登場)から、山梨県の水晶産地@八幡山、A増富、B向山・雄鷹山を
教えて欲しいとのメールがあった。
増富は山梨県に転勤になった平成元年から数年、物珍しさもあり、何回か通い
小さな晶洞から傾軸式双晶(今にして思えば、エルステル式双晶か?)をはじめ
ペグマタイト鉱物を採集した。
アザミ鉱山採集行の途中、千葉県のTWさんとの待合せの時刻まで間があったので
Aさんを案内し、小さなポケットをいくつか開け、この産地ならではの、長石主体の
クラスターや黒雲母結晶などを採集した。
アザミ鉱山採集の帰りと翌日の八幡山採集の行きすがら、AさんとMさんを案内して
立ち寄ったほどでした。
(2002年11月採集)

2.産地

日本有数のラジウム温泉の1つである増富温泉を抜けると、道の両側に渓谷が
迫ってくる。急な山の斜面や川沿いのガレに花崗岩らしき白い岩体が見られる。
増富水晶産地
その1箇所に狙いを定め、落ち葉でツルツル滑る急斜面をよじ登り岩体に取り付くと
あちこちに小さな水晶、長石が剥き出しのポケットが見られる。

3.産状と採集方法

ここは花崗岩に胚胎するペグマタイト脈で、晶洞から剥離したクラスターを
晶洞の底のガマ粘土の中から採集します。
岩体は風化に耐えて残っただけのことあり、矢鱈に堅いので、晶洞を見つけただけでは
安心できません。
晶洞を叩くAさん

4.産出鉱物

(1)水晶クラスター【Cluster of Rock Crystal:SiO2】
ここの晶洞は、黒平に似て長石と水晶が同じくらいの比率で、水晶だけの乙女鉱山の
クラスターと全く違い愛らしいものです。
増富クラスター
(2)黒雲母【Biotite:K(Mg,Fe)3(Al,Fe)Si3O10(OH,F)2】
晶洞の底から、自形をした黒雲母とそれが変化した塊状の緑泥石が採集できた。
黒雲母

5.おわりに

(1)今回、アザミ水晶鉱山、八幡山水晶鉱山採集のついでに立ち寄りましたが
そこそこの成果がありました。
(2)「水晶宝飾史」によれば
  @増富各鉱山(いくつか水晶鉱山が有ったということか?)の水晶は
   透明度はやや少ない。剣先は次第に細まり、燐灰石を伴うことが多い。
  A宮本村(今の甲府市)御嶽の長田某が、16.66m(55尺)の竪坑を掘り下げ
   山腹から掘った横坑と連絡させて、さらにそれより21.21m(70尺)も
   掘り下げて、良質の水晶を採掘したという増富の5丈5尺坑・・・・・
とありますが、今回採集した場所の産状と違い、増富水晶鉱山は別な場所にあったと
思われ、この探査も継続します。
(3)増富温泉の外れに、温泉の成分が堆積した石灰華の露頭があります。

      石灰華露頭       石灰華案内板
以前、この近くの源泉の1つで木の葉化石が採集できましたが、既に涸れ果てています。

6.参考文献

1)篠原方泰編:水晶宝飾史,甲府商工会議所,昭和43年
inserted by FC2 system