山梨県増穂町増穂鉱山のマンガンパンペリー石

      山梨県増穂町増穂鉱山のマンガンパンペリー石

1.初めに

 最近、北陸地方、北関東地方そして東海地方の鉱物産地を訪ねるのに忙しく、地元
山梨県の産地を訪れていないことが、気にかかっていた。
 古い鉱物文献を読んでいると「山梨県増穂鉱山・落合鉱山」が目についたが、あちこち
県外の産地を巡るのに忙しくそのままになっていた。
 年末を控え、自宅の庭木の剪定など、お正月を迎える準備も一段落したとき
「増穂鉱山のマンガンパンペリー石」の記事を思い出したので、訪れてみた。
 文献のおかげで、自宅から1時間余りで産地には迷わずに到達できたが、産地のズリ石は
風化が進み、その上私の最も苦手なマンガン鉱物であり、「マンガンパンペリー石」を
採集できた、とは断言できていない。
 次回は、マンガン鉱物に詳しい石友に同行頂き、教えを請いたいと考えています。
(2004年12月採集)

2.産地

 国道52号線を甲府方面から来て「青柳2丁目」の信号で右折し「赤石鉱泉」に向けて
登っていく。
 平林の集落を抜けて約2kmも行くと、左側に1〜2台の駐車スペースがある。
 ここから、歩いて5分ほどで産地に到着します。

3.産状と採集方法

 「日本のマンガン鉱床補遺後編」には、増穂鉱山ではMnO2やMn鉱石を採掘したとありますが
 その時期や鉱業者については記載されていません。
 「日本鉱産誌T−C」には、富士川地区にあったマンガン鉱山として、「増穂鉱山」が掲載され
 その採掘時期は1939〜1944年で、採掘量はMn1,696トン、MnO2196トンとあり
 第二次世界大戦中に採掘されたことになっています。
  しかし、これらの文献では、どのような鉱物(鉱石)が採掘されたのかは、詳らかでは
 ありませんし、ましてや「マンガンパンペリー石」のような特徴ある鉱物が採集できたとは
 書いてありません。
  松原聰著「日本産鉱物種」1992年版には、「マンガンパンペリー石」の産地として、山梨県
 落合鉱山が記載してあるのみです。
  増穂鉱山は、小さな尾根の側面を露天掘りしたと思われます。この地域に特有の緑色を帯びた
 凝灰岩と赤色チャート(紅簾石?)を伴う母岩に胚胎したマンガン鉱床です。
  露天掘りの前に広がるズリを掘って、真っ黒いマンガン鉱石を探し、ハンマーで割って
 新鮮な部分を採集します。

       
       露天掘り跡            採集風景
               増穂鉱山

4.産出鉱物

(1)マンガンパンペリー石【Pumpellyite:Ca8(Mn,Mg)4(Al,Mn)8Si12(O,OH)56】
   マンガン鉱物読本には、『一見紅簾石に類似し、それより色が淡く、条痕色も淡い。
  パンペリー石族鉱物としては結晶に粘りがなく、硬度の割りには容易に針でほじくる
  ことができる』とあります。
   素人目には、ほかのマンガン鉱物との区別がつきにくい難物です。

   
      マンガンパンペリー石【マンガン読本より引用】

   このほか、各種のマンガン鉱物がありますが、ズリ石の風化が進んでおり
  良好な状態の標本は採集しにくい状況です。

5.おわりに

(1)甲府盆地南部の富士川に沿った地域には、下部町の富里鉱山をはじめ、多くの
   マンガン鉱山があった。
   文献に増穂鉱山の近くに、落合鉱山があったとあり、探したが見つからなかった。
(2)今回の訪山では、「マンガンパンペリー石」を採集できた、とは断言できない。
   次回は、マンガン鉱物に詳しい石友に同行頂き、教えを請いたいと考えています。

6.参考文献

1)吉村豊文:日本のマンガン鉱床補遺 後編,吉村豊文教授記念事業会,昭和44年
2)工業技術院地質調査所:日本鉱産誌(BI-C),東京地学協会,昭和29年
3)加藤昭:マンガン鉱物読本,関東鉱物同好会,1998年
4)松原聰:日本産鉱物種,鉱物情報,1992年
5)平井進:山梨県増穂鉱山・落合鉱山,鉱物情報,1984年
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