愛媛県久万町槇の川の魚眼石と沸石鉱物

愛媛県久万町槇の川の魚眼石と沸石鉱物

1.初めに

 今年が明けた2004年となっては、昨年(2003年)、我々夫婦の結婚30周年・「真珠婚」を
記念する、鉱物採集兼観光旅行として、兵庫県の石友・Nさんご夫妻に四国・中国の産地を
案内していただいた。
 何箇所か訪れてみたい産地があり、その1つが、愛媛県久万町槇の川であった。
 益富地学会館編「日本の鉱物」には、この産地で産出した”ピンク色の魚眼石と
ダトー石”が掲載してあり、是非ともこれらを採集したいと考えていた。
 宮久 三千年先生と皆川 鉄雄先生共著になる「鉱物採集の旅 四国・瀬戸内編」には
「愛媛県久万町槇の川の魚眼石と沸石鉱物」の章があり、産地と産出鉱物が詳しく
記述してあります。
 しかし、ここの採石場での採集は難しいとのことで、以前Nさんの奥さんが採石場で
働いている人から頂いたものを恵与いただいた次第です。
 何から、何までお世話になった、採集行でした。
(2003年11月情報)

2. 産地

 「鉱物採集の旅 四国・瀬戸内編」には、上浮名(かみうけな)郡久万町槇の川には
この本が書かれた1975年当時に採石していた丁場がいくつか紹介されています。
 それから30年近くが経ち、産地の状況はかなり変化し、採石場での採集は厳しい状況です。

   丁場

3. 産状と採集方法

 「鉱物採集の旅 四国・瀬戸内編」にあるとおり、この一帯は黒雲母安山岩からなる
黒っぽく緻密で堅い岩質です。所々には、柱状節理もみられます。
 魚眼石と沸石鉱物は、安山岩の晶洞(ガマ)部分にあり、各種の鉱物が晶出する順序は
次のように推定されています。

   輝沸石------→束沸石------→魚眼石------→方解石
   輝沸石------→ダトー石-----→魚眼石------→方解石
 ここでの採集は、晶洞を探すのが先決ですが、「鉱物採集の旅」が書かれたころでも
 『・・・・・これらの鉱物はめっきり減ってしまいました。でも運が良ければ採集できる
はずです。・・・・・』
だったようです。

4. 採集鉱物

(1)魚眼石【Apophylite:KCa4Si8O20(F,OH)・8H2O)】
   無色透明〜白色、まれに淡いピンク色の正方錐や正方柱状で晶洞の中に産出します。
  劈開は明らかで、その面は真珠光沢をしているのが特徴です。
   (私は、魚の眼に似ている、と言われても、ピンと来ません。)

       
         透明              ピンク色【脱色?】
                  魚眼石
(2)ダトー石【Datolite:CaBSiO4(OH)】
   淡いピンク色〜紫色の細かい結晶が丸く集合し葡萄状をなし、晶洞の内側に張り付いて
  います。針状・放射状のソーダ沸石に貫かれているものも多い。
   このように、沸石とダトー石が共生する例は少なく、また丸く結晶する例もなかった
  ことから、最初は「玉髄」とか「葡萄石」と間違われた。
   硬度7の玉髄よりはるかに軟らかく、緑〜白色を呈する葡萄石とは色の違いから
  珍しい鉱物では、と思われ化学分析され「ダトー石」と判明した経緯がある。
   このようなダトー石の例は珍しく、ボトリオライト(Botryolite:ぶどう状ダトライト)
  とも呼ばれている。

   ボトリオ石【ソーダ沸石と共生】

(3)輝沸石【Heulandite:CaAl2Si7O18・6H2O】
   1cm以下の舟のような形をした板状結晶で、劈開面がキラキラ真珠光沢に輝きます。
(4)ソーダ沸石【Natrolite:Na2Al2Si3O10・2H2O】
   透明〜白色の細柱状結晶が放射状に集合して産出する。

   ソーダ沸石

(5)束沸石【Stilbite:CaAl2Si7O18・7H2O】
   曲がった板状結晶が少しずつズレて、束状に集まって産出し、あたかも扇子を半開きに
   したかのようです。
   ダイジェスト版で、中沸石(蛇骨石)と紹介したのは、誤りでした。

   束沸石

  (6)方解石【Calcite:CaCO3】
   ここでの方解石は、板状、陣笠状、犬牙状、柱状、針状などあり、紙のような薄い
   板状もあります。

   板状方解石

 

5.おわりに

(1)是非入手したいと考えていたピンク色のダトー石と魚眼石を入手でき、念願の叶った
   採集行でした。
   標本を恵与していただいたNさんご夫妻に改めて感謝申し上げます。

6.参考文献

1)宮久 三千年・皆川 鉄雄:鉱物採集の旅 四国・瀬戸内編,築地書館,1975年
2)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3)松原 聰:日本の鉱物,学研,2003年
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