真米鉱山の地域は古生代の粘板岩で、これに砂岩・珪岩を交え、その間にレンズ状
の石灰岩を夾みこんでいる。
ここには、北から千貫目鉱床、日影(日蔭)鉱床、山神(北・南)鉱床、宝鉱床の
4つがあり、それぞれの配置は下図のようになっていた。
それぞれの坑(鉱床)の特徴は下の表のとおりである。
鉱床 | 規模 | 主な産出鉱物 | 備考 | 千貫目 | 幅0.5〜2m 長さ60m |
方鉛鉱、閃亜鉛鉱 磁硫鉄鉱を主とし 黄鉄鉱は少なく 黄銅鉱は肉眼的には希 | 露頭あり、芋状〜ややパイプ状 | 日影(日蔭) | 幅0.5〜2m 長さ190m |
方鉛鉱、閃亜鉛鉱 磁硫鉄鉱を主とし 黄鉄鉱は少なく 黄銅鉱は肉眼的には希 | 露頭あり、不規則紡錘状 あるいは芋状をなす単位鉱体が 連鎖状に集合し、全体として パイプ状をなす |
山神(北) | 幅0.5〜2m 長さ110m | 方鉛鉱、閃亜鉛鉱に富む | 露頭あり レンズ状〜パイプ状をなす |
山神(南) | 幅0.5〜2m 長さ40m | 方鉛鉱、閃亜鉛鉱に富む | 露頭なし 芋状〜ややパイプ状をなす |
宝 | 幅0.5〜2.5m 長さ10m |
磁硫鉄鉱を主とし 鉛、亜鉛の含有は少ない 蛍石がしばしば認められる | 露頭あり、芋状鉱体 |
真米鉱山の生産量は、「福島県鉱産誌」によれば、下表の通りで、銀の含有量は
平均して50〜70g/tであった。
昭和38年(1963年)の精鉱量は前年に比べ半分に激減し、銀の品位も51g/tとそれ
までの最低を記録し、真米鉱山を取り巻く環境が極めて厳しくなったことがうかが
える。
年次 | 鉱量(t) | 精鉱品位 | 備考 | 銀Ag(g/t) | 鉛Pb(%) | 亜鉛Zn(%) | 昭和27年 | 664.0 | 54 | 14.83 | 8.10 | 昭和28年 | 955.0 | 58 | 10.85 | 9.22 | 昭和29年 | 1,279.3 | 70 | 13.32 | 9.41 | 昭和30年 | 1,962.0 | 70 | 16.23 | 9.52 | 昭和31年 | 2,113.0 | 73 | 16.85 | 10.20 | 昭和32年 | 2,245.0 | 61 | 16.01 | 9.80 | 昭和33年 | 2,463.0 | 55 | 14.22 | 9.75 | 昭和34年 | 2,500.0 | 55 | 13.20 | 9.60 | 昭和35年 | 2,210.0 | 58 | 13.63 | 9.62 | 昭和36年 | 1,910.0 | 59 | 13.97 | 9.39 | 昭和37年 | 1,750.0 | 55 | 13.78 | 9.68 | 昭和38年 | 975.0 | 51 | 13.51 | 9.28 |
3.2 採集方法
広い範囲に散らばっているズリから、赤茶色の褐鉄鉱に覆われて”ズシリ”と重い
ズリ石を探し出し、ハンマで割って新鮮な部分を出す。
晶質石灰岩(大理石)は、真っ白い塊で点在するので簡単に採集できる。
(2)閃亜鉛鉱【Sphalerite:ZnS】
方鉛鉱と同じように、母岩に塊状で含まれ、割れ口が真っ黒で平坦だが”ギザギザ”
した感じの”葉片状”なので方鉛鉱と区別できる。
方鉛鉱と並んでここの主要鉱石だった割りに少ない。
(3)磁硫鉄鉱【Pyrrhotite:Fe1-xS】
黄〜赤銅色、塊状で産する。写真に示すように、磁石を近づけると勢いよく吸い付
けるので鑑定は難しくない。
強い磁性を示すところから、磁硫鉄鉱-4M【Pyrrhotite-4M:Fe7S8】と呼ばれる単斜
晶系のものらしい。
(4)硫砒鉄鉱【Arsenopyrite:FeAsS】
銀白色平坦な割れ口を示す。自形結晶の数面がみえるものや、表面が黄褐色に錆び
”菱餅状”の自形結晶がみられるものもある。
(5)蛍石【Fluorite:CaF2】
銀白色の硫砒鉄鉱の中に脈状で産する。白色〜透明、ガラス光沢を示し、割れ口が
平坦で、独特の光沢があり、虹色に見える部分があることで似たような産状の方解石
と区別がつく。
ミネラライトを照射しても、ほとんど”蛍光を示さない”。「福島県鉱産誌」には
蛍石は一番南の宝鉱体のみ産出したとある。このズリにはすべての坑からの鉱石が集
められたと推定できる。
このほか、黄銅鉱や晶質石灰石などが見られる。
(2) ”時間潰し”のつもりで訪れただけに、ミネラルウオッチングの結果にあまり失望
を感じなかった。
この近くには、「水引鉱山」など、「福島県鉱産誌」に金銀鉱山として記載してあ
る鉱山もあり、いずれ訪れてみたいと考えている。