2.2 「玄倉」産地は遠かった
(1)ユーシン・ロッジへ
ユーシン・ロッジの手前、約7kmの位置に、頑丈なゲートがある。神奈川の石友
OGさんは、直に下見して「どんなことをしてもこのゲートは通れない」ので
往復20kmも余分に歩くのは大変と、参加を断念された。
Mさんが事前に、ユーシン・ロッジ宿泊客は、玄倉の集落にある「玄倉商店」で
ゲートの鍵を借りられることを調べてくれ、最初の難関は、パス。
ユーシン・ロッジに到着し、管理人さんに宿泊費3,000円を支払い、「水晶沢」に
入ることを話すと、4、50年前(昭和35、6年頃)には、水晶を探しに、大勢の
人が入ったが、今はあるかどうか、との事であった。
(2)「二又」を目指せ
ユーシン・ロッジから、星薬科大薬用植物研究所の脇を通り、すぐに沢を渡ると
「←発電所 登山道→」とあり、管理人に教えられた、登山道の方を登る。
登山道の踏み分け道があり、比較的歩きやすい。
やがて、所々登山道が崩落したり、木橋が落ちたりしている箇所を迂回しながら
登山道を辿る。落ちかかった木橋があり、「←ユーシンロッジ 金山谷の頭→」の
しっかりした標識があり、その先2、30mで、道が見当たらなくなった。
杉の木に赤矢印「→」が見えたので、それに従い、斜面を登る。左下にユーシン沢を
見ながら、大きく迂回して、上流に進む。そろそろ「二又」のはずなので、急な斜面を
ひとまず沢に下りる。記憶にある右岸(上流から見て右)の”こぶ”らしい斜面を
熊笹を掴みながら攀じ登ると、反対側斜面には、ロープも張ってあり、ユーシン沢と
桧洞(ひのきぼら)沢(金山谷)が合流する「二又」が見えた。ここまで、ロッジから
1時間で、やや遠回りをしたらしい。しかしここまでくれば、後は記憶を辿るだけ。
(帰途、気付いたが杉木立の赤「→」に騙された。その手前で、沢に降り、右岸に渡り
滝の手前で左手の急斜面の登山道を鞍部目指して登れば、その反対側が「二又」)
(3)「ザンザ洞出合」を目指せ
桧洞沢の巨岩を攀じ登ったり、飛び越えたり、時には迂回したりしながら上流に向かうと
左側から、水量の豊かな沢が合流する。ここが、「ザンザ洞出合」で、ここまで約30分
(4)「魚止めの滝」を乗り越えて
さらに桧洞沢の巨岩を攀じ登ったり、飛び越えたり、時には迂回したりしながら上流に
向かうと、「魚止めの滝」がある。ここを左に巻いて(右岸を迂回して)、さらに上流に
行くと、左から沢が流れ込み、桧洞沢の河原には、背丈ほどの「馬酔木」が繁っている。
この先、右からの沢が目指す「水晶沢」である。ここまで、約20分
(5)「燐灰石」産地
水晶沢を遡ると、直径1m近い巨木が横倒しになり、平成11年(1999年)の集中豪雨の
ものすごさを物語っている。「燐灰石」をはじめ各種の鉱物を産した涸れ沢は、水晶沢より
一段高かったと記憶していたが、今は同じレベルになり、大量の土砂に「燐灰石」を含む
母岩、ズリ石が埋まってしまったようだ。
(2)水晶【Rock Crystal:SiO2】
白っぽい花崗閃緑岩の晶洞部分にあり、水晶の表面は、横の条線が発達し、透明度も余り
高くないため、お世辞にも綺麗な水晶とは言いがたい。大きさも最大で5cm止まりである。
水晶全体を束沸石が覆っていたり、束沸石と共生する水晶も珍しくなく、味のある標本である。
水晶の表面には、小さな輝沸石が晶出しているものやインクルージョンとして緑泥石を
含む、緑水晶もある。
(3)束沸石【Stilbite:NaCa4Al9Si27O72・3OH2O】
白色束状や球状で産出するところから、”たば”あるいは”そく”沸石と呼ばれる。
玄倉では、水晶の頭や全体を覆うような形あるいは球状の結晶が水晶に随伴するような形で
産出する。
(4)磁鉄鉱【Magnetite:Fe2O4】
銀白色の”モリブデン鉛鉱(輝水鉛鉱)を思わせる皮膜状で産出するが、磁石を近づけると
磁鉄鉱であることが分かる。
(5)チタン石【Titanite:CaTiSiO5】
石英閃緑岩の晶洞部分に、赤褐色、両錐形の結晶の集合体が見られる。その形から従来は
「くさび石」とも呼ばれていた。
このほか、黄鉄鉱とそれが武石になったもの、黄銅鉱とそれに伴う孔雀石、そして5cmを
越える透緑閃石結晶の集合体などが見られます。
(3)「ユーシンロッジ」の受付のガラスケースには、「水晶沢の水晶」が数個飾ってあるのに
ここを離れる段階になって気付いた。
訪れる機会があれば、見せていただくと良いでしょう。