さらに1km弱進むと、舗装道路は終わりになり、ここに駐車する。実はこの約500m
手前に進入禁止”(−)”の標識があるのだが、何故あるの理解できず舗装の終点まで
乗り入れた。ここから、道は2叉になっている。右側の林道を沢を右に見ながら約200mも
登って行くと、右側から枯沢が合流しており、その周辺に真っ黒いマンガン鉱物のスリ石が
散乱している。
沢を渡り、この枯沢を約100mも行くと、滝がありその右下に坑道が開いており、今も
坑口からは水がコンコンと流れ出している。
この坑口から沢の合流点までが産地です。
昭和29年(1954年)に編まれた「日本鉱産誌」には、黒川鉱山の記載がなく、それ以降に
開発された鉱山だと思われるが、この一帯のマンガン鉱山と同じように、古生層中のチャート
・粘板岩を母岩とする鉱床で、縞状チョコレート鉱、テフロ石、バラ輝石よりなる鉱石を産した。
坑内には、流紋岩が認められ、その附近のマンガン鉱石に黄鉄鉱の鉱染が認められる
のは、そのせいとされる。
坑口から沢の合流点附近一帯に、真っ黒い二酸化マンガンに覆われたズリ石が多量にある
ので、それらを叩き割って、新鮮な面を出し採集する。マンガン鉱石は堅くて割りにくく、硬い
叩き台石の上に置いて、大き目(2kg以上)のハンマーで叩くのが良いのだが、破片が飛び
それらが身体に突き刺さると思わぬ怪我をする。
必ず、めがね(ゴーグル)、手袋、長袖着用を守ること。特に、大勢で採集する場合、思わぬ
方向から(に)破片が飛ぶので、注意が必要である。30分もハンマーを振るっていると全身汗
まみれになる。そんな訳で、ここは初冬や春先に訪れるのが良いだろう。
表面は真っ黒なのだが、二酸化マンガンで汚れた粘板岩やチャートもあるので、見た目や
持った感じ(重さ)で、マンガン鉱石を見分ける眼力も養える。
(1)緑マンガン鉱【manganosite:MnO】
茶色いハウスマン鉱の中に皮膜状、鮮緑色で産出する。割った瞬間は、鮮やかな緑色を
しているが、空気中で酸化して、短時間で色があせてしまう。
緑色を長持ちさせるには、透明ラッカーを塗れば良いといわれ、100円ショップで買った
透明マニキュアを塗ってみた。遅かれ早かれ黒変は免れないだろう。
写真で記録するのがベストだと思います。
(2)ハウスマン鉱【Hausmannite:Mn''Mn'''2O4】
俗にチョコレート鉱と呼ばれるマンガンの高品位鉱で、黒〜褐色の緻密な塊状で産出する。
この標本では、黒い幾筋かの磁性を有するヤコブス鉱【Jacobsite:Mn''Fe'''2O4】と接して
産出した。
真っ白い部分は、長石と思われる。
(3)菱マンガン鉱【Rhodechrosite:MnCO3】
明瞭な結晶形を示さず、バラ輝石の間に半透明〜灰白色の層状で産する。表面がガラス光沢
を示し、ナイフなどの先で突くと簡単に砕け、破片は劈開を示す菱面体である。
(4)テフロ石(マンガンかんらん石)【Tephroite:Mn''SiO4】
灰色〜帯青灰色の塊状で産する。化学式のMnは、連続的にFe(鉄),Mg(マグネシウム)に
よって、部分的にCa(カルシウム)やZn(亜鉛)によって置き換えられる。
最近は、マンガンかんらん石と呼ぶのが一般的のようです。
(5)バラ輝石【Rhodonite:(Mn'',Ca)Mn''4Si5O15】
ピンク色の緻密な塊状で産出する。茂倉沢鉱山や田口鉱山産のような粗粒のものは
見られず、変成度が低かったことを物語っており、パイロックスマンガン石や満バン柘榴石
など”結晶系”の鉱物は期待できない。
(2)ここは、ズリ石が豊富にあり、マンガン鉱物採集の入門コースとして最適の産地だと思う。
「日本の鉱物」に記載された理由が納得できます。
ここで、眼を養い、腕を磨いてから「茂倉沢鉱山の鈴木石」に挑戦すると良いでしょう。
(3)ここでは、黄鉄鉱に代表される硫化鉱物も結晶は微細だが多量に産出する。東京の
石友・Tさんがここで「針ニッケル鉱」【Millerite:NiS】を採集していますので、油断で
きません。
針状の金属鉱物があったら、ルーペでのぞく注意深さも必要です。