この時期に訪れると、厳しい冬の間に風化した花崗岩が崩落し、真砂(まさ)の上に、
”チョコン”と水晶や長石が落ちていて、晶洞(ガマ)の道しるべとなってくれる。
今回もASさんと訪れ、目的の松茸水晶をガレの表面や晶洞を開けて、水晶、長石など
のペグマタイト鉱物と共に採集できた。
私にとって最大の収穫は、「苗木石(変種ジルコン)」 などの希元素鉱物や「板チタン石」
「鋭錐石」などを晶洞から母岩付きで採集できたことである。
今回、女性や子供でもアプローチできるルートと楽しめる産地をキープしてきたので、ここ
も次回のミネラルウオッチングの候補地の1つである。
同行いただいたASさんに、厚く御礼を申し上げる。
( 2007年5月採集 )
産 状 | 採集標本 | 備考 | 全 体 | 拡 大 | 苗木石 【Naegite】 |
放射能の影響か 下の水晶が煙水晶に なっている |
ボタン状 【Button Type】 | 六角板状 |
(3) 正常ジルコン【ZIRCON :ZrSiO4】
緑褐色ガラス光沢をしめす正方錐(サイコロの両端がピラミッド状に尖っている)結
晶が松茸水晶の根元に成長した標本を得た。
産 状 | 採集標本 | 備考 | 全 体 | 拡 大 | (正常) ジルコン 【ZIRCON】 |
(4) 鋭錐石【ANATASE :TiO2】
(5) 板チタン石【BROOKITE :TiO2】
共にチタン鉱物で組成は全く同じだが、鋭錐石は正方、板チタン石は斜方と結晶系
が違う、いわゆる”同質異像”関係にあるのは承知の通りである。
鋭錐石は、黒鋼色、金属光沢で、鋭く尖った両錐形の結晶で、いくつも結晶が連なっ
て成長(反復双晶)し、ところどころにくびれがある。また、長軸方向と直角方向に条線
が観察できる。
板チタン石は、無色〜黄褐色透明のものから真っ黒不透明のものが観察できた。
八角薄板状で、表面に一方向に条線が見られる。
真っ黒いものは、針鉄鉱(褐鉄鉱)で覆われているだけで、蓚酸などでクリーニング
すれば本来の輝きと透明性を回復できるはずである。
これらのチタン鉱物は、水晶の表面や内包物(インクルージョン)として観察できる。
中には、鋭錐石と板チタン石が仲良く並んでいる標本も得られたが、チタン鉱物御三家
の残り1つ、「ルチル【RUTILE:TiO2】」は発見できなかった。
産 状 | 採集標本 | 備考 | 全 体 | 拡 大 | 鋭錐石 【ANATASE】 | 板チタン石 【BROOKITE】 | 八角板状 |
(6) 褐鉄鉱/針鉄鉱【limonite/GOETHITE:FeOOH】
茶褐色の”芋状”をした団塊で晶洞の中に産する。割れた内部には、腎臓状の集合
が見られ、鉄分を含んだ水から生成したことがわかる。薄い膜が幾重にも重なって
いるため、虹色の”干渉色”を示す部分もある。
2007年GWのミネラルウオッチングで大阪のOさんが同様なものを採集し、某所で
『レインボー褐鉄鉱』と鑑定された、とメールをいただいた。
(7) 磁硫鉄鉱【PYRRHOTITE:Fe1-xS】
六角板状結晶が積み重なった形で産するが、この鉱物は錆びやすいため、針鉄鉱
に変化してしまっている。
(2) 今回、各種の希元素鉱物を母岩付で採集でき、岐阜県苗木地方の苗木石とは違った
良さを再認識した。
愛知県の石友・KNさんや埼玉県の石友・ASさんが”がま(晶洞)出し”にこだわる理由
も理解できた。
(3) 今回、女性や子供でも比較的簡単にアプローチできるルートを確定し、楽しめる産地を
キープしてきたので、ここも次回のミネラルウオッチングの候補地の1つである。