これらのページを読んだり、既に案内した石友に案内されたりして、大勢の
2007年11月に入って未だ旬日(10日間)も経っていないが、石友を案内したり、
@ 茨城県・Kさん(初心者)を「大株沢」に案内
黒平産地の近況は以下の通りである。
今回の「新産地」探索行では、黒平集落の皆さんから、貴重な情報と現物を
* 巨晶:一般的には”大きな結晶”のことだが、私の場合、最小の大きさは
(1) 苗木石/変種ジルコン/ジルコン【Naegite/Altered Zircon/ZIRCON :ZrSiO4】
苗木石(変種ジルコン)
(2) フェルグソン石【FERGUSONITE-(Y) :YNbO4】
これらの希元素鉱物を伴うブロックから、「タレン石【THALENITE:Y3Si3O10(OH)】」
【後日談】
(3) 水晶/石英【QUARTZ:SiO2】
@ 松茸水晶
A 平行連晶
(4) 微斜長石【MICROCLINE:KAlSi3O8】
(5) チタン鉱物
@ 鋭錐石【ANATASE :TiO2】
A ルチル(金紅石)【RUTILE :TiO2】
『 守 破 離 』
(2) 愛知県のKW氏に、航空写真を使って、”ガレ場をしらみ潰し”に踏破する作戦
今回、希元素鉱物を採集した長石がついた晶洞壁は、2年ほど前に「苗木石」を
(3) 石友・Mさんとの探査行で、黒平集落の方々から、水晶産地の情報を聞いた。
@ 「バッタリ鉱山」と「水晶峠」の関係と現物
など、などの現物と情報を得ることができた。
これらの情報を元に、次なる探査行を計画している。
(4) この時期、黒平周辺は”紅葉真っ盛り”で、青空の下、歩き回っているだけでも
『 奥山の紅葉踏み分け鳴く鹿の
柄にもなく、古歌が思い出される。
( Big , Beautiful QUARTZ from Mukouyama Mine , Kurobera Town
Kofu City , Yamanashi Pref. )
( Smokey QUARTZ from Kurobera , Kofu City , Yamanashi Pref. )
人々がこれらの産地を訪れているようだ。
( 訪れるたびに、露頭の形が変わっている )
新産地の探索で、既に3回黒平地区を訪れた。
A 石友・Mさんと「新産地」探索
B 愛知県の石友・KW氏、その友人・T氏と△△△探査・採集
@ 「入山禁止」などの表示や縄張りは全て撤去されている。
( キノコの時期のみ入山禁止だった、らしい )
黒平集落の何人かの人たちと話す機会があったが、皆さん好意的だった。
( 人によって、かも知れない )
ただ、12月に入ると林道で通行止めになる箇所がある。
A 10月末の台風20号の大雨の影響で、ガレ場、沢筋が荒れている。
おかげで、表面採集で”巨晶”、”美晶”が拾えた。
( 同行したKW氏も、6cmほどの透明感ある煙水晶を沢筋の表面で拾い
”ごっつあん”状態で、『台風などの後には回ってみなきゃ・・・・・・』 )
B ポイントに当たれば、「水晶」「長石」「希元素鉱物」などが採集できる。
Kさん、Tさんも「ガマ(晶洞)」を開け、直接採集
いくつか頂いた。同行していただいた石友の皆さんには、教えていただくこと
も多かった。皆様に厚く御礼申し上げます。
( 2007年11月 採集 同月 雲母に伴う苗木石とチタン鉱物追加)
2. 産地
黒平について、多くの情報があるので、詳細は割愛する。一口に”黒平”と言っても、
昇仙峡の先から長野県との県境「金峰山」までの広大な範囲にまたがっている。
ペグマタイト鉱物が採れるポイントは、”スポラディック(sporadic:散在する)で、
事前に産地情報を調べてから行かないと、”手ぶら”で帰ることになりかねない。
産地 同行者 説 明 備 考
大株沢 茨城県・Kさん
小さい「ガマ(晶洞)」なら、
ほぼ確実に開けられるので
初めての人を案内
「大株沢」は全長約2km
流域面積約4km2新産地 石友・Mさん
2004年に開拓し、そのまま
になっていた産地を詳しく
探査
黒平集落での聞き込みも
併せて実施△△△ 石友・KW氏
T氏
どん詰まり(源流部)まで探査
した事がなかったので、今回
KW氏が”Google Earth”の写真と
GPSを持参し、”科学的”探査
私が今まで採集していたポイント
以外ではペグマタイト鉱物が
見られなかった
(”勘と経験”が当たっていた?)
3. 産状と採集方法
水晶や長石そして希元素鉱物などのペグマタイト鉱物は、ペグマタイトの晶洞
(Pocket)とその周辺の石英、長石帯にある。
”ガレ場”の真砂や”地山”の上に落ちている水晶、長石の破片や微晶を手がかり
にして、上に登り、崖の表面を良く観察したり、積もっている真砂や表土を取り除き、
ペグマタイト部分を探す。
晶洞が崩落して、水晶などのペグマタイト鉱物が真砂の上や沢筋に落ちている
こともあり、今回のように台風通過直後などには、運が良ければ、表面採集でも巨晶*
美晶や興味深い標本を採集できることもある。
産地によって変えている。
黒平地区では、10cm以上を指す。
ガレ場 晶洞を掘るKさん”お初ガマ”
産状と採集方法
4. 産出鉱物
この3回の採集・探査行で採集できたのは、@希元素鉱物A水晶B長石、そして
Cチタン鉱物である。
以下、私の興味が深いものから、順に紹介する。
鮮緑色〜褐色、油脂〜ガラス光沢をしめす、頭の尖った短柱状の結晶で
典型的な「苗木石」【Naegite :(Zr,Hf,Y,etc)(Si,Nb,Ta)O4】である。
下の写真の標本は、カリ長石(微斜長石)の結晶の上に結晶が成長しているが
周辺の長石に”ハロ【Halo:放射性色暈(しきうん)】”は見られない。
この標本に隣接した部分から、違った産状の「苗木石」が採集できた。
@ 黒雲母に挟まれたもの( 教科書通り? )
A 文象花崗岩に接する長石の中に粒状で、フェルグソン石を伴う。弱い
”ハロ”が見られる。
全体 拡大
微斜長石の上に結晶
雲母に伴う【産状@】
黄褐色〜黒色で先端の尖った細柱状結晶として文象花崗岩に接する長石の
中に放射状に集合して産する。隣接する長石に目立った”ハロ”は見られない。
全体 拡大
フェルグソン石
と思われる標本を得て、只今鑑定中である。
どうやら、「タレン石」では、なさそうだ。残念だが・・・・・・・・・。
△△△で産出する水晶は、透明水晶、透明感のある煙水晶から部分的に白
濁した水晶まで色の違いや、平行連晶とその一種の松茸水晶など形の違うもの
が楽しめる。
どちらの水晶も、表面に反復成長の跡(条線の大きなもの)が見られ、
”ジャカレー(鰐:ワニ)水晶”の様相を示している。
煙【長さ128mm】 透明【長さ75mm】
松茸水晶
約20本の群生する水晶の錐面(柱面)が”全て平行”になっているのに
は、益富先生ならずとも、”不思議さ”を感じる。
平行連晶【横80mm】
△△△としては、珍しい細柱状結晶で、「バベノ双晶」である。
採集品 結晶図【「鉱物」から引用】
微斜長石【バベノ双晶】
△△△の直線距離で約2km離れた場所で、チタン鉱物を採集している。今回の
ポイントでも、微小なものだが2種のチタン鉱物を確認した。
赤みがかった黒、金属〜ガラス光沢、8面体(正方錐)で、長軸と直角方向に
条線がある特徴的な結晶として、雲母にサンドイッチされた形で長石の上に見ら
れる。
採集品 結晶図
【”System of Mineralogy ”から引用】
鋭錐石
真っ黒い金属光沢、細柱状結晶で、雲母に挟まれ、長石の上に、鋭錐石と共
に産出した。
ルチル(金紅石)
5. おわりに
(1) 茨城県・Kさんは、黒平のようなペグマタイト産地での採集が初めて、とのことで
どのような場所を、どのような採集道具を使って、どのように掘るのか、私のやり
方が参考になった、とお礼のメールをいただいた。
を教えていただいたのは、5年ほど前だった。最近、KW氏から、”Google Earth”の
存在を教えていただき、インストールしたのは、2007年8月ごろだった。
採集したものの片割れだった。
( 2年ほど前、希元素鉱物が付いていると思わず、大割りした片割れが真砂の
中に埋もれてしまっていたのが、台風20号の豪雨で再び姿を現した )
これを最初に発見したのはT氏だったが、長石としての標本価値が少ないので
私に現地で譲ってくれ、小割りして、希元素鉱物を発見した。
普段、60歳代の人を見かけることが少ない老齢化が進んだ過疎の集落だが、
この日は「黒戸奈神社」の神事があったらしく、5、6人の私と同年代の人たちに
会うことができた。
A 10年ほど前に紫水晶産地として、老婦人から聞いた地名■■■の場所
老婦人の記憶違いや私の聞き間違いを懸念したが、■■■の地名と
場所は、今回お聞きした、3人が3人とも知っていた。
B 「紅石英(紫水晶?)」の現物と産地
緑水晶【バッタリ鉱山産】 紅石英(紫水晶?)
【結晶面あり】
入手標本
気持ちが清々する。( 採れると、なお更気分が良い )
時折、鹿が伴侶を求めて鳴く声が遠くから聞こえる。
声聞くときぞ秋は悲しき 』 (猿丸太夫) 「古今集」
暮色迫る 紅葉
黒平の秋
6. 参考文献
1) Edward S. Dana: A System of Mineralogy 6th Edition
John Wiley & Sons, INC ,1920年
2) 長島 乙吉・弘三:日本希元素鉱物,日本砿物趣味の会,1960年
3) 山梨県・山梨県地質図編纂委員会編:山梨県地質誌 山梨県地質図説明書
同委員会,昭和45年
4) 益富 壽之助:鉱物 −やさしい鉱物学 -,保育社,昭和60年
5) 中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年
6) 松原 聡:日本の鉱物,滑w習研究社,2003年
7) 加藤 昭:鉱物種一覧,小室宝飾,2005年
8) 松原 聡、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年