山梨県甲府市黒平の電気石

山梨県甲府市黒平の電気石

1.初めに

伊豆での採集会に参加できなかったAさん親子からから、黒平を案内して
欲しいとのメールが届いた。前回黒平で、晶洞を次々と開けた、幸運児の
Mさんにも声を掛け、4人での採集となった。
3月に入り、春の到来を期待していたが、今年の冬は例年になく厳しく
この日は天候が崩れるとの予報で、案の定、雪が降り始め、やがて氷雨に変り
寒さに凍えながらの採集で、小さな晶洞が2、3あっただけでした。
採集風景
それでも、私にとっては、楽しいひと時を過ごすことができた。
このように、当たり外れが多いのが”黒平の魅力”でもあるのです。
(2003年3月採集)

2.産地

黒平に行くには、次の3つのルートがあります。
@甲府・韮崎方面から昇仙峡の奥を黒平の集落に向かう。
A焼山峠からクリスタルラインで黒平の集落に向かう。
B増富鉱山方面からクリスタルラインで木賊峠を越える。
名古屋方面の人には@、東京方面の人にはAが便利が良いでしょう。
ただ、@、Aは、冬の間クリスタルラインが通行止めですので使えません。
@のコースの場合、荒川ダムの脇を通る道路は、土砂崩れが起こりやすく
通行止めになっている事が多く、「燕岩岩脈」を通ったほうが無難です。
(今回も通行止めだったが、この夏、長野県のSさんが、黒平に行ったときは
逆だったそうなので、道路脇の「通行止」の表示を良く見ないと、とんだロスを
しかねません。)
産地は、「御岳五郎沢」「大株沢」を初めとする、花崗岩が真砂化して崩落
して草木が生えていない個所(ガレ場)が中心ですが、花崗岩露頭の晶洞からも
採集できることがあります。

3.産状と採集方法

水晶などのペグマタイト鉱物は晶洞(Pocket)部分にあります。真砂の上に
落ちている水晶や長石の破片や微晶を手がかりに上に登り、崖の表面を良く
観察したり、積もっている真砂を取り除き、ペグマタイト部分を探します。
晶洞が崩落して、水晶などのペグマタイト鉱物が真砂の上や沢筋に落ちている
こともあり、運が良ければ、表面採集でも美晶を採集できることもあります。
【ポイント@】
以前、Mさんが晶洞を開けたことがある尾根筋を登りながら、露出した真砂や花崗岩の
露頭の周辺をよく観察する。
花崗岩の転石に晶洞があり、針金製の探針で掻き出して見ると小さな水晶と
長石が出てきた。
黒平のガマ(晶洞)
Aさん親子は、ペグマタイト脈を叩くが、晶洞性でないため水晶や長石の自形
結晶は採れなかった。
【ポイントA】
頂上近くまで登り、今度は沢を下りながら、ガレ場や露頭を探索する。
ガレの表面に、水晶・長石からなる晶洞が半分だけ残ったものを発見し
Aさんと採集した。
ガレ場に残る晶洞の一部
Mさんは、ガレの表面で水晶、電気石、希元素鉱物らしきものを採集するが
いつもの元気なし。
下る途中、滝のように落ち込んでいて、しかも表面には氷が張っている岩壁に
行く手を遮られ、仕方なく、ブッシュの中を迂回して進む。
昼食を挟んで6時間の採集でしたが、凍えそうな氷雨に耐え切れず、3時過ぎに
引き上げた。

4.産出鉱物

ここで採集できる主な鉱物は、各種の水晶、長石や電気石などが一般的です。
天河石、トパーズやアクアマリーンなどは、ごく限られたポイントでしか採集出来
ません。
(1)電気石【Schorl:(Na,Ca)(Mg,Fe)B3Al3(Al3Si6O27)(O,OH)4】
黒平で採集できる電気石は、真黒い鉄電気石で、塊状・針状やその束状集合体・柱状で 産出することもあります。
電気石【柱面不明瞭】
(2)水晶トッコ【Cluster of Rock Crystal and Orthoclase:SiO2/KAlSi3O8】
黒平では長石の上に水晶が成長したトッコ(クラスター)が採集できます。
ここの水晶は、放射能か微量成分の影響で煙水晶かかったものが多い。
黒平のものは蛭川村のものに比べ、透明度が高く、気高い美しさがあると思って
います。(単なる、身贔屓かも知れませんが・・・・・・・・)
水晶トッコ
(3)このほか、カリ長石は単晶と各種の双晶が採集できます。

5.おわりに

(1)黒平では、大きさを問わなければ、今でも水晶や長石を確実に採れます。
しかし、冒頭にも書いたように、ある程度の経験を重ねた人だと、”運”に
左右される要素が大きく、当たり外れが大きいのは、覚悟しないとダメでしょう。
産地のガレ場は常に崩落し続けていますので、ときどき訪れてみると、たまには
「幸運の女神」が微笑むこともあるでしょう。
(2)黒平には、見下ろすと足がすくむような険しい絶壁もあり、落石や
滑落事故など起こさないよう、安全確保に充分注意しましょう。

6.参考文献

1)柴田秀賢、須藤俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
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