山梨県甲府市黒平の松茸水晶

山梨県甲府市黒平の松茸水晶

1.初めに

八幡山水晶採集のときに、参加者のAさんから、近いうちに黒平を案内して
欲しいと言われていた。
中津川鉱物博物館の「田上地方の鉱物展」で中澤晶洞を見て、晶洞の魅力に
取り付かれ、ガマが開けられる可能性のある黒平に行くことにした。
メンバは、横浜のMさん、埼玉のAさんとその友人のASさんの4人。
今回は、私を除き、皆、青年男子なので、2002年6月の採集会よりも難度の高い
中級者コースで、私が過去に晶洞を開けた事があるポイント3箇所にした。
天気予報は雨だったが、焼山峠を過ぎると雪が降り始め、悪コンディション
でしたが、この日は、”Mさんのラッキー・ディ”で、行く先々で晶洞を開け
約4cmの松茸水晶単晶と母岩付き、10cm近いカリ長石を出すなど
大当たりでした。
ほかの参加者もそのおこぼれにあずかり、松茸水晶、長石、水晶は
全員が手にしたものの、晶洞を開けられなかった人は、無念そうでした。
このように、当たり外れが多いのが”黒平の魅力”でもあるのです。
(2002年11月採集)

2.産地

黒平に行くには、次の3つのルートがあります。
@甲府・韮崎方面から昇仙峡の奥を黒平の集落に向かう。
A焼山峠からクリスタルラインで黒平の集落に向かう。
B増富鉱山方面からクリスタルラインで木賊峠を越える。
名古屋方面の人には@、東京方面の人にはAが便利が良いでしょう。
@のコースの場合、荒川ダムの脇を通る道路は、土砂崩れが起こりやすく
通行止めになっている事が多く、「燕岩岩脈」を通ったほうが無難です。
(今回も通行止めだったが、この夏、長野県のSさんが、黒平に行ったときは
逆だったそうなので、道路脇の「通行止」の表示を良く見ないと、とんだロスを
しかねません。)
産地は、「御岳五郎沢」を初めとする、花崗岩が真砂化して崩落して草木が
生えていない個所(ガレ場)です。
ガレ場

3.産状と採集方法

水晶などのペグマタイト鉱物は晶洞(Pocket)部分にあります。真砂の上に
落ちている水晶や長石の破片や微晶を手がかりに上に登り、崖の表面を良く
観察したり、積もっている真砂を取り除き、ペグマタイト部分を探します。
晶洞が崩落して、水晶などのペグマタイト鉱物が真砂の上や沢筋に落ちている
こともあり、運が良ければ、表面採集でも美晶を採集できることもあります。
【ポイント@】
最初のガレ場の下の真砂の上で、私が1cm余りの松茸水晶を発見した。
それぞれ、思い思いの場所で晶洞を探すが、なかなかでない。次のポイントへ
移動しようとして荷物をまとめ出した矢先、Mさんが”晶洞ですよ”と言う。
駆け寄って見ると、水晶、長石が出ている。赤茶色のガマ粘土を拭ってみると
松茸水晶だ。母岩付きもある!!
Aさんもやる気になって、その流れを掘るが出ない。結局次のポイントへ向う。
【ポイントA】
ガレを登り探すが芳しくないので、隣のガレ場に移ると、私が小さな晶洞で
電気石入り水晶の頭なしを発見。やがて、Mさんが、またまた”晶洞ですよ”
との声。近づいて見ると、先ほどより大き目の晶洞で水晶、長石が30本以上
出ている。
車に戻って、Mさんの採集品の分配のあと、最後のポイントへ向かう。
【ポイントB】
ここでは、誰も晶洞を開けられず、私とMさんは産地探査に変更し
急な斜面を木の根、岩角にすがって登り、尾根道に出て、元の所まで一周する。
こんな所が、というところまで掘り込まれた跡があり、ビックリするやら
感心するやら。
採集風景【白いのは積雪】

4.産出鉱物

ここで採集できる主な鉱物は、各種の水晶、長石や電気石などが一般的です。
天河石、トパーズやアクアマリーンなどは、ごく限られたポイントでしか採集出来
ません。
水晶には、放射能か微量成分の影響で煙水晶かかったものや「松茸水晶」がある。
(1)松茸(冠)水晶【Rock Crystal Mushroom Type:SiO2】
平行連晶(Parallel Growth)の一種で、私が採集した写真右のものは、2本の
松茸水晶が平行連晶をなす珍しいもの(本人は、そう思っている)です。
松茸水晶は、絹雲母(セリサイト)化したガマ粘土に出るようだというのが
Mさんの見解です。

     採集・撮影Mさん       採集・撮影中川
(2)電気石入り水晶【Rock Crystal including Schorl:SiO2】
針状結晶の先端が枝分かれして繊維状になった鉄電気石を内包する水晶があった。
黒平では、電気石が単晶として、あるいは束状集合体で産出することもあります。
電気石入り水晶
(3)カリ長石【Orthclase/Microcline:KAlSi3O8】
柱状、平板状結晶で産出する。双晶をなすことも珍しくない。
双晶には、カールスバット式(Carlsbad)、マネバッハ式(Manebach)、バベノ式(Baveno)が
知られており、写真のものは、カールスバット式とマネバッハ式が共存します。
文献にもある通り、バベノ式は希にしかありません。
カールスバット/マネバッハ式双晶
(4)このほか、天河石をMさんが採集した。

5.おわりに

(1)黒平では、今でもそこそこ水晶や長石は採れます。冒頭にも書いたように
当たり外れが大きいのは、覚悟しないとダメでしょう。しかし、産地は広いのでじっくり
攻めてみれば、「幸運の女神」が微笑むこともあるでしょう
(2)黒平には、険しい絶壁もあり、落石や滑落事故など起こさないよう、安全確保に
充分注意しましょう。今回、私の落とした石でAさんに打撲傷を負わせてしまいました。
申し訳ありません。

6.参考文献

1)柴田秀賢、須藤俊男:原色鉱物岩石検索図鑑,北隆館,昭和48年
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