徳島県高越のルチル(金紅石)

徳島県高越のルチル(金紅石)

1.初めに

 我々夫婦の結婚30周年・「真珠婚」を記念する鉱物採集兼観光旅行として
兵庫県の石友・Nさんご夫妻に四国・中国の産地を案内していただいた。
 明石海峡大橋を渡り、淡路島を過ぎ、鳴門の渦潮を見ながら、四国入り。
四国に入ると、そこは徳島県。徳島県の鉱物といえば、古い鉱物図鑑には
(最新の松原博士の「日本の鉱物」にも)必ずと言って良いほど、「眉山の
金紅石(ルチル)」が掲載してあります。

   眉山ルチル【松原聰「日本の鉱物」より】

 「眉山」での採集は難しいが、同じ徳島県の高越(こうつ)でルチルが
採集できるとの貴重な情報をいただき、案内していただいた。
ここで、念願のルチルを採集でき、幸先の良いスタートを切った。
 案内いただいたNさんご夫妻のお陰と、厚く御礼申し上げます。
(2003年11月採集)

2. 産地

 この産地は、現在研究中の某大学から、調査終了後に公開されると思います。

3. 産状と採集方法

 ここ高越〜眉山地域は、三波川変成帯で、今まで余り訪れたことがない産状で
最初の30分は、どこを探せば良いのか、皆目見当がつかず、産地をウロウロしていた。
 多分、図鑑にある「眉山」と同じ産状だろうと思い、山勘で探すことになった。
 後日、自宅で、故宮久先生の「鉱物採集の旅 四国・瀬戸内編」の「眉山」の章を
読むと、『・・・・かつては、ルチルの大きな結晶やチタン鉄鉱なども・・・・・
ルチルは、暗赤色柱状で・・・・・・・の中にありますから・・・・・・』
と、
私の”山勘”が違っていなかったことを再確認した。
 露頭を丹念に調べながら、ルチルを含む部分を探し、ハンマとタガネで掻きとります。

   高越(こおつ)のルチル産地

4. 採集鉱物

(1)ルチル(金紅石)【Rutile:TiO2)】
   金紅石は、鋭錐石、板チタン石と同じ化学成分をもつ同質異像の関係にある。
  ”赤褐色、半透明、特有の条線がある柱状結晶”で産出します。

   ルチル

   (2)チタン鉄鉱【Ilmenite:FeTiO3】
   白銀色の箔状で産出する。外観は、赤鉄鉱(鏡鉄鉱)と似ているが、チタン鉄鉱の
  小片は、強い磁石に吸引するので、赤鉄鉱と区別できる。

   チタン鉄鉱

  (3)鉄礬ザクロ石【Almandine:Fe3Al2(SiO4)3】
   赤褐色の結晶が片岩の中に点在しています。結晶は最大でも3mm程度で
  変成岩の中のザクロ石の宿命か、角は丸みを帯び、ひび割れも多く、美しいとは   言い難い。

   ザクロ石

  (4)角閃石【Hornblende:Ca2(Mg,Fe)4Al(Si7Al)O22(OH,F)2】
   角閃石片岩の晶洞部と思われる箇所に、灰褐色、長〜短柱状をなしてザクロ石を伴って
  産出する。結晶が褶曲したものがあり、結晶生成後に、大きな地殻変動の影響を受けた
  事を物語っている。劈開が完全で、その面は、真珠光沢を帯びている。
   この角閃石片岩の中にも、ルチルの結晶が見られる。

   角閃石

 

5.おわりに

(1)四国での鉱物採集は初めてでしたが、Nさんご夫妻の案内の御蔭で、念願の
   ”徳島県のルチル”を採集できた。
   予想以上の成果に大満足です。
   案内していただいたNさんご夫妻に改めて感謝申し上げます。
(2)この近くには、徳島県で最大と言われた、銅を主体に採掘した「高越鉱山」があった。
   そのズリでは、今でも黄鉄鉱、黄銅鉱、磁鉄鉱そして赤鉄鉱などが採集できますが
   閉山してかなりの年月が経ち、新鮮なものは少ないようです。

   高越鉱山

 

6.参考文献

1)宮久 三千年・皆川 鉄雄:鉱物採集の旅 四国・瀬戸内編,築地書館,1975年
2)徳島県地学のガイド編集委員会編:徳島県地学のガイド,コロナ社,2001年
3)松原 聰:日本の鉱物,学研,2003年
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