滋賀県琵琶湖北岸小ツ組の鉱物

滋賀県琵琶湖北岸小ツ組の鉱物

1.初めに

 「日本の鉱物」を見ると、滋賀県浅井町小ツ組産の「日本式双晶」と「灰鉄柘榴石」が
掲載されている。
 妻の希望の京都観光の帰途、琵琶湖畔にある小ツ組を訪れる予定と兵庫県の石友Nさんに
お知らせしたところ、ご一緒しましょうとのメールがあった。
 日時を決めて小ツ組で落ち合い、短い時間であったが、Nさんご夫妻と娘さんのNさんを
交え、楽しいひと時を過ごすことができた。

  Nさんご一家

 ”成果は?”と問われると、小さな水晶と灰鉄柘榴石の不完全結晶だけでしたが
約10年ぶりに産地の現状を確認できたのは、大きな収穫であった。

 【ダイジェスト版】を見た、私のHPの愛読者Sさんから、”何と言う偶然!”と題する
採集品の写真付きメールを頂き、驚きました。
『 たった今ホームページを拝見し、余りの偶然にびっくりしています。
 私たちもつい先日(22日の月曜)に小津組へ採集に出かけたのです。・・・・・
  小津組では小さいながら松茸水晶を息子がGET。あとは1cmほどの ハーキマーと
 みまごうばかりの水晶などが数個。やはり夏草におおわれて春に訪れたときとはまるで
 感じがちがっていましたが、だれかが歩いたばかりの様だったのは、前日にいらした
 からなのですね。』

 ”It's a small World !!"

(2003年9月採集)

2.産地

  琵琶湖北岸、滋賀県浅井町小ツ組にあります。産地までの途中の坂道から琵琶湖を
 見下ろすことができます。
  ”小ツ組”は、”おつくみ”と発音するものと思い込んでいましたが、”木ツ組”と
 書かれた文献があるように、”こつくみ”と読むようです。
  ここは、福井県の「太陽ガーネット」と称する会社が、研磨剤につかう目的で柘榴石を
 露天掘りで採掘したが、1970年ころには、閉山していたようです。

3.産状と採集方法

  小ツ組は、輝緑凝集岩が花崗岩による熱変成を受けたスカルン鉱床とされていますが
 露頭やズリ石に花崗岩は見られません。露頭では、緑色岩に石英脈が網目状に走って
 いて、その近傍に塊状柘榴石が観察できます。

     
        露頭              採集風景
               小ツ組

  ズリと露頭は、夏草に覆われ、10年前の面影が殆ど残っていない。ひとまず、露頭に
 取り付いて、石英脈を追う。日本式双晶は、石英脈の晶洞部分に来るとされています。
  しかし、細い石英脈で、小さな水晶しか出ないので、後半は、ズリで柘榴石の分離結晶や
 石英脈の入った転石探しに転向。しかし、土砂に埋まっていて、表面採集は難しい。
  約10年前に訪れたときには、ズリの土砂をバケツで運び、沢でフルイ掛けしたほどです。

4.採集鉱物

(1)水晶【Rock Crystal:SiO2】
   Sさんからのメールにもあった”松茸水晶”はじめ、”子持ち””山入り”など
  変わった形の水晶が採集できます。しかし、いずれも1cmくらいの小さなものです。

     
       松茸【山入り】           並行連晶
                小ツ組産水晶

(2)灰鉄ザクロ石【Andradite:CaFe2(SiO4)3】
   ここのザクロ石は、赤褐色〜緑色で、偏菱24面体と斜方12面体があるとされていますが
  四周完全な結晶は見当たらず、採集できたのは、複雑に結晶が入り組んだ赤褐色のもの
  だけです。

  灰鉄ザクロ石

5. おわりに

(1)私達が訪れたとき、父親に引率された中学生の一行が採集していました。
   その割りに、荒れていないのは、訪れる人が稀なのでしょう。
(2)1時間半ほど粘ったが目ぼしいものを採集できず、過去の産地になってしまった
   感があります。
    このまま引き下がるのも無念で、草がない来春にリベンジを、と考えています。

6.参考文献

1)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂,1994年
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