石川県小松市立博物館の鉱物

石川県小松市立博物館の鉱物

1.初めに

 石川県小松市にあったとされる、金平金山について、インターネットを
検索して、石川県小松市立博物館には、”金平鉱山の自然金”が収蔵されている
ことを知り、ミニ採集会を早めに抜け出し、妻と博物館に向かった。
 しかし、この博物館の自然部門は化石がメインで、鉱物資料で展示されて
いるのは、「菩提の珪化木」だけであった。
 何としても、”金平鉱山の自然金”を見たいと、博物館の方にお願いし
収蔵庫の中に入らせていただいたが、自然金は見せていただけなかった。
 それでも、尾小屋鉱山産の一抱えもある重晶石の群晶など、貴重な資料を
見せていただき、小松市を後にした。
入館料:大人 300円(高校生以下、70歳以上無料)
休館日:月曜日
(2003年7月見学)

2. 場所

 小松市役所近く、芦城(ろじょう)公園の一角に、本陣記念美術館などに
隣接しています。
  小松市立博物館

3. 展示内容

 この博物館は、1階が企画展示、2階が人文展示、3階が自然展示になって
います。
 3.1 金平金山展示
   2階の一角に、「金平金山」の展示コーナがあり、次のような品々が
   展示してあります。
   @金山の盛時の様子を描いた「金平金山絵巻」
   A徳川家康から与えられた採掘免許状「東照大権現御免諸国金銀山定法式之事」
   B金山で使った「金平金山用具」

(1)金平金山の歴史と産状
  「石川縣地質鑛産誌」によれば、「金平金山」は、200有余年前(昭和28年当時)に
   発見された当時は、微々たる産出量だったが、安永元年(1772年)、軽海組
   (かるみぐみ)25ケ村支配の十村(加賀藩が農村支配のために任命した村方の
   最高役人の家柄)、7代・石黒源次なるものが採掘に従事し金産額が増加し
   藩主前田侯のお手前山となり、その後、文政10年(1827年)石黒源之丞の
   自分稼行山となり、文久3年(1863年)再びお手前山となるなど、めまぐるしく
   所有者が移り変わった。
    慶応2年1866年)金平村民の願いにより、各村民之を稼行するを許される。
   昭和9年から、日本鉱業(株)の所有となり、銅・亜鉛を採掘した。

    地質は、第三紀の石英粗面岩及び角蛮(?)岩状凝灰岩層よりなる。鉱床は
   含金石英脈で、大略南北に断続し、南より「龍門」「三笠山」「カルザキ」
   「玉ノ井」「姥谷」の5つに分けられた。
    鉱石は、肉眼でみえる自然金あるいは細粉状金を珪石の中に含み、珪石は
   小型の晶洞若しくは裂罅に富み、黄鉄鉱や閃亜鉛鉱を伴う。酸化した鉄錆の
   多いところに金は偏在する。三笠山産の上鉱の金含有量3.34%、銀0.007%で
   あった。
(2)「金平金山絵巻」
   金山開発を進めた石黒家に残る絵巻物で、天明6年(1786年)長谷川派の絵を
   学んだ矢田廣實【やた ひろつら:雅号 四如軒(しじょけん)】の手になる。
   通常”掘子(ほりこ)”と呼ばれる坑夫が、”宝利子”と美称で呼ばれ
   街の中には”傾城”と呼ばれる”赤線地帯”があるなど、金山の産金量が
   加賀・前田家にとって重要な位置を占め、賑わっていたことを示しています。
   
              金平金山絵巻
(3)「東照大権現御免諸国金銀山定法式之事」
    元和2年(1616年)に、大阪の陣の褒美として、徳川家康(のちの東照大権現)から
   金平の山師金掘師に金山を掘る権利を認めた採掘免許状である。このほかに
   金山でのしきたり、決まりについて、事細かに記されている。
    私は、古文書に詳しくありませんが、展示してある下の写真の物は、私にも
   読むことができ、新しいものだと思われます。
   
      「東照大権現御免諸国金銀山定法式之事」
(4)「金平金山用具」
    鉱石発見から製錬までの過程は、次のようで、その間にはいろいろな道具を
   使用する。
    鉱脈の存在を予想して、ゲンノウでタガネを打ち込み、土砂を崩しながら掘り
   進んでいく。金鉱を見つけるとカッサでかきだし、ザルで運んでワンカケワンに
   入れ、水で不純物を洗い流す。その後、金場(きんば)に送り、窯に入れて焼き
   細粉化する。これを根子流し(ねこながし)用の布を敷いた箱に入れて、何度も
   繰り返して洗い流す。布の上に残った砂金を水銀と共に乳鉢に入れ24時間置く。
    洗浄後、唐木綿で水銀を搾り取り、残った混在物をルツボに入れて火にかけ
   金の固形物を得る。さらに、薄く引き伸ばした鉛に包み、フイゴで加熱し金を
   得る。これは、江戸時代の灰吹き法という製錬法である。
    これら、一連の作業工程で使われる道具が、展示してあります。
   金山用具
 3.2 自然展示
   博物館のHPに掲載してある、収蔵鉱物で産地が分かる国産品のリストは、下記の
   通りです。
   金平鉱山産の自然金があります。
   明治時代の鉱物の本にある、白山の角閃石や遊泉寺の自然銅など有名産地のもの
   私が最近採集に行った、赤谷の金米糖、那殿の蛋白石(オパール)などが収蔵されて
   いるとあります。

鉱物資料目録
資料番号 資   料   名 採集地(産地)  備 考
MI32001 角閃石 白山        
MI32002 繊維石膏 珠洲市若山町中田        
MI32003 透明石膏 珠洲市若山町        
MI32006 拓榴石 富山県(水晶岳?)        
MI32007 鋼玉石 岐阜県(河合村?)        
MI32009 人形石 人形峠鉱山中津川坑        
MI32010 重晶石 尾小屋        
MI32011 マンガン鉱 北海道古平郡稲倉石鉱山        
MI32012 鶏冠石 群馬県西牧山(西牧?)鉱山        
MI32015 燐灰ウラン石 岡山県人形峠夜次坑        
MI32018 黄鉄鉱 小松市尾小屋        
MI32021 方鉛鉱 小松市尾小屋鉱山        
MI32022 黄銅鉱 尾小屋        
MI32023 水晶 尾小屋        
MI32024 正長石 岐阜県        
MI32025 煙水晶 山梨県        
MI32034 自然金 小松市金平鉱山        
MI32035 水晶 山梨県        
MI32036 水晶 山梨県        
MI32037 紫水晶 山梨県        
MI32038 斜長石 岐阜県        
MI32088 水晶 山梨県        
MI32089 瑪(瑪瑙) 那谷        
MI32090 自然銅 遊泉寺        
MI32091 黄玉 岐阜県苗木町        
MI32092 黄玉 岐阜県苗木町        
MI32093 自然砒(金米糖石) 福井県(赤谷)        
MI32094 蛭石 福島県        
MI32096 蛋白石 那谷        
MI32123 蛋白石(オパール) 那殿        
MI32157 玉髄 塩屋海岸 80019
MI32158 石英 山梨県 86086
MI32159 滑石2 愛媛県佐々連鉱山 86169
MI32161 閃亜鉛鉱2 愛媛県佐々連鉱山 86171
MI32162 硫化鉱 鉱石標本11 愛媛県佐々連鉱山 86172
MI32163 キースラーガー 鉱石プレパラート一式 愛媛県佐々連鉱山 86173
MI32164 水晶2 滝ヶ原町 95005

  しかし、3階の「自然展示」で見られる鉱物は、上記の収蔵リストにない
  ”菩提産珪化木”だけです。
   菩提産珪化木

   そこで、博物館の方に「金平鉱山産の自然金を見せて欲しい」とお願いしたが、
  収蔵庫に案内してくれましたが、見せていただけたのは、「尾小屋鉱山の重晶石」と
  「銅鉱石」だけでした。
  重晶石は、「日本の鉱物」にも掲載されていますが、これよりも結晶がシッカリし
  光沢もあり、何より一抱えもある大きさには圧倒され、これを見せていただいた
  だけでも、満足です。
  
       重晶石             黄銅鉱
            尾小屋鉱山産鉱物
4.おわりに 

(1)お目当ての「金平鉱山の自然金」は見られませんでしたが、尾小屋鉱山の「重晶石」を
   触れて見た上に、「金平金山の歴史と産状」を知ることができ、有意義な訪問でした。
(2)博物館の方は、「ここは、化石がメインで、鉱山関係は尾小屋鉱山資料館の方で」
   とのことでした。
   「金平鉱山の自然金」が、いずれかで常設展示されるのを心待ちにしています。
5.参考文献

1)石川県地方開発事務局編:石川縣地質鑛産誌,同局,昭和28年
2)小松市立博物館:総合案内,同館,平成12年
3)益富地学会館:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
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