石川県恋路海岸のセラドン石 -その2-

1. 初めに

   『2004年 鉱物採集納め -Part2- 能登・加賀の鉱物』の採集行で、初めて能登半島の
  の突端に近い恋路海岸を訪れ、目指す”ピンク色の霰石”を採集でき、この産地を再び
  訪れることはなかろうと思っていた。
   このページを読まれた、千葉の石友Mさんから次のようなご質問のメールをいただいた。

   『嘗て「静岡県河津町やんだの沸石採集」の記事を拝読致しました、「やんだ」では
   モルデン沸石に共生するセラドン石を沢山確認されたと思いますが、「恋路海岸の
   緑色霰石」とは「セラドン石が霞石に含まれた物」の事でしょうか?』

   不肖私は、"セラドン石"なるものを知らなかった。
    その後、このページを読んだ滋賀県の石友・Nさんから、岐阜県中川辺でセラドン石の
   結晶が採集できることを教えていただくと共に現物標本も恵与頂き、拙HP『中川辺の
   セラドン石その1〜その3』シリーズとなった。
    こうなると、恋路海岸のセラドン石で、中川辺のものと同じような結晶があるのではないか
   と思い、「能登・加賀の鉱物を訪ねて」の第2弾で、再び恋路海岸を訪れた。
    今回、霰石はそっちのけで、”セラドン石”を探し、”毬栗状”と”スギゴケ状”の2種類の
   セラドン石を採集できた。
    案内いただいた、石川県の石友・Yさんに御礼申し上げます。
(2005年7月採集)

2. 産地

   草下先生の「鉱物採集フィールドガイド」に詳しく紹介されていますので、割愛します。

3. 産状と採集方法

   セラドン石は、玄武岩質の堅い安山岩の気孔の内面を覆うように生成しており
  表面に丸〜楕円の凹み(気孔の残骸)が見える真っ黒い岩を砕き、採集します。
   母岩が小さいと長い間に海水がしみ込んで変質していますので、できるだけ大きな母岩を
  探して割ると良い。
   母岩は堅いのですが、”劈開”があり、一度割ってしまえば、劈開方向には比較的簡単に
  割れますが、その直角方向には、割れにくく、トリミングしていると、ハンマーの打痕だらけに
  なり、見苦しい標本になりますので、ある程度大きなまま持ち帰り、ジックリ料理したほうが
  良さそうです。
   今回、”潮の干満”を全く気にしないで訪れ、満ち潮で母岩を探せる範囲が制限されてしまった。
  広い範囲で母岩を探すには、”干潮”を狙って訪れる方が賢明でしょう。

    恋路海岸

4. 採集鉱物

(1)セラドン石【Celadonite:K(Mg,Fe!'')(Fe''',AL)Si4O10(OH)2】
   単斜晶系で、玄武岩質母岩の小さな楕円体の晶洞内壁を覆っている"青緑色"の鉱物である。
   セラドン石の結晶の形を石川県の石友・Yさんと次のように分類することにした。

   @毬栗状・・・・・・・・針状結晶が球状に集合し、”毬栗状”になっている。
   Aスギゴケ状・・・・・針状結晶が、気孔内面を覆い、まるで”青緑色のビロード”を敷き詰めたように
               見えるもの。

   今回、これらの2種類のセラドン石を採集できた。

  項目      毬栗状       スギゴケ状
標本
備考「中川辺」産のように
針状結晶が集合して
毬栗状になっているのでなく
何らかの球状鉱物の表面を覆って
いるようにも見える
針状結晶が立っている

5. おわりに

(1)桜井欽一先生は、その著書「重要鉱物肉眼鑑定法」の中で、鉱物の結晶形について
   次のように分類している。

大区分   形状         説明       備考
(単一)
結晶形
錐状
Pyramidal
鋭く尖った結晶    
柱状
Prismatic
平行する各面が等しく一方向に伸びる    
針状
Acicular
柱状または殆ど柱状に近い錘状の結晶が細くなったもの    
板状
Platy
一対の平行面が他に比し大きくなった板のようなもの厚いものを”厚板状”
薄いものを”薄板状”
更に薄いものを”葉片状”
葉片状の小さなものを”鱗状”
集合の形
外形
放射状
Radial
針状、柱状または葉片状等の
結晶が一点を中心に周囲に射出している
    
樹枝状
Dendritic
樹の枝のように分岐する    
苔状
Mossy
例えば、自然金や自然銅    
毛髪状
Filiform
または
線状
Wirely
例えば、自然銀で外人の頭髪に似る    
球状
Globular
球形
内部は、放射状や”変り玉”の如く
同心円構造をもつ
    
魚卵状
Ooolitic
小さな球状が多数集まっている    
杏仁(あんにん)状
Amygdalodial
やや扁平の球状    
葡萄状
Amygdalodial
球状体が集合し葡萄の房に似たもの    
腎臓状
Reniform
葡萄状より球が大きく扁平    
乳房状
Mammillary
球状が少し長く伸び乳房のごとき形をなす    
鍾乳状
Stalactic
つららのごとき形    
塊状
Massive
結晶形が不明で外形もはっきりしない”団塊状”は丸みを帯びた塊
粒状
Massive
塊状の小さなもの個体がさらに小さくなると”粉状”
または”砂状”
土状
Earthy
例えば、粘土    
内形粒状
Granular
細かい粒が多数集合した状態    
繊維状
Fibrous
無数の細い結晶が一方向に集合した状態    
並柱状
Columnar
柱状の結晶が多数一方向に集合した状態    
葉片状
Foliatel
または
Lamellar
薄い結晶が重なりあったもの    

   セラドン石の”毬栗状”とは、一般的には”球状”、”スギゴケ状”は文字通り”苔状”であろう。

 (2)ただ、言葉を聞いただけで思い浮かべるイメージは、人によって違い、絵や写真があれば
   それに越したことはないので、私のHPでは、ビジュアルにお伝えするように、心掛けたいと
   考えている。(ただ、スケールの入れ方が・・・・・・)

6. 参考文献

1)松原 聰:日本産鉱物種,鉱物情報,1992年
2)草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1988年
3)桜井 欽一:重要鉱物肉眼鑑定法,柁谷書院,昭和24年
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