初日、Iさんの強い希望で、「甲州市黄金沢鉱山」を案内した。この日、身延町湯之奥金
山博物館主催の「砂金掘り大会」があり、私がボランティアをしていた関係でIさんと約束の
場所で会ったのはすでに15時だった。
Iさんの狙いは当然「洋紅石」を初めとする砒酸塩鉱物だが、産地に着くころに雷が鳴り
出し、雨もポツポツ落ち始め薄暗く、ルーペを使ってのミネラル・ウオッチングにとって最悪
のコンディションだった。
それでも、Iさんはいくつか「洋紅石」らしきものを確保でき、その日の宿・湯沼鉱泉で採集
品を洗ったところ、確かな「洋紅石」がいくつかあり、満足いただけたようだ。
私の方は、「洋紅石」は全くなかったが、方鉛鉱などがきているズリ石を叩くと、真っ黒い
閃亜鉛鉱の中に、『薄板状の自然金』があった。”黄金沢”、の名の通り、金を目的に採掘
したのだろうが、この産地の自然金を今まで目にしたことがなかっただけに、大満足である。
今回も、『情け(親切)は、人の為ならず』採集行、となり、同行いただいたIさんに厚く御礼
申し上げる。
( 2009年8月採集 )
黄金沢鉱山も鈴庫鉱山や朝日鉱山と同時期に試掘や小規模な採掘が行われたようだ。
付近にコンクリートで塗り固められたり、崩落した坑道跡が見られて、その前にズリが残さ
れている。
「洋紅石」で有名になったズリは、廃石の量も少なく、試掘程度で終わったものと考え
られる。
山土や落ち葉に埋もれたズリ石を掘り出して、割り、割れ口をルーペで観察すると
”カーマイン・レッド”の「洋紅石」のほか、「ミメット鉱」「ビューダン石」などの砒酸塩2次
鉱物や「車骨鉱」、「毛鉱」などの硫化鉱物が観察できることがある。ただ、この産地は
東京から近いこともあり、大勢が訪れ、叩くような大きなズリ石はほとんどない。
鉱 物 名 (英語名) | 化学式 | 説 明 | 採 集 標 本 | 備 考 | 自然金 (GOLD) | Au |
真っ黒い「鉄閃亜鉛鉱」の 塊の中に、薄板状の 自然金がいく筋か観察 できる。 |
拡大
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「閃亜鉛鉱に伴う自然金」 といえば、埼玉県秩父鉱山 大黒坑のものが有名だ。
秩父鉱山から直線距離で |
山梨県のこの場所に、金を掘った鉱山があったことを実感でき、貴重な標本を手に
することができ、同行いただいたIさんに感謝している。
(2) 大弛峠越え
大弛峠を越えてこの日の宿・長野県湯沼鉱泉に向った。山梨県側は全面舗装され
快適な山岳ドライブが楽しめるのだが、長野県側の悪路に、慎重な運転のIさんは
苦戦したようだ。
( 私の車は車高が高く、ほとんど路面を気にしないで走れる )
湯沼鉱泉に着いたのは暗くなりかけた19時だった。社長は「来ないかと思った」、と
言いながら、お姐さんそして”モコモコ”の川上犬と共に歓迎してくれた。
標高1,300m余り、クーラーがいらない湯沼鉱泉で、お姐さんの美味しい料理をビー
ルを飲みながらいただくと、この日の下界の暑さと疲れを忘れることができた。
翌日の、「甲武信鉱山案内記」は、近々報告したい。