茨城県常陸太田市小妻の希元素鉱物

       茨城県常陸太田市小妻の希元素鉱物

1. 初めに

   ひたちなか市でのコンサルタント業も残り2週間となった。ここにいる間に訪れて
  おきたいもう1つの産地が「常陸太田市小妻」だった。

   今から7、8年前、私が最初にひたちなか市に単身赴任していたとき、茨城県の
  石友に小妻の電気石産地を教えてもらったことがあった。ここで採集できたのは
  ボロボロの鉄電気石がほとんどで、ピカピカのものは極めて少なかった。
   それでも比較的ピカピカした柱面が見られるものを選んで鉱物同志会のバザー
  だったか、無料配布に数袋提供したことがあった。提供して、間もなく、同志会の
  ベテランのK氏とW氏が、『 あの電気石には、希元素鉱物の結晶が付いているから
  引き上げて、自分のコレクションにした方が良い 』
とアドバイスしてくれた。
   一度出したものを引き上げるなど私の哲学(?)に反し、「 あの産地なら、車で
  1時間だし、誰も知らない産地だから、もし珍しい鉱物が付いているなら、いつでも
  採集に行ける 」 
と大見得を切ってしまった。
   それから間もなく、私はひたちなか市を離れることになり、小妻の産地を訪れる
  機会を逸してしまっていた。

   その後、岐阜県、長野県、山梨県などでパンニングを主体にして希元素鉱物を
  採集したが、分離品が多く、母岩付きは少なかった。ひたちなか市を去る1週間前に
  なって小妻を訪れ、母岩付きの「モナズ石」「フェルグソン石」「ジルコン」「ゼノタイム」
  そしてそれらの分離結晶を採集できた。

   これで心置きなく、ひたちなか市を後にできそうである。
   ( 2007年3月採集 )

2. 産地

   常陸太田市(旧里美村)小妻周辺には、ペグマタイトの採掘、試掘跡が数多く
  残っている。リチア電気石などリチウム・ペグマタイトで有名な妙見山もその1つで
  ある。
   この産地もそれらの1つと思われ、産地には真っ白い石英塊や長石塊が木立の
  中にズリを成している。
   詳細は、産地保護の観点から割愛させていただく。

    ズリ

3. 産状と採集方法

   典型的なペグマタイト産地で、塊状の長石、石英が見られ、ごく一部にはそれらの
  露頭がある。電気石は、長石の中に埋没した形で産する。希元素鉱物は電気石の
  中やそれに隣接する長石の中に含まれている。
   ズリや露頭で電気石を含む長石を探し、ジックリと眺めると希元素鉱物が付いている
  場合がある。ズリの土砂を近くの沢に運び、パンニングしたところ、かなりの量の
  希元素鉱物が得られた。
    露頭から採集した段階では、粘土が表面を覆い希元素鉱物の有無は判別しにくい
  ので、沢で洗ってみるか、自宅に持ち帰って洗ってみるのが良いだろう。

4.産出鉱物

 (1)鉄電気石【SCHORL:NaFe3Al6(BO3)3Si6O 18(OH)12
     黒色、ガラス光沢、縦に細かい条線が見られる長柱状で長石の中に産する。両端
    は長石の中に埋没し、頭付きは得られていない。
     母岩の長石とともに、風化か放射能の影響で崩れやすく、完全な柱状結晶は極めて
    希である。
     この産地では、希元素鉱物存在の道しるべとなっている。写真の標本では、赤い
    矢印の先にゼノタイムがみられる。

     電気石

 (2)モナズ石【MONAZITE-(Ce):CePO4
     黄褐色、先の尖った板状結晶として電気石や長石の中に産する。パンニングでは
    頭付き板状結晶が希に得られる。

         
          電気石に埋もれ            分離単晶
                     モナズ石

 (3)ゼノタイム【XENOTIME-(Y):YPO4
     黄褐色、柱面が発達しない四角錐で、錐面(z:011)が両方にみられる両錐体で電気
    石に埋もれて産する。
     これが、長石に挟まれた電気石や白雲母の中で成長すると、円形、厚板”円盤”状
    〜”球状”になり、パンニングで採集できる。

         
          電気石に伴う            円盤状
                     ゼノタイム

 (4)フェルグソン石【FERGUSONITE-(Y):YNbO4
     黒褐色、先の尖った四角柱状結晶として電気石の上や長石の中に産する。パンニング
    では、1cmを超える分離結晶も得られる。

         
        電気石の上に成長        パンニング品
                   フェルグソン石

5. おわりに

 (1) この産地の採集品を整理してみて、改めて気づいた。

     @ 燐酸塩(−POn)鉱物が多い
     A Y(イットリウム)鉱物が多い

     詳しく調べてみたいと思っている。

 (2) 数年前まで里美村、と呼ばれていた地域が平成の大合併で常陸太田市に組み
    込まれた。
     リチア電気石など、リチウムペグマタイト鉱物で有名な「里美村妙見山」は、岩
    石の持ち出しが禁止になって久しい。
     今回訪れた産地は、その対象外の地域で、この近くでも「リチア電気石」を採集でき
    た。それについては、別な機会に紹介したい。

 (3) ひたちなか市でのコンサルタント業も残すところ数日になった。ほかにも訪れて
    みたい産地もあるが、気にかかっていた場所はすべて訪れたので、心置きなく
    自宅に戻れそうである。

6. 参考文献

 1)長島 乙吉、弘三:日本希元素鉱物,日本鉱物趣味の会,昭和35年
 2)松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
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