産地を訪れる道すがら、採集中、あるいは宿での雑談の中から、”新語”が生まれる
ことがある。
それらを、思い出すままに、『ミネラル・ウオッチング用語集』として、書き並べて
みた。
単なる、”仲間内の駄洒落”に過ぎないものもあり、”座興”と思って読み流していた
だければ幸甚である。
2011年、関東地方のある人から某産地の情報を乞われ、お送りしたところ、私が
当たり前だと思って使っている「露頭(ろとう)」や「ズリ」が『 具体的に何を意味し
ているのか判らない 』、とのメールをいただき驚愕した。
逆の立場で考えれば、私にとって「AKB48」や「KARA」が何を意味するのか、漠
然としたイメージはあるものの、さりとてあらたまって人に聞くこともできないのと似てい
るような気がする。
そんな訳で、『 ミネラル・ウオッチングの基本語 』 をいくつか追加してみた。
( 2006年11月編集 2011年1月追補 )
用 語 | 文法・出典 | 意 味 | ズリ休み | 「ズル休み」の 鉱物採集行 平日活用 | 鉱物採集に行くため 休日でない日に会社や 学校を休むこと ズリ(鉱山の廃石捨て場)を 掘る目的で行使するのが 正しい用法 ただし、同じ理由は 何回も使えない |
真小某大 | 「針小棒大」の 鉱物採集版 | 本当(真)は小さい 採集標本が、某氏(嬢)の 話では、大きくなる 【副詞的用例】 「いくらでもある」 「ゴロゴロしている」 【数詞的用例】 「センチオーバー」 「数mmの肉眼サイズですら 稀とされる鉱物の1cmを 超える結晶を採った。 しかも母岩付き!!」 |
産地横付け | 「車横付け」の 鉱物採集版 | 林道が整備され 狸しか通らない道も 舗装されている 車からものの数分(数十歩)で 到達できる産地が増えた 産地荒廃の原因の1つとされる 長島乙吉氏が秩父鉱山を 探索した時、宿に帰って ”わらじ”を脱ごうとして 底に緑色の柘榴石が 付いているのを見て, 産地を探し出したと 「日本昔話」にある |
現金採集 | 草下先生の 「鉱物採集フィールドガイド」 | 「現金」で鉱物標本を 手に入れること 以前は、鉱物標本を 購入できる「ミネラル・ショー」は 年に2、3回しかなかったが 21世紀になって、 「ネット・オークション」なる ものが出現し、毎日が 「現金採集日」になっている 人もいるらしい 『売るために採る』輩が出現し 産地荒廃の原因の1つとされる |
ハイエナ採集 | 「ハイエナはライオンなどが 捕獲した動物の食べ残しを 漁る」のが原義 | そこから転じて、先行者や 同行者がズリを掘った 跡や崩した露頭下から 採集すること 「乞食採集」と軽蔑する 人もいるが、考えようでは 最も効率の良い採集法 |
苔(こけ)にされる | 「虚仮(こけ)にする(される)」の 鉱物採集版 | 「虚仮にする(される)」は 「馬鹿にする(される)」が原義 鉱物採集では、苔類 木の葉、木の実などが目的とする 鉱物に似ていて「ヤッタ!!」と と一瞬喜び、ぬか喜びに 終わることが多い 緑色の”苔”が緑鉛鉱や 緑柱石に似ていることから 使われ始め、広まった 【具体的用例】 杉の実・・・福井県赤谷の自然砒 広葉樹の落ち葉・・・雨塚山、鉛澤の紫水晶 |
叩(たた)く | 「掘る」「ふるう」と並び 鉱物採集基本動詞の1つ | ハンマで露頭やズリ石を 強打し、目的の鉱物を欠き 取ることをさす ズリ石の場合、”割る”が 同義語として使われることがある ハンマの重さは0.9kg 1.8kgなど切りの良くない 数字が使われているが、今から 130年以上昔の文明開化で 欧米から、ヤード・ポンドを 導入した名残 1ポンド(Lbと書く)=0.48kg |
掘る | 「叩く」「ふるう」と並び 鉱物採集基本動詞の1つ | ズリの土砂を崩したり 穴を掘って鉱物を探すこと 「熊手(くまで)」を使う ことが多い 熊手には、「千歳飴」の袋に 描かれていた(過去形) 老夫婦のどちらかが持っていた 落ち葉をかき集める竹製のものも あるが、鉱物採集では役に立たない 鉄製で農作業用のがっちりしたものが 望ましい 潮干狩り用の丸棒を曲げたものは 初心者用 |
ふるう | 「叩く」「掘る」と並び 鉱物採集基本動詞の1つ | ズリや川床の土砂から 道具を用いて目的鉱物を 選別する動作をさす 【大きさで選別する場合】 フルイ・・・・・・トパーズや柘榴石 【比重で選別する場合】 パンニング皿、ゆり板 ・・・・・・砂金や希元素鉱物など 比重が石英(2.7)より大きな鉱物向き 最近、パンニング皿の上に フルイを置いて、1回で 2度楽しむ方法『親亀・小亀作戦』 が山梨・某氏により 考案され、名古屋方面に 広がりはじめている |
ミネラル・ウオッチング | バードウオッチングの 鉱物採集版 | 鉱物を意味するミネラルと 観察を意味するウオッチングと を合成した造語で 山梨・某氏が使い始めた 20世紀までは、「鉱物採集」が使われて いたが、産地が荒廃し、地元住民の 反発などで、採集や立ち入り 禁止、あるいは持ち出し禁止になる 産地が相ついだ 産地を愛護することを アピールするための言い換え 語の1つ 某紙に載った「鉱物ウオッチング」も 同義語 |
バンニング(Banning) | 出典不明 | 比重の違いを利用して 目的鉱物を選別することを さす この語の発生については、次の 2説あるが、いずれとも決していない (1)パンニングの入門語 パンニング(Panning)を始めて間もない 人が使うことが多いからという説 (2)「ゆり板」由来説 日本古来の「ゆり板」を用いた 砂金採集方法が、趣味として 復活の兆しを見せているところ から、「板」に”-ing”をつけて ”Banning”になったとする説 |
猿又(さるまた)双晶 | 男子用下着の 「猿又(パンツ)」に似た形状から | 「猿又」に似ている 両方の頭がない日本式双晶の 蔑称 (採れない人の負け惜しみ) |
基本語追補 2011年1月 | 露頭(ろとう)に迷う | 「路頭に迷う」の ミネラル・ウオッチング版 | 鉱物を採集できる ポイントの1つに、 露頭がある。 露頭とは、地下の岩がむき出しで 露出している場所を示す。 晶洞の中から、”初だし(うぶだし)”の 頭付き、ピカピカ結晶が採集できる 可能性が高い。 しかし、どこに「晶洞」があるのかは、 神のみぞ知ることが多く、どこを叩けば 良いのか迷うことが多い様を示す。 |
辛酸地 (しんさんち) |
鉱物産地を発見する苦労を表わす。 「新産地」の代名詞 | 新しく発見した、と言っても そこはかつて○○鉱山として稼行していた 場所であったり、「△△坑」などと呼ばれ 小規模な試めし掘りがなされた跡であることが ほとんどである。 したがって、発見した、というよりも再発見と 呼ぶのが相応しい。 |
光りもの |
宝石鉱物に代表される ”ピカピカ”、”キラキラ”と輝く 鉱物の代名詞 |
原義は、現場の鉱山技師たちが 銅鉱、鉛鉱や硫化鉄鉱類を指す 粋(いき)な表現
近年、「レインボー○○○」に代表される
カラスという鳥(採り)は、光りものが |
転石(てんせき) |
鉱山(産地)発見のキッカケとなる 転がっている石 |
『起承転結』の「転」と同じで、新産地を 追いかけていると、”オヤ?”と思う 場違いともいえる岩石が落ちている ことがある。
広辞苑には、「転石は、岩盤から離れて
新潟県の翡翠のように、川の下流部や |
(2) これからも、折に触れ、書き加えて見たいと考えている。面白い用語や判らない言
葉などがありましたら、お知らせください。
よろしく、お願い致します。