この意味は、”何たって、水晶はいい”、という、至極単純明快なもので、散々浮気
して、死ぬ間際に本妻のところに転がり込んでくる道楽者、というような深い(?)意
図は全くない。
私のHPの「掲示板」にwakabaさんが書き込んでくれたように、紫水晶や日本式双晶
は文句なく美しく、誰もが欲しがるのも無理もない。私の多くの石友の中で、埼玉の
Aさん親子や愛知のKNさんなどが水晶以外の鉱物にほとんど興味を示さないのも理
解できる。
日本式双晶は全国各地で産出しているが、現在でも確実に採集できる場所となると
甲武信鉱山だろう。
日本屈指の蝶コレクターでもある長野県の石友・Yさんが甲武信鉱山で”蝶形
双晶(バタフライ・ツイン)”を採るのに同行した。行く前に、湯沼鉱泉社から
愛知県の石友・KNさんが10年ほど前、3cmオーバーの緑水晶双晶が5、6枚ついた
群晶を出した場所を聞いておいた。
坑道の中で、露頭を崩すと、晶洞が現れ、よく観察すると双晶が見えることがあり
壊さないように、慎重に取り出した。甲武信鉱山では珍しい”軍配形”も採集できた。
3cmオーバーの緑水晶双晶には巡り会えなかったが、出そうな気配は感じられた。
同行、案内していただいた石友・Yさんと湯沼鉱泉社長に厚く御礼申し上げる。
( 次の日、湯沼鉱泉社長にご足労かける羽目になってしまった )
湯沼鉱泉に宿泊し、社長から場所や注意事項を良く聞いて訪れると良いだろう。
( 2007年7月採集 )
ハンマとタガネで露頭から直接欠き採るのだが、堅くて割るのに四苦八苦した。
事実、この露頭には、打ち込んで抜けなくなって、刺さったままのタガネが数年前
から放置されていた。
産地でトリミング(小さく整形)すると、肝心の双晶が吹っ飛んでしまうので、大き目
の母岩ごと持ち帰るのが賢明である。
一方、単晶の中には、真っ白いものに混じって、緑色、針状の緑閃石【ACTINOLITE:
Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2】を含み、緑水晶と呼べる標本も観察できる。このタイ
プの日本式双晶の存在を匂わせている。
(2) 方解石【CALCITE:CaCO3】
晶洞の中に、水晶、氷長石などの上に、菱面体(マッチ箱をひしゃげた形)の自形
結晶が観察でき、一番最後に生まれたことを示している。採集した結晶の大きさは、
最大のものは1辺10cm、写真のものは3cmである。
(3) 氷長石/正長石【Adularia/ORTHOCLASE:KAlSi3O8】
白色、菱形の結晶が方解石や水晶を伴って産出する。「日本の鉱物」にも紹介されている
ように双晶も観察できる。”こおりちょうせき”ではなく、”ひょうちょうせき”が正しい
呼び名である。
(2) 実のところ、この産地には2日連続で訪れ、2日目は湯沼鉱泉社長に案内・同行をお願い
した。古い、九十九折れ(つづらおれ)の鉱山道といつものテラスをつなぐ直線コースの間
の、露頭、崩れた坑道跡とその前のズリ(?)を縫うように登って行くと、足元にはピカピカ
の結晶面をもつ水晶が散らばっている。
甲武信鉱山には、まだまだ、人知れずに眠っている鉱物があることを予感させる。
(3) ここの双晶は、比較的母岩にシッカリ固定しているが、道具が不十分で気持ちに余裕が
ない現地でトリミング(小さく整形)すると、肝心の双晶を母岩から吹っ飛ばしてしまうことが
多い。
そこで、大き目の母岩のまま持ち帰って、自宅でトリミングするのが賢明である。
トリミングのやり方については、近いうちお知らせしたい。