梓(甲武信)鉱山の松茸水晶

梓(甲武信)鉱山の松茸水晶

1.初めに

長野県佐久郡川上村川端下での採集で一緒になった木曾町のIさんが
「松茸水晶ズリに行ったが採れなかった」と話していたので、下山の途中に
立ち寄ってみた。
ズリは所々薄っすら雪があったが、日向のため地面は凍ってはいなくて
支障なく採集はできた。
福島県の石友が年配のため、早く下山したくて、30分だけ時間を区切っての
短時間採集でしたが、松茸2本、逆松茸1本そして緑松茸状両錐1本を採集できた。
(2002年11月採集)

2.産地

141号線を佐久に向かって走り、JR最高地点の先で「川上村」表示に従い右折し、
三国峠に向かって走る。「梓川」の手前で右折し、町田市の自然休暇村を過ぎ、
梓川に掛かる橋の手前の路肩に駐車する。
山際に「入山禁止」の立て札が2つ立っていますので、すぐ分かると思います。
梓鉱山「入山禁止」の標識
ここから尾根を目指してまっすぐに、大ズリ→緑水晶坑→ベスブ露頭→松茸水晶ズリ
の順に、約1〜1.5時間かけて途中で採集しながら登ります。
緑水晶坑から約100m登ったテラス(平坦部)に、上の露頭から落とした
ベスブ石の分離結晶が落ちている。
ここから左上に約150m行くと一面開拓畑状態の場所があり、ここが松茸水晶の
産地です。
松茸水晶ズリ

3.産状と採集方法

ここには、ペグマタイト脈とスカルン鉱床があり、何を目的に掘ったのか
分かりません。
ズリでは、ツルハシやクマ手を使って土砂を崩しながら、結晶を探します。

4.産出鉱物

(1)松茸水晶【Rock Crystal Mushroom Type:SiO2】
松茸水晶は、平行連晶の一種とみなされ、藤屋や韓国産の紫水晶などに見られる。
松茸の軸の上に傘がかぶったような水晶で、別名「冠水晶」とも呼ばれています。
ここの松茸水晶は、軸の部分が緑、傘の部分が透明のものが多く、これは、何回かに
わたって組成の違った熱水が侵入したことを覗わせます。
一口に松茸水晶と言っても3つの形態があります。
@いわゆる松茸水晶
 軸の上に、傘に相当する両錐の水晶が乗ったもの。
松茸水晶
A逆松茸
 太さが急激に変化する”先細り型”で、太い部分は緑色〜灰色、細い方が
透明のケースが多い。
逆松茸水晶
B松茸状両錐
 緑両錐水晶の一端が、他端に潜り込んだ形をしていることから仲間内では
 ”皮かぶり”と呼んでいます。
松茸状両錐
(2)その他の鉱物
緑泥石と思われるインクルージョン(内包物)を含む普通のタイプの水晶以外に
灰鉄ザクロ石や褐鉄鉱化した磁硫鉄鉱などが採集できます。

5.おわりに

(1)短い時間でしたが、松茸水晶はまだまだ採集できそうです。
Iさんも、採集要領は会得されたようでした。
(2)ここの水晶は、普通のタイプは緑〜灰色の内包物を含有しているのに
松茸水晶は極めて透明度が高いのが不思議です。
私が従事していた半導体の世界で、高純度のゲルマニュム(Ge)やシリコン(Si)を
精製する技術の1つに偏析係数の違いを利用した、ゾーンメルティング法が
ありますが、これと同じことが自然界で起こっていたのかと思うと造形の妙を
感じます。
(3)梓(甲武信)鉱山のふもと一帯がきのこ山で、その権利を地元の某氏が
買ったため、鉱物採集が目的でも「入山禁止」になっていたのですが
きのこ山の権利を「湯沼鉱泉」の社長が買い戻し、宿泊客は無料で、宿泊しない人は
1人当り1000円(子供500円)を払えば、入山できるようになっています。

6.参考文献

1)藤本治義編:南佐久郡地質誌,南佐久教育会,昭和33年
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