長野県甲武信鉱山の近況 − 2007年8月 −

   長野県甲武信鉱山の近況 − 2007年8月 −

1. 初めに

   桜井先生と加藤先生の共著「鉱物採集の旅 関東地方とその周辺」の「茨城県山ノ尾
  のペグマタイト鉱物」の章で、桜井先生が『 古川に水絶えず 』、と書いている。
  ( 別なページで 『 古泉に水枯れず 』、と紹介したのは私の記憶違いで、訂正 )

   私が単身赴任から戻ってから、湯沼鉱泉社長と石友たちによって、まるで ”月替わり
  メニュー” 
のように、新産地が発見されている。

   4月・・・・・甲武信鉱山「第2松茸水晶」【既報】
   5月・・・・・甲武信鉱山「緑簾石」【既報】
   6月・・・・・山梨県水晶峠の「山入り水晶巨晶」【既報】
   7月・・・・・甲武信鉱山「第3松茸水晶ズリ」【既報】
   8月・・・・・山梨県向山鉱山の「巨晶・美晶」【既報】

    私のHPを読んだ何人か(グループ)から、甲武信鉱山を案内して欲しい、とのメール
   を頂き、幾度か案内させていただき、そのたびに、誰かしらが湯沼鉱泉の社長を
   唸(うな)らせる、素晴らしい標本を手にしている。

    最近、京都・Tさん、長野・Iさん、東京・Kさん一行、愛知・Sさん一家と甲武信鉱山の
   ごく一部を巡検した。それぞれの産地で、皆さん良品を採集され、正に 『 古川に
   水絶えず 』
 である。

    @ 「第2松茸水晶」・・・・・・・・・緑の松茸水晶【Tさん】
    A 「緑簾石」・・・・・・・・・・・・・・頭付き4cm緑簾石【兵庫・Nさん夫妻】
    B 「松茸ズリ」・・・・・・・・・・・・日本式双晶【Sさん一家の息子・Y君】

    甲武信鉱山は、入山料を払えば現在でも各種の鉱物が採集ができる素晴らしい
   産地で、最近の採集品を交えて、ご紹介したい。

    なお、甲武信鉱山に入山する前に、湯沼鉱泉に立ち寄り、入山料の支払いと「天然
   水晶洞」の見学をおすすめする。
   ( 2007年8月情報 )

2. 産地

   湯沼鉱泉には、長野県の石友・Yさんが作成した、「甲武信鉱山−国師鉱床 鉱物類
  観察・採集マップ」が置いてあるので、初めての人はこれを持参すると良いだろう。

     観察・採集マップ【Yさん作成】

3. 産状と採集方法

   甲武信鉱山は、「スカルン鉱床」とされ、水晶、柘榴石といった綺麗な”ビギナー
  向け”
から、灰重石、砒鉄鉱自形結晶という”玄人好み”まで、各種の鉱物の一流
  標本が入手できるチャンスがある。

   また、今まで、幾百、幾千の訪山者が通り過ぎていた場所から、素晴らしい標本が
  続々と発見され、まだまだ眠っている産地(ズリ)も多いはずだ。次に訪れるあなたが
  新産地の発見者になることも、夢ではない。

   採集方法は、次の3通りである。
    @ 表面をよく探す【表面採集】
    A 鉱物が見つかったらその周りを掘ってみる。【ズリ採集】
    B その近く(通常は上)の露頭や坑道を叩く【露頭採集】

   @、Aなら、女性や子どもでも十分楽しめ、”パワフル○人組”が掘ったり、叩い
   た後なら、@でも良品が採集できる。

     「第3松茸ズリ」を掘るSさん一家

4. 産出鉱物

   石友の最近の採集品の一部を紹介させていただく。

鉱物種名
  俗名
【英名:組成】
標本写真産地採集者備    考
緑簾石
【EPIDOTE:
Ca2Fe3+Al2(Si2O7)
(SiO4)O(OH)】

        横4cm
緑簾石ズリ兵庫県
Nさん奥さん
 
石英
日本式双晶
【QUARTZ:SiO2
 
       両翼2.5cm
松茸ズリ愛知県
Sさん一家
Y君(高1)
 頭がないが
六角柱状結晶で
珍しい産状
石英
松茸水晶
【QUARTZ:SiO2
 
        高さ4cm
第3松茸ズリ兵庫県
Nさん奥さん
 まりも入りも
ある

5. おわりに

 (1) 幻の標本
     湯沼鉱泉に集う石友は、それぞれ自慢の品の現物やカメラ、携帯の画像を
    持参することがある。
     以前、「苗木地方のトパズ」関連のページで紹介した、愛知県の石友・Sさんの
    奥さんが”肌身離さず”持っている「ブルー・トパズ」と「日本式双晶」が
    御開帳となり、それらを拝見する機会があったので紹介する。

       
       ブルー・トパズ             日本式双晶
         【横3cm】              【両翼3cm】
               愛知・Sさんの奥さん秘蔵品

     これらを見た湯沼鉱泉社長や石友・Yさんなど居合わせた人たちは、色めき
    立った、とYさんから後で聞いた。

     社長曰(いわ)く、 『 ああして、人に見せられる標本を1つでも、2つでも持っ
    ているのは、素晴らしいことだ 』

     Sさんの息子・Y君が甲武信で採集した 『 水晶に蝶が止まった日本式双晶 』
    社長が”ベタ褒め”で、S一家とは、”双晶一家”の別名(?)

 (2) 産地情報を提供したり、甲武信鉱山を案内させてもらった東京のKさんから
    職場に同好会「石採り部」が発足し、部長に就任した、と嬉しいメールをいた
    だいた。

     Kさんからいただくメールは、格調の高い日本語で、時として誤字や脱字が
    ある当方としては、お恥ずかしい限りである。

     ご一緒した「石採り部」のメンバーの皆さんは、若いのに礼儀正しく、日本の
    将来に少し明るさを見た想いだ。
     ( 一寸、大袈裟かな )

6. 参考文献

 1)益富 寿之助:鉱物 −やさしい鉱物学−,保育社,昭和60年
 2)中川 清:山梨県の水晶 水晶Vol.11 No.1,鉱物同志会,1998年
 3)松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
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