翌週は、ミネラル・ウオッチングに参加されたことがある人ならお馴染みの、甲武信鉱山
巡検コースに新産地を加え、一通り案内する事にした。湯沼鉱泉を7時過ぎに出て
第1テラス→「柘榴石サンクチュアリ」→第2テラス→ベスブ石産地(第3テラス)
→(第1)松茸水晶ズリ→第3松茸産地(見学のみ)→第4松茸水晶産地
→ミニツイン坑道→灰重石坑道
で見学・採集し、帰り道に緑水晶産地と第2(新)松茸水晶産地を見学し湯沼鉱泉に
17時過ぎに戻った。
Mさんは、それぞれのポイントで甲武信鉱山の産状を実地に観察し、ここ特有の大きくて
素晴らしい標本を多数採集でき大満足で帰った。
( 「部屋が狭いので、採集品をどう整理するか嬉しい悩みです」、とメールにあった。 )
私自身、ミニツイン坑道と灰重石坑道を訪れるのは2年ぶりだった。前の週に小Yさんが
晶洞を開け、ツイン(双晶)が付いた群晶をたくさん置いてきた、と聞いていたが、私たち
が訪れる前の日に某大学の15名が入山し、持ち帰ったようで見当たらなかった。
久しぶりに晶洞(ガマ)開けに挑戦し、双晶が付いた群晶をいくつか採集し、2人で分け
あった。私が採集し、マイコレクションとなった中には、20mm近い双晶があり、ある奥さんに
『 ミニ・ツインなんて、言わせませんヨ 』、と言われそうだ。
湯沼鉱泉の川上犬・熊子の娘に、子犬が生まれいていた。おばあちゃんになった熊子が
擦り寄ってくると、”ジイさん、バアさん”間近の私にとって一入(ひとしお)親近感を覚えた。
夏休みに訪れると、”モコモコ”の子犬たちが出迎えてくれるはずだ。
( 2009年7月採集 )
また、最近HPにアップした「第4松茸水晶」産地のように、今まで、幾百、幾千の訪山者
が通り過ぎていた場所から、素晴らしい標本が続々と発見され、まだまだ眠っている産地
(ズリ・坑道)も多いはずだ。
次に訪れるあなたが新産地の発見者になることも、夢ではない。
採集方法は、次の3通りである。
@ 表面をよく探す【表面採集】
A 鉱物が見つかったらその周りを掘ってみる。【ズリ採集】
B その近く(通常は上)の露頭や坑道壁を叩く【露頭採集】
晩春〜晩秋なら@、Aで、女性や子どもでも十分楽しめ、”パワフル○人組”が掘ったり
露頭を叩いた後なら、@でも良品が採集できる。冬は、Bしか採集できる術がない。
今回、訪れた産地ごとに、TPOで採集スタイルを変えた。、その結果、私にとって、
今までで一番の「日本式双晶」や、初めてとなる「珪灰石」などが採集できた。
No |
鉱物種名 俗名 【英名:組成】 | 標 本 写 真 | 備 考 | 1 | 珪灰石 【WOOLASTONITE: Ca3Si3O9】 |
拡大
|
細い針状結晶が 放射状に集合
硬くて、サンプルを
甲武信鉱山が |
2 | 石英 日本式双晶 【Japnanese Law Twin QUARTZ: SiO2】 |
両翼 16mm |
インクルージョンは 緑色・針状の緑閃石 【ACTINOLITE: Ca2(Mg,Fe)5Si18O22(OH)2】 |
今のようにインターネットが普及していなかった20年以上前、草下先生の「鉱物採集
フィールド・ガイド」を読んで川端下(かわはけ)を含めた、広い意味での甲武信鉱山
を知った人が多いのではないだろうか。
<長野県南佐久郡川端下の水晶山>の項があり、私もこれを読んで最初に訪れた
のは、平成元年(1989年)に山梨県に転勤になって間もなくのころだった。1回目の
探査単独行では、産地を探し出せず、涙を呑んだ。
2回目に、先行者が叩くハンマの音を頼りに、産地に立つことができた。草下先生の
『 ほとんど海抜2,000m近い山肌に、谷底めがけてなだれ落ちている数百メートルの
水晶のズリを見たときには、息がつまるほどの感激を覚えたものだ 』
の表現が、決して大袈裟とは思えないほどの迫力だった。
「フィールド・ガイド」が出版された後に、発見されたズリや露頭そして鉱物種も多い。
前のページにも書いたが、まだまだ隠れている産地、鉱物種が皆さんが探し出すのを
待っているはずだ。
(2) 湯沼鉱泉の川上犬
湯沼鉱泉に入山料(私の場合、現金がないので現物が多い。この日は「茅(かや)
の石まん」)納めを兼ね挨拶に行くと、お姐さんが「熊子の娘に赤ちゃんが生まれた」
と、前庭に案内してくれた。
ビニールシートが被った”巣穴”状の中に、熊子の娘とまだ眼が明いていない子犬
が何匹か(3匹?)いた。
なるほど、こういう場所で出産・育児するのだと知り、川上犬が狼に近い、と言われ
るのも納得した。
おばあちゃんになった熊子が擦り寄ってくると、”ジイさん、バアさん”間近の私に
とって一入(ひとしお)親近感を覚えた。
夏休みに訪れると、”モコモコ”の子犬たちが出迎えてくれるはずだ。
犬といえば、6月末から我が家で長男夫婦の飼い犬をしばらくの間預かることになっ
た。2歳になる前の若い黒柴のオス犬で、私が外出すると寂しがって「クンクン啼いて
いる」、と妻が言う。そこで、極力どちらかは家にいるようにしているので、夫婦揃って
や泊りがけの旅行(ミネラル・ウオッチング)は当分難しい。
名前は、武田信玄公の風林火山にある「疾きこと風の如く」からとったのか聞き忘れ
たが、「疾風(はやて)」だ。以後、お見知りおきください。