石川県珠洲市の子ぶり石(オパール)

     石川県珠洲市の子ぶり石(オパール)

1. 初めに

   益富先生の著書「鉱物 −やさしい鉱物学−」には、『珪乳石、一名子ぶり石』として
  ユーモラスな形が紹介されている。
   「2004年 鉱物採集納め -Part2- 能登・加賀の鉱物」で訪れて、”大ぶりな子ぶり石”を
  採集したが、今回初めてのメンバーもおり、「能登・加賀の鉱物を訪ねて 第2弾」でも訪れた。
   今回は、”欠けがなく、面白い形状”に絞って採集したが、99%以上がどこかに欠けが
  あり、”完璧なもの”は2、3個しか採集できなかった。
   それでも、2つと同じものがない愛くるしい「子ぶり石」を採集でき、大いに満足している。
  案内していただいたYさんに厚く御礼申し上げます。
  (2005年7月採集)

2. 産地

    珠洲市には、何箇所か産地があるようで、益富先生の「鉱物」には、珠洲市本村(ほんむら)
   の産地が写真入りで紹介されているが、本が最初に発行された昭和49年(1974年)から
   30年余りが過ぎ、産地の様子は大きく変わっていると思われる。
    今回、Yさんに案内していただいたのは、のと鉄道「能登飯田」駅近くの線路から200m
   ほど離れた土(珪藻土?)取場跡である。

     子ぶり石産地

3. 産状と採集方法

   子ぶり石は、珪藻土層中の珪酸分が集合した結核で、層をなして含まれている。
  珪藻土の採掘に伴って、それらが地表にばら撒かれて落ちているので、”表面採集”で
  拾い集めます。

4. 採集鉱物

 (1)子ぶり石【Opal:SiO2・nH2O】
    鉱物種としては蛋白石(オパール)の仲間である。”大ぶり”な「子ぶり石」は生成後の
   地殻変動のストレスを受け、地層中にあるものも既に割れたものが殆どである。
    特に、”面白い”形状のものは、複雑に曲っていたり、くびれていたりするので
   ストレスに弱く完璧な形状のものがほとんど見当たらない。
    その反面、楕円体(卵型)をした単純な形状のものには比較的完全なものが
   見られる。
    また、長い間に水分が抜け、表面が”ガサガサ”になり、持った感じが軽いものも
   あり、”オパール”の仲間であることが実感できる。

     子ぶり石

    ここには、「子ぶり石」以外の鉱物は見当たりません。

5. おわりに

 (1)「子ぶり石」のように、”奇妙な形をした石”を、江戸時代の有名な奇石収集家の
    木内(きのうち) 石亭(1724-1808)が放っておく筈がなく、その著書「雲根志
    後編巻之三 像形類 90種」の中で、取り上げています。

    『人形石 十三
     加賀國白山に人形石あり 赤土のかたまりたるものにして土より堅し 長さ1 2寸
     色黄赤し 面目鮮なるにはあらず 背腹手足首(かしら)の形 分るのみ
     叉能登國鳳至(ほうし)郡菩薩谷という所に 菩薩石を出す 是叉同物なり
     外黄白 石中大に堅く瑪瑙の如し』

     能登の「子ぶり石」は、300年も前から「人形石」あるいは「菩薩石」とも呼ばれ
    世の人々に知られていたようです。
    (いろいろな本に、『雲根志に、”仏石”とかでのっている』と、記述されていますが
     未だその個所を特定できていません。)

     石亭は、『瑪瑙の如し』と「子ぶり石」が珪酸塩鉱物であることを見抜いていた
    ようです。

6. 参考文献

1)益富 寿之助:鉱物,,保育社,昭和60年
2)益富地学会館監修:日本の鉱物,成美堂出版,1994年
3)正宗 敦夫編纂・校訂:雲根志 下巻,日本古典全集刊行会,昭和5年
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