山梨県金峰山の紫水晶

          山梨県金峰山の紫水晶

1. 初めに

   古い話で恐縮だが、1年以上前の2007年8月、埼玉県の石友・Aさん親子から 
  「 山梨県で紫水晶を採集したので産地を案内します 」、とメールをいただいた。
  山梨県の紫水晶と聞いて、2つ返事で案内をお願いした。
   Aさん親子が採集した『紫水晶』は、ペグマタイト産地に多い”薄い紫”で、それと
  教えてもらわなければ、単なる白い松茸水晶で片付けてしまうものがほとんどだっ
  た。
  ( Aさん親子が「俺たちだけのDNAが、”紫”に見えるのか・・・・・」、というほどだった )

  その上、案内してもらった産地は、” エッ ? ” と思うような場所だった。

     紫水晶産地【2008年10月】

   何とも不思議な産地で、「こんなところに何故水晶があるのか?」と思うような場所
  だった。
   この2ケ月後、山梨県甲府市黒平をAさん親子と訪れ、同じようなフィールドで
  水晶や希元素鉱物を採集し、何となく採集要領がわかった。従来のように「ガレ場」を
  攻めるのではなく、「地山」の表面を観察し、落ちている水晶片や長石片を手がかりに
  晶洞を探すという新しい手法だった。

山梨県甲府市黒平の煙水晶
( Smokey QUARTZ from Kurobera , Kofu City , Yamanashi Pref. )

2007年11月 山梨県甲府市”黒平”の近況
( Smokey QUARTZ from Kurobera , Kofu City , Yamanashi Pref. )

   この紫水晶産地でも、同じ手法でかなりの数の水晶は採集できたが、紫水晶として
  お見せできるのは数本だった。
   とは言え、貴重な産地を案内してくれたAさん親子に厚く御礼申し上げる。

   2008年10月、近々開催するミネラル・ウオッチングの下見で妻と2人で訪れてみると、
  あれから1年半近くが経ち、その後の紫水晶フィーバーも去り、産地は静けさを取り戻し
  ていた。
   産地はAさん親子に案内していただいた場所だけでなく、広い範囲にまたがっている
  ことに初めて気付いた。女性や子どもでも表面採集だけで、ここ独特の晶癖を持った
  水晶が拾えそうだ。皆さんと訪れるのを楽しみにしている。
   ( 2007年8月採集 2008年10月下見 )

2. 産地

   ここは、知る人ぞ知る産地なので、詳細は割愛する。

3. 産状と採集方法

   冒頭にも書いたとおり、不思議な産状の産地で、私は下の図のようにしてできたの
  だろうと推測している。つまり

   @ 花崗岩の晶洞や割れ目の石英脈に水晶が成長
   A 長い年月の間に花崗岩は風化、マサ化して、ボロボロになって崩れた。
      晶洞の中の水晶も周囲に散らばった。
   B その後、厚く表土が積もり、水晶を覆い隠した。

    
                   水晶産地の成因

4. 産出鉱物

 (1) 紫水晶/石英【Amethyst/QUARTZ:SiO2
      ここの紫水晶は、俗に”松茸水晶”と呼ばれるタイプである。場所によって2つの
     タイプがあるようだ。

      @ 蝋燭(キャンドル)・・・・・・・・・・・先端や表面が丸みを帯び、透明度がほとん
                           どない。
                           先端のごく一部が”紫”になっている。
      A 平行連晶・・・・・・・・・・・・・・・・・・1本の水晶に両錐の水晶が寄生し、角が
                           シャープで透明度が高い。
                           全体が”淡い紫”

       
               タイプ@                  タイプA
                           紫水晶

 (2) 水晶/石英【QUARTZ:SiO2
      ここの水晶は、近くにある有名な水晶産地のものに似て透明感があり、細長い
     のが特徴である。ただ、インクルージョン(内包物)は全くと言ってよいほど観察
     できない。
      今回、単晶のほか、群晶も採集できた。

     群晶

     この産地で確認できた鉱物は、今のところ水晶だけである。

5. おわりに

 (1) これで、山梨県内で紫水晶が産出する(した)場所で、私が知っているのは5箇所
    になった。いずれも甲府盆地北方のペグマタイト地帯である。

No 産  地  標 本 確 認   備       考
1○○沢済みHP掲載
2□□□林道支線済みHP掲載
3△△△済み
ファントム・アメシスト
(山入り)のような
累帯構造を示す
黒平の古老から聞き取り
”産地未確認”
4◎◎澤済み 黒平の住人から
標本恵与いただいた
”産地未確認”
5金峰山済み今回、HP掲載

 (2) 益富先生の「鉱物」にある紫水晶のうち、「鳥取県藤屋」「韓国白巌山」などのものは
    「冠(かんむり)水晶」とも呼ばれる「松茸水晶」(鉱物学的には”平行連晶”の1種)を
    している。
     今回確認した産地のものと共通している。

     上表のポイントやキーワードの「松茸水晶」の産地を地図の上にプロットしてみると
    「紫水晶」が出やすい場所が何となくあぶり出せそうなので、”新産地”も開拓してみた
    い。

 (3) 黒平の古老から聞いた△△△の産地は、その後単身赴任が続き、未だ確認でき
    ていない。”足腰が達者な内に”突き止めたい、と考えている。

 (4) この産地は、女性や子どもでも楽しめそうなので、次回のミネラル・ウオッチングで
    大勢の石友とお会いできるのを楽しみにしている。

6. 参考文献

 1) 山梨県・山梨県地質図編纂委員会編:山梨県地質誌 山梨県地質図説明書
                           同委員会,昭和45年(1970年)
 2) 益富 壽之助:鉱物  −やさしい鉱物学 -,保育社,昭和60年(1985年)
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