2年生になった今年も自由研究のテーマに「鉱物採集」を選び、誕生石のサファイアを
自分の手で採集したい、というので、最も採集できる可能性が高い岐阜県苗木地方を
案内した。
狩宿川、関戸川で「トパズ」「苗木石」などを採集した後、「木積沢」のほとりで遅めの
昼食を摂っていた。澄んだ川の水の中に、何かがありそうな予感がするポイントが見え、
食後にそのあたりでパンニングすることにした。
パンニングを始めてすぐに、小さなトパズの結晶が出始め、私が「 ここでは、サファ
イアも採れる 」、と言って間もなく、私のパンニング皿の底に、スズ石に混じって見慣
れない形の結晶が残った。良く見るとそれは、『 紡錘形のスター・サファイ 』 だった。
周辺の土砂をYさんのパンニング皿に入れてあげて、間もなく、Yさんが「あった!!」
と叫び、狂喜乱舞した。その指には、”ブルー、透明、宝石質”のサファイア(コランダム)
がシッカリと握り締められていた。
こうなると、皆さん、トパズどころではなくなり、サファイア熱に浮かされたようにパン
ニングを繰り返し、気がつくと、陽はだいぶ西に傾いていた。
結局、ここで採集できたサファイアは2個体だけだったが、Yさんにとって自分で採集し
た誕生石は、何よりも良い想い出になったようだ。
この日、私はガイドに徹するつもりで、採集品はほとんどYさん家族に差し上げていた
が、紡錘形サファイアはシッカリとマイ・コレクションに加えさせてもらった。
宿の「紅岩山荘」で飲んだビールの味は格別で、食後の「標本玉手箱」や比重測定な
どの実験をしていて、気付いたら22時だった。
この日一日の採集の疲れと酒の酔いもあり、たちまち ZZZ・・・・
今回のポイントを中心に、石友たちと「秋のミネラル・ウオッチング」で回るのを楽しみに
している。
( 2007年8月採集 )
(1) 狩宿川・・・・・・・・・・・【既報】
(2) 関戸川・・・・・・・・・・・車から降りたところに、地元の方が来た。川の南側は個人の
所有地で立ち入るとうるさいが、川の中や北側は集落の共
有地とのこと。
30分近く話を聞いたり、その方の採集品を拝見した後、立ち
入りが許された。
ヒノキを倒した人がいるのには、腹を立てていた。
(3) 木積沢・・・・・・・・・・・昔からの有名産地
Sさんの奥さんが使っているのは、『スクエア・パン』と呼ばれる四角いパンニング皿で
フィールドで使っているのを見たのは初めてだった。
奥さんに使い心地を聞くと、「小さなスズ石なども良く残る」との感想だった。
今回、Yさんと私が採集したものは、若干産状が違うようなので、比較して紹介する。
No | 標 本 写 真 | 説 明 | 備 考 | 1 |
六角厚板状 青色、透明、ガラス質 径3mm
”宝石級” | Yさんの採集品 | 2 |
スターが見える【上から】
|
六角柱状だが両端が尖った 紡錘(樽)形 採集できたのは半分 径4mm、長さ4mm
白色半透明の結晶に、 | 私の採集品 |
明治37年(1904年)に出版された和田維四郎の「日本鉱物誌(初版)」には、苗木地方
(木積沢)のサファイア(その当時は「藍宝石」)について、次のように記述してある。
『 藍宝石は、美濃恵那郡高山村地方に於て錫石等と共に河砂中に存するものなり
錫石採集の際、副産物として之を得。其質堅硬なるが為表面の摩擦少なし。
或は黝(ゆう:あおぐろい)色にして六方柱状を為し透明ならざるものあり。或は
美麗なる青色を帯び六方板状の結晶たるものあり。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結晶概して小にして、径2乃至(ないし:〜)3ミリなるを常とす。 』
Yさんの採集品が後者、私の採集品の形状が前者のようで、砂錫を大規模に採掘
していた当時でも、2〜3mmあれば立派な標本だったようだ。
ここで、「サファイア」に熱中していると、”欲目”で似たような産状の鉱物が「サファイア」
に見えてくる。特に紛らわしいのが、薄板状でパンニング皿に最後まで残る「(鉄リチア)
雲母」である。
指先で擦(こす)ると、雲母は粉々になったり、へき開するのでわかるはず。くれぐれも、
ご用心
(2) トパズ(黄玉)【TOPAZ:Al2SiO4(F,OH)2】
トパズは、塊状やへき開片を含めると多数採集できたが、”頭付き”となると少ない。
それでも、Sさん一家は、最大2cm超を筆頭に、頭付を10本以上採集できた。
木積沢のような大きな沢(川)は、流れが激しく、へき開したり川ズレが激しく、美晶
を探すなら、小さい沢のほうが良いようだ。
(3) Sさん一家は、このほか、「スズ石」は多数採集できたが、「苗木石(変種ジルコン)」や
「フェルグソン石」などは、識別が難しかったようなので、「苗木石」の見本を数個差し上
げた。
Yさんは、誕生石の「サファイア」を自分の手で採集でき、”大満足”の様子だった。今
回の採集品を中心に自由研究をまとめるそうで、楽しい夏休みの想い出になってくれ
れば、と願っている。
(2) 残暑が厳しいとは言いながらも、川面を渡る風も何となく秋めいて、一時の暑さは峠を
越したようだ。
木積沢沿いの里山には、秋の七草の1つ、「桔梗」の花が咲いていた。
(3) 単身赴任から戻って5ケ月、地元山梨県や長野県でのミネラル・ウオッチングが忙しく、
苗木地方を訪れたのは久しぶりだった。
思いもかけず「木積沢のサファイア」を採集でき、長島先生の「苗木地方の鉱物」に
記載されている青玉(鋼玉)産地を涼しくなったら回ってみたいと思い立った。
今回のポイントを中心に、石友たちと「秋のミネラル・ウオッチング」で回るのを楽し
みにしている。