11月末に採集した日本式双晶の母岩部分がYさんによって、2日がかりで回収され、
”母岩付き日本式双晶の巨晶”として復元され、「湯沼鉱泉・天然水晶洞」に展示される
べく、大切に保管されていた。
単晶で見たときに比べ、一段と存在感が増し、正に”川上村の宝”と呼ぶに相応しい
日本式双晶なので、ぜひ湯沼鉱泉に宿泊し、実物を見て欲しい。
”母岩付き日本式双晶の巨晶”【両翼 22cm】
産地の日陰には薄っすらと積雪も見られたが坑道内は風がなく暖かく、外に出るのが
愛知県の石友・KNさんは正月休みに訪れるのが確定的だし、石川の石友・Yさんも
産地は、坑道の中なので、冬でも採集可能で、愛知の石友・KNさんから、「正月は
この産地の産状には、2つある。
@ 石英脈タイプ 時として厚さ1m近い石英脈に直径10cm以上の水晶が
群晶
A 晶洞タイプ 以前、晶洞を眼にする事は全くなかったが、このような晶
日本式双晶は、どちらからも産出するようだ。
採集方法は、坑道内のズリを掘るか、石英脈を叩いて晶洞を開けるかのいずれか
このほか、曹柱石【MARIALITE:(Na,Ca)4[Al(Al,Si)Si2O8)]3(Cl,CO3,SO4)】と思わ
(1) 川上村、いや”日本の宝”
乙女鉱山産の日本式双晶は、全国の博物館や大学などに大きなものが収蔵さ
この標本は、両翼22cmと大きな上に、母岩付きで、採集された日時・場所そして
(2) 湯沼鉱泉での展示
以前のページにも書いたが、数年前に「川端下の双晶の美晶」が盗まれ、2007年
某HPに、『・・・・・・川上村の湯沼・天然水晶洞で美しい○○を見て、つい持帰り
「天然水晶洞」の盗難防止体制が確立するまでは、「事務所」で展示するよう
(3) 鎌(形)水晶
この産地で開催したミネラル・ウオッチングで、中学生や女性がズリで拾うことが
産地は広く、『 まだまだ、採れそうだ 』、との印象だ。
嫌なほどだった。
多少なりともこの産地の産状が飲み込めたせいか、小Yさんが10cmの双晶を採集
したほか、私が探した平板水晶もよくよく見ると双晶で、大Yさんからいただいた双晶
も合わせると、この日、トータル4枚採集できたことになる。
来るような雰囲気で、川上村は”ホットな冬”になりそうだ。
案内いただき、採集品を恵与いただいた”YYコンビ”に厚く御礼申し上げる。
( 2007年12月採集 )
2. 産地
湯沼鉱泉に宿泊し、現物を見せてもらいながら、社長に産地を教えてもらうのが良い
だろう。
宿泊しない場合でも、湯沼鉱泉に立ち寄り、”入山料”を払い、現物を見せてもらい
産地を教えてもらうと良いだろう。
湯沼鉱泉に連泊して、この産地に通う」、とこれまた気の早い電話をいただいた。
したがって、日によっては、案内してくれる人がいるかもしれない。
3. 産状と採集方法
この産地は戦国時代(?)〜昭和にかけて水晶を採掘した場所で、坑道やズリで、
日本式双晶が採集できることで知られ、過去に何回か開催したミネラル・ウオッチング
でも当時中学生だったY君はじめ何人かが双晶を採集している。
坑道の1つ
入り組んだ形で成長している部分も観察できる。このよう
な部分の水晶は、表面に石英がひも状に付着していて
”味”がある。
洞からは、両錐、平板など形状が面白く、しかも水晶表
面がやや綺麗なものも採れる。
である。
4. 採集鉱物
ここでの採集標本は、「水晶」が主で、日本式双晶、平板、両錐など結晶形態、「緑
水晶」などインクルージョン、「鋭錐石」などの共生鉱物、と各種の楽しみがある。
しかも、水晶の大きさが他所の産地ではお目にかかれないくらい大きいのが特徴
である。
区 分 説 明 標 本 例 備 考
日本式双晶
( Japanese
Law
Twin)
2つの水晶が84度33分
の角度で交差している双晶
その形状から、夫婦(めおと)
水晶、蝶形双晶(Butterfly
Twin)あるいは鎌(形)水晶
等と呼ばれている。
その形状を”ハート形”
”軍配形”、”蝶形”など
とも呼ぶ。
バラバラ??
合わせると双晶!!【両翼 9cm】
よく見ると双晶【両翼 7.5cm】
よく良く見ると双晶!【両翼 7cm】
蝶形
(ハート?)
被覆水晶
(ひふくすいしょう)
水晶の一部や
全体を別な鉱物が
覆ったもの
写真長さ7cm【全長 11cm】
透明〜青白い、玉髄/石英
【Chalcedony/QUARTZ:SiO2】が
水晶を覆っている
この産地では
初めて見る産状
れる柱石の大きな群晶が採集できた。
5. おわりに
母岩付きとして復元した「日本式双晶」に対面して驚いた。一段とその存在感を
増し、”川上村の宝”として、地元の「湯沼鉱泉・天然水晶洞」に展示すべきとの私の
決断は間違っていなかった、と改めて感じた。
れ、個人で持っている人も100人は下らないだろう。それだけにさほど珍しくもない
が、川上村産の双晶の大きなものは、山梨大学に”産地不詳”として1点あるだけ
だと思う。
採集者名もハッキリしているという、学術的に必要な条件を全て満たしている。
正に、川上村、いや、”日本の宝”と呼べるくらい貴重なものだ。
湯沼鉱泉社長にとっては、この双晶は自慢の種である、と同時に頭痛の種でも
あるようだ。というのは、盗難からいかに守るか、悩ましい問題が起きている。
10月ごろに「向山鉱山の美晶」が盗まれたからである。
たい気になった・・・・』、という趣旨の記述があるのに気付いた。
その気になる気持ちが解らないわけではないが、持ち帰られては社長が困る。
に、と社長にアドバイスさせていただいた。
この産地の日本式双晶は、”美しさ”という点では乙女鉱山のものに一歩譲るが
この産地独特の”顔”をしている。地元では、その形が草を刈る”鎌”に似ていること
から、”鎌水晶”と呼ばれ親しまれていたようだ。
あり、多産したことをうかがわせていたが、その産状が不明だった。最近、何回かの
採集行で「ガマ(晶洞)」から直接採集する機会に恵まれ、産状なども明らかになり
つつある。
6. 参考文献
1) 小出 五郎:長野県川上村川端下附近の鉱物 我等の鉱物,昭和16年
2) 日本岩石鉱物鉱床学会編:岩石鉱物鉱床学会誌 総目録
第1巻(昭和4年)−第42巻(昭和33年),同学会
昭和34年
3) 三石 勝五郎:保科百助生誕百年 詩伝・保科五無斎,高麗人参酒造株式会社
昭和42年
4) 益富 壽之助:鉱物 −やさしい鉱物学− ,保育社,昭和60年
5) 松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年