加蘇鉱山のマンガン鉱物

加蘇鉱山のマンガン鉱物

1.初めに

「鉱物採集の旅ー東京周辺をたずねてー」を読むと、
栃木県鹿沼市から群馬県にわたる足尾山地には、層状マンガン鉱床が
数多く分布している。
それらの中で、松原博士の「鉱物カラー図鑑」に掲載してある
「約4cmのばら輝石結晶」に惹かれて、加蘇鉱山を訪れた。
ズリには、ばら輝石、菱マンガン鉱、テフロ石、硫化鉱物はたくさん
残っていますが、透明なばら輝石の結晶は探せなかった。
珍しく先客が2人(千葉のT氏、東京のY氏)もいた。
(2001年3月採集)

加蘇鉱山のばら輝石【鉱物カラー図鑑から掲載】

2.産地

鹿沼市から小来川鉱山に行くと同じように、日光鹿沼線に入り、直進して
「石裂(おざく)」の手前の「馬返」を目指す。馬返の集落を過ぎると、
右手に墓地があり、その先の道路脇に加蘇鉱山本坑の通洞坑があるので、
この先30mに車を止める。

加蘇鉱山本坑の通洞坑
道路から鉱石積出しのためのコンクリート施設が見え、その左脇の階段を
約10m登ると第1(下)のズリで、この右上10mに鉱口がある。
沢を約50m登ると、平坦になり、ここに第2(上)の坑口があり、ここから
下にズリが広がっている。

本坑の坑口(下)

本坑の坑口(上)
川の反対側(昔は橋があったが、今は橋脚だけ残っている)には、貯鉱(?)の
ためのコンクリート施設が残り、その上流側に満山鉱床のズリがある。
更に、本鉱の西側に沢があり、これを登ると、高平新坑があるとの情報がある。

満山鉱床のズリ

3.産状と採集方法

「日本鉱産誌」によれば、馬返地区には、「加蘇」「高平」「第3加蘇」の鉱山が
あり、1930年代から1950年代まで稼行したようです。
いずれも、古生層中のチャート、粘板岩を母岩とする脈状の鉱床である。
今回は、本坑のズリのみでの採集であった。層状マンガン鉱床なので、黒くて
手に持って重く感じる石を片端から大き目のハンマでひたすら割る。
怪しげな鉱物は、ルーペで確認する方が良いでしょう。

4.産出鉱物

(1)ばら輝石【Rhodonite:(Mn,Ca)5Si5O15】
(2)菱マンガン鉱【Rhodchrosite:MnCo3】
共に、ピンク色の綺麗な結晶の集合体で産出し、へき開が見られます。

ばら輝石【菱マンガン鉱】
(3)マンガン透閃石【Tremorite:Ca2(Mg,Fe,Mn)5Si8O22(OH)2】
薄いクリーム色の繊維状で産出します。透閃石の存在は、この鉱床がかなりの
高温下で形成されたことを物語っているようです。
(4)閃亜鉛鉱【scheelite:CaWO4】
飴色〜真っ黒まで、鉄含有量の違う閃亜鉛鉱が見られます。硫化鉱物は、
上の坑口のズリに多く、閃亜鉛鉱以外には、磁硫鉄鉱、黄鉄鉱などもありますが
小さな結晶です。

閃亜鉛鉱

5.おわりに 

図鑑にあるような美晶は採集できませんでしたが、春近い山で久しぶりに
ハンマを思い切り叩き、スッキリした採集でした。
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