ここでは、スコップで川底の土砂を堀り起し、フルイに入れ、川の中でふるうか
パンニング皿に入りパンニングするかで、鉱物採集につきもののハンマは全く
不要である。
パンニングのほうが小さなトパーズまで見逃すことが少ない。小さなものが
ほとんどの希元素鉱物を探すには、パンニングが最適である。
採集を始めて間もない人から、トパーズと水晶の違いがわからないと言う声を
たびたび聞きますので、下の表にまとめて示す。
項 目 | ト パ ー ズ | 水 晶 | 備 考 | 条線 | 柱面に縦に筋がある | 柱面に横に筋がある | へき開 | ↑ 平坦(フラット) c軸(頭と尻の方向)に直角に明瞭で | ↑ ギザギザ なし | 断面 (頭や尻から見た形) | ひし形 | 六角 | 屈折率 | 水晶より高く キラキラした感じ 透明度も高い | 白濁しているものが多い | 比重 | 水晶よりチョット重い感じ。 パンニングすると 錫石や希元素鉱物などの 重鉱物と共に底に残りやすい | - |
(2)変種ジルコン/苗木石【Altered Zircon/Naegite:(Zr,Hf,Y)(Si,Nb,Ta)O4】
「日本希元素鉱物」誌には、『色は褐黒〜濃緑色、錐面が大きく発達し
柱面は次第に細くつぼまったもの、或はそれらが多数集合し、肉眼的には
頭が円く仏頭状になった集合体などがある。単晶では、長さ5mm 径1mm
ぐらい、集合体中の個体もやはり5mmほどである。時に恵那石【著量のウラン
と希土類元素やリンを含むウラノトール石:Uranothorite】を伴うことがあり
両者は平行連晶する。
・・・苗木石薄片にはコルンブ石(サマルスキー石?)が嵌在しており・・・・・』
とある。
灰褐色〜緑色、ガラス〜油脂光沢で、錐面と、稀に柱面がみえるもの
がある。写真のものはいくつかの結晶が集合したもの(集合体)で、ゼノ
タイム【Xenotime-(Y):YPO4】と平行連晶をなし、反対面(右下)には陣笠状の
ゼノタイムが見られる。
まれに、球顆状のものも見られる。
小一時間の採集で小さなものまで含めれば10ケ程度あり、「木積沢」で
3日間で3粒しか採集できなかったことを考え合わせると、量的には多いと
考えられる。
(3)ウラノトール石/恵那石【Uranothorite:(Th,U)O2・nSiO2・2H2O】
かつて、粟津秀幸氏によって ”橙黄石(Orangite)” と名付けられたこと
からも分かるように、橙赤〜橙黄色で樹脂光沢を示し、錐面の発達した
四角柱状結晶で正方晶系の晶癖を示す。トール石【Thorite:ThSiO4】の
柱面に平行に結晶している。
重鉱の中に、橙赤〜橙黄色の破片で「柘榴石」とも鑑定しかねるものが
見られ、これもウラノトール石(恵那石)と思われる。
(4)鋭錐石【Anatase:TiO2】
黒鋼色、ピカピカの金属光沢をし、錐面の発達した”槍状”で産する。柱面
に横の条線がある。
今回採集できたのはこの標本1つのみであり、産出量は多くない。
(5)モナズ石【Monazite-(Ce):CePO4】
黄褐色、板状結晶で産する。破損したものがほとんどで、頭付き結晶は採集でき
なかった。
(6)褐簾石【Allanite-(Ce):(Ca,Ce,Y)2(Al,Fe,Fe''')3(SiO4)(OH)】
真っ黒いガラス光沢、柱状〜板状で産する。表面は変質し、ややガサ
ガサになり光沢が失われているものが多い。
このほか、鉄コルンブ石、鉄マンガン重石、錫石などが採集でき、量的に
多いのは錫石で、重鉱の90%以上を占める。
『 習うより慣れろ 』 の世界ですね。
(2) ものの1、2kmしか離れていない関戸川に比べ、トパーズは小さいが量的には多く
希元素鉱物の種類と量も、今まで訪れた(パンニングした)苗木地方の産地の中で
一番多いように感じられた。
水がぬるむころ、再訪を考えています。
(3) 15年ほど前、ここを訪れた時には、フルイ掛けで採集したガラス状の鉱物を見て
水晶とトパーズを区別するのがやっとだった。
今回、パンニングによって、トパーズだけでなく各種の希元素鉱物を採集する
ことができ、この間に大勢の石友、文献、情報に教えられたことを改めて感じた。
2006年も新たな産地、鉱物そして石友との出会いを楽しみにしている。